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第一章
19話 暗闇の奥には
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洞窟の入口に戻ってきた。
目の前に広がる暗闇の奥に、無数のヒルヒルが潜んでいるのを想像し、チロの背筋に寒気が走る。
おそらく大丈夫だろうと当たりはつけているが、念のため手の先に『微光』を発生させると、恐る恐る暗闇に向かって差し出した。
薄い明かりに包まれた手が、闇に飲み込まれていく。
そのまま動かず、二秒…………三秒…………
ヒルヒルの襲撃は────なかった。
「ふぅ……」
やはり、ヒルヒルたちは熱で獲物を感知し、襲いかかっているようだ。
安堵の息を一つ吐くと、念の為手に塗っていたドリンギ汁を腰ミノで拭い、チロは洞窟の奥に歩を進めた。
だが、ヒルヒルの襲撃がないからといって、洞窟探索は楽なものではなかった。
岩肌がむき出しの地面はただでさえ歩きにくいというのに、何やら表面がヌルヌルとしていて、しかも『微光』の足元さえ照らせないほど弱い光量が、それに拍車を掛けていた。
何度も躓き、転びそうになりながら、それでもチロは洞窟の奥にと進んでいく。
そして、
「おぉ……っ」
たどり着いた場所に広がる光景に、チロは目を見開き、声を上げた。
そこは広々とした、美しい空間だった。
洞窟の天井部分にはぽっかりと大きな穴が空いており、そこから太陽の光が差し込んでいる。
その光に照らされた中央の辺りには綺麗な湧水が湧き、周りには様々な植物が生い茂っていた。
だが、なによりもチロの目を奪ったのは────
「なんだこれ…………水晶か?」
所々に隆起する、白く透き通った鉱物の柱だった。
近づいて、触れてみる。
キラキラと、陽の光を弾いて輝くその水晶の表面は滑らかで、冷たかった。
「うっ……」
不意に、感動がこみ上げてきた。
チロの前世である『田中一郎』は、無気力な人間だったが決して無感動なサイコパスではなかった。
いい映画を観たりすれば、人並みに感動したり泣いたりもしたものだ。
だがこれは、この感動は、違う。
これは、他人の作り出したものに共感しての感動ではなく、自らの努力と挑戦によって生み出された、自分だけの感動なのだ。
「俺、生まれ変わって、よかったなぁ……」
この世界に転生して初めて、チロは心からそう思えた。
食べ物はまずいし、娯楽はないし、どこもかしこも危険に満ち溢れていて、平穏や安心とは程遠い世界だ。
だけど今、自分は生きている。
生きるということ自体に、喜びを感じている。
そのことが、どうしようもなく嬉しく、そして大切なことのように、チロには思えたのだった。
目の前に広がる暗闇の奥に、無数のヒルヒルが潜んでいるのを想像し、チロの背筋に寒気が走る。
おそらく大丈夫だろうと当たりはつけているが、念のため手の先に『微光』を発生させると、恐る恐る暗闇に向かって差し出した。
薄い明かりに包まれた手が、闇に飲み込まれていく。
そのまま動かず、二秒…………三秒…………
ヒルヒルの襲撃は────なかった。
「ふぅ……」
やはり、ヒルヒルたちは熱で獲物を感知し、襲いかかっているようだ。
安堵の息を一つ吐くと、念の為手に塗っていたドリンギ汁を腰ミノで拭い、チロは洞窟の奥に歩を進めた。
だが、ヒルヒルの襲撃がないからといって、洞窟探索は楽なものではなかった。
岩肌がむき出しの地面はただでさえ歩きにくいというのに、何やら表面がヌルヌルとしていて、しかも『微光』の足元さえ照らせないほど弱い光量が、それに拍車を掛けていた。
何度も躓き、転びそうになりながら、それでもチロは洞窟の奥にと進んでいく。
そして、
「おぉ……っ」
たどり着いた場所に広がる光景に、チロは目を見開き、声を上げた。
そこは広々とした、美しい空間だった。
洞窟の天井部分にはぽっかりと大きな穴が空いており、そこから太陽の光が差し込んでいる。
その光に照らされた中央の辺りには綺麗な湧水が湧き、周りには様々な植物が生い茂っていた。
だが、なによりもチロの目を奪ったのは────
「なんだこれ…………水晶か?」
所々に隆起する、白く透き通った鉱物の柱だった。
近づいて、触れてみる。
キラキラと、陽の光を弾いて輝くその水晶の表面は滑らかで、冷たかった。
「うっ……」
不意に、感動がこみ上げてきた。
チロの前世である『田中一郎』は、無気力な人間だったが決して無感動なサイコパスではなかった。
いい映画を観たりすれば、人並みに感動したり泣いたりもしたものだ。
だがこれは、この感動は、違う。
これは、他人の作り出したものに共感しての感動ではなく、自らの努力と挑戦によって生み出された、自分だけの感動なのだ。
「俺、生まれ変わって、よかったなぁ……」
この世界に転生して初めて、チロは心からそう思えた。
食べ物はまずいし、娯楽はないし、どこもかしこも危険に満ち溢れていて、平穏や安心とは程遠い世界だ。
だけど今、自分は生きている。
生きるということ自体に、喜びを感じている。
そのことが、どうしようもなく嬉しく、そして大切なことのように、チロには思えたのだった。
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