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番外編

姫初め①*

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 年越しの瞬間に合わせ、ソリスティアの港に停泊中の船が霧笛を鳴らすのを聞きながら、一同も新年の挨拶を交わす。それを潮に恭親王とアデライードが自室に引き上げた。他の者たちも適当に解散するだろう。

 大晦日の夜から元日の夕方まで、シャオトーズと小宦官たちも滅多にない休暇となるので、寝室には二人の夜着と、卓上には翌日の食事がすでに準備されて清潔な布をかけて置いてあった。新年の最初の食事は寒食と言い、火を使わない冷たい食事を摂るのがしきたりだ。――要するに側付きの者を休ませるためである。つまり、これから夕方まで、誰の邪魔も入らず寝室に二人っきりだ。

(ということは……明日の夕方まで、ヤり放題!)

 そんなことを考えて、内心、小踊りしている恭親王だったが、アデライードの方はまったくの平常心で、普段通り長衣の帯を解いて、夜着に手を伸ばそうとした。

「アデライード、必要ないよ。……どうせ、すぐに脱がすんだから」

 そう声をかけられて、初めてびくりと体を震わせる。

「……新年早々、罰当たりではありませんか?」
「そんなわけないだろう。ヤラない方が罰が当たるさ」

 恭親王はさっさと衣服を脱ぎ捨てると裸で寝台に上がり、彼が脱ぎ散らかした衣服を見下ろして、わずかに眉間を曇らせているアデライードを手招きした。

「さあ、早くおいで、アデライード」

 アデライードは帯を解いた長衣を両手でかき寄せたまま、おずおずと俯き加減に寝台に近づく。

「こんな、脱ぎっぱなしで……皺になってしまいます」
「案外と口煩いところがあるのだな」

 修道院で自分のことは自分でしてきたアデライードは、普段からアンジェリカやリリアに余計な手間をかけさせないように、脱いだ長衣もきれいに畳んでいた。だが、完全に気持ちが逸っている恭親王は、アデライードの細い腕を掴んで強引に寝台に引き上げると、長衣も乱暴に取り去ってぽいっと寝台の下に投げ捨てた。

 魔力灯の淡い光の中に浮かぶ、アデライードの白い身体を見て、恭親王は小さなため息をつく。毎晩のように抱いているのに、それでも見惚れてしまう。艶麗さで謂えば、もっと豊満で男の欲をそそる女体をいくらも見てきたが、だが今にも羽が生えてどこかに飛んでいってしまいそうな、細くて華奢で儚い身体は、いくら見つめても見飽きるということがなかった。

「綺麗だ……アデライード」

 剣だこのある長い指で、アデライードの白い肌をなぞる。折れそうな首筋から浮き出た鎖骨をたどり、形のよい白い双丘の柔らかな感触を味わいながら、その下の腹から細い腰へ、滑らかなラインを描くと、恥ずかしそうに顔を伏せていたアデライードが少し震えた。

「……はず、かしい……です」

 身じろぎにつれて、白金色の髪が揺れ、魔力灯の光を弾く。

「だって綺麗なんだもの……綺麗すぎて、不安になるよ。……私などが、触れていいのかってね」

 恭親王はアデライードの顎に指をかけると、俯いていた顔を上げさせ、唇を唇で塞いだ。アデライードの両手が、彼の肩に取りすがる。少し冷たい掌の感触と、触れられたところから流れ込む〈王気〉を感じながら、彼はアデライードの柔らかな唇を舌で分け入って、その舌に絡ませる。もう一つの手をうなじに回し、がっしりと抱き込むようにして、唇と唾液の甘さを堪能する。彼の脳髄を直撃する彼女の陰の〈王気〉。触れ合ったところから、全身を〈王気〉が巡り始める。アデライードの目には、絡み合う金銀の光の龍の姿が視えているのだろう。

 大きな掌でアデライードの片方の胸を包み込み、柔らかい感触を味わうように優しく揉むと、硬い掌に触れられて頂点の蕾が立ち上がってくる。それを指で嬲るようにしながら、唇は合わせたまま、舌で口蓋の裏や歯列の裏をなぞり、わざと音を立てるように唾液を吸い上げる。抱え込んだうなじが苦し気に動くのに気づき、少しだけ唇を解放してやると、アデライードがほっと息をつくのがわかった。

「でん……くる、し……」

 唇から漏れる声すら愛おしくて、再び強引に唇を奪ってしまう。そのまま舌をしばらく絡めあって、唇を離すと、唾液が糸を引いて二人の唇の間に銀色の小さな橋をかけた。それが自分の執着を表すような気がして、恭親王は薄く笑った。
 
「年の初めの交わりを何というが知っているか?」

 胸への愛撫を続けながら、首筋から鎖骨に唇を這わせ、もう片方の乳首を口に含む。吸って、舐めて、舌で転がして、アデライードが鼻にかかったような甘い声をあげ始めたところで、ふと、恭親王が乳首から口を話して尋ねると、アデライードが無言で首を振ったのか、ふぁさふぁさと長い髪が揺れた。
 
「姫はじめ……と言うんだ」
「……な、んで……ひめ……?」
「さあ……あなたの秘芽をじっくり可愛がってあげるからかな?」

 そう言うやいなや、恭親王はアデライードの両膝をそれぞれ掴み、強引にそれを押し広げた。

「ああっ……だ、だめっ……恥ずかし……」

 縋っていた肩を両手でぎゅっと握り、両腕を押しやってアデライードは抵抗するが、男はやすやすと彼女のあられもない場所を暴き立ててしまう。

「綺麗だ……もう、少し濡れているね」

 長い指ですでに濡れて艶めいている場所を割り、中の蜜で濡らした中指で包皮に包まれた陰核に触れた。

「あっ……はっ……んんんっ……」
「ここが、秘芽、だよ?……ここを触られるのが、一番、感じる?」
「ち……ちがっ……あっやっ……」

 包皮を剥くようにして中の秘玉を露わにし、それをなおも弄ってやると、アデライードの腰が無意識に揺れて、息が荒く、喘ぎ声がさらに甘くなる。

「……立ち上がってきたよ。今夜はここをうんと可愛がってあげるよ」
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