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番外編

姫初め②*

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 いつもよりも甘い調子で話しかけながら、恭親王はアデライードの脚の付け根に顔を寄せて、赤く膨れた蕾を口に含んだ。

「あああっ……だっ……だめっ……」
 
 舌と唇で愛撫を続けると、アデライードが切羽詰まったような声を上げる。両手で恭親王の黒い頭を抱え込むようにして、白い体をしならせる。わざと音をたてて舌を動かし、長い指を蜜口に差し込んで中を探る。逃れようともがく細い腰をもう一つの手で抱え、舌を尖らせて強く舐めると、アデライードの細い指が彼の黒髪に縋るようにして、白い喉をのけぞらせてアデライードが軽く達した。

「はっ……ああああっ……あぁあっ」

 内部から溢れる蜜が彼の指を濡らし、手首まで滴る。零れた蜜の舐めあげれば、恭親王の舌から強烈に甘い〈王気〉が流れ込む。舌も脳も蕩けそうな甘さ。がくがくと体を震わせ、放心しているアデライードを下から見上げて、口の周りをべたべたにした恭親王が微笑む。

「もう、イったか。今年の初イきだな……」
「はっ……やっ……いじ、わる……」

 羞恥と快楽で真っ赤になってアデライードが顔をぶんぶんと振ると、白金色の髪が乱れ、馨しい香りが周囲に漂う。男はアデライードの中を二本の指でゆっくりと穿ちながら、唇は白く滑らかな腹を這っていた。

「挿れて……いいか?それとももう少し……」
「あっ……もうっ……」

 アデライードとしてはこれ以上嬲られるよりは早く終わらせて欲しい一念であったが、もとより一晩中抱く気満々の恭親王は彼女の言葉を可愛いおねだりだと解釈した。

「そう、ずいぶんと積極的だな?……そうだ、今夜はアデライードが上に乗ってみるか?」
「う……上……?」

 これまで寝台の上で組み敷かれてか、浴室で壁に押し付けられて貫かれたことしかないアデライードは、上に乗ると言われて戸惑う。その間にも男の指に絶え間なく中を掻きまわされ、アデライードはもはや何も考えられなくなっている。

「だっ……もうっ……そん、なぁああっ……」

 快楽に瞳を潤ませていやいやと首を振るしかできないアデライードの腰に手を添えて、仰向けになった恭親王は彼女に自分の脚を跨ぐように膝立ちさせる。彼の脚の間には、秀麗な容姿にそぐわない、赤黒く凶暴なものが天を向いて聳え立っていて、アデライードは思わず顔を背けてしまう。恭親王はアデライードの白い手を取って、自分の固く漲った屹立に導いて触れさせた。

「!!」
「これに手を添えて……自分で、いれてごらん」

 これに手で触れるのはあの、別邸の寝室以来で、アデライードは恐れて手を引っ込めようとするが、男はそれを許さなかった。

「そんな……無理……恥ずかしい……」
「大丈夫だよ、ゆっくり、あなたのいいようにしたらいい。ほら、……手で、支えていてやるから」

 白くて丸い尻に手を添えて、恭親王が下から微笑む。黒い瞳が情欲に煌き、壮絶な色気を発していて、アデライードはその瞳に魅入られるようにして、自分の秘所に男の屹立を宛がう。片手を男の腰のあたりで支え、脚の間に固くそそり立つ肉茎を挟み込み、中に挿(い)れようとするが、硬くて弾力のある肉棒がつるん、つるんと滑ってうまくいかない。ついに男が耐え切れずに噴き出した。

「……アデライード、わざと焦らして私を煽っているのか?」
「ち、ちがい、ます!……うまく、いらないっ……!」

 焦れば焦るほど、どこにれたらいいのかわからなくなって、狼狽するアデライードを見かねて、男が蜜口に手を添えて切っ先をあてがってやる。

「ここだ……ゆっくり、腰を落として……」

 くちゅり、と入り込んだ切っ先にアデライードが思わず両目をつぶる。指示の通りに静かに腰を落としていくと、固く漲った屹立がミシミシと彼女の肉壁を割るようにして、彼女の中を満たしていく。

「はっ……ああっ……」

 眉根を寄せ、少し顎を反らすようにして、ゆっくりと肉茎を飲み込んでいく様子を、恭親王もまたこれ以上ない悦楽と、アデライードに対するたとえようもない愛しさに震えながら見つめる。

「そうだ……アデライード、上手だ……あなたが、私を飲み込んでいく……」

 彼に絡みつくアデライードの内壁の襞の一つ一つから、甘い〈王気〉が流れ込んで彼の腰から背中からずぶずぶに蕩かしていく。あまりの快感を堪えきれず、恭親王はアデライードの細い腰を両手で抱え込んで一気にずぶりと奥まで彼自身を突き立てる。

「はっああっ……!」

 強引に奥まで満たされて、自重でこれまでにないほど深い場所まで彼を受け入れることになったアデライードが、思わず悲鳴をあげる。下から見上げる彼の目に、彼に跨り、彼を根元まで飲み込んだアデライードの白い身体が映る。快感と微かな痛みに眉を歪め、唇を半ば開いて肩で大きく息をして、それにつれて形のよい胸が揺れている。細く折れそうな肩と腰と、まだ成長の余地を残して揺れる白い二つの丘が、咲き始めた清楚な白い花のように美しくて、恭親王は黒い瞳を細めてうっとりと眺めた。

「綺麗だ……アデライード、全部、食べてしまったね……」
「んん……少し、きつい……」
「動けるか?」
「……動く……? わた、しが……?」
 
 アデライードが軽く目を瞠るのを、恭親王が下から悪戯っぽく笑った。

「そうだ。自由に動いて、あなたが気持ちよくなる場所を探したらいい」
「そん、なの……わから、な……」
「動かないとずっとこのまま、終わらないぞ? 朝まで繋がったまま過ごすか?」
「そん、な……ああっ」

 恭親王が挑発するように下から腰を突き上げると、アデライードは不意打ちに悲鳴をあげる。

「ほら、ゆっくりと尻を持ち上げて……抜ける直前からまた腰を落とすんだ」

 要するに恭親王の身体を使って自分で気持ちよくなるように動けと言われ、アデライードは羞恥で気が遠くなる。これまでも彼に揺すりたてられ、屹立を抜き差しされてアデライードもまた快楽を味わってきたが、それはあくまでも、男のなすがままに身体を任せて受動的に得た快感に過ぎない。自ら腰を振って快楽を得るなんて、そんな淫らな真似ができるわけなかった。
 
「そんな恥ずかしい……無理……」
「じゃあ、ずっとこのままだな。私はあなたと繋がっていられれば満足だが……」
 
 そんなことを言いながら、それでも男の手がアデライードの肌を這って、片手で柔らかい胸を覆い、赤く尖った頂点の蕾を指で摘まむ。もう一つの手は結合部のすぐ上の、やはり赤く膨らんだ秘芽を長い指でぴんんと弾いた。

「はあっ!……や、それ、ダメっ……!」
 
 アデライードの腰が彼女の意思とは関係なく揺れて、ぎゅっと内部が彼を締め付ける。恭親王が下から両の乳房を掴み、長い指二本で乳首を挟みこむながら揉むと、アデライードが胸からの刺激に反応して、腰を揺らして喘いだ。

「こうされると、気持ちいいか?もっと腰を動かしてみろ」
「でも……あっ……はっ……」
 
 アデライードがおずおずと尻を持ち上げ、不器用に体を上下させると、絡みつく肉襞が彼の怒張を擦りたてて、彼も快感に眉を顰める。アデライードの動きは不慣れでぎこちないけれど、彼の上で彼女自身が動いているのだと思うと、それだけで凄まじい快感が彼を襲ってくる。〈王気〉のせいも、身体の相性ももちろんあるのだろうが、とにかく恋した相手と体を繋ぐだけで、快感は二倍、三倍に膨れ上がるのだと、彼はアデライードを抱いて初めて知ったのだ。特別な技巧テクニックを凝らす必要などどこにもなく、ただ、彼女でさえあればいい―つたない動きで懸命に腰を振るアデライードを下から見上げながら、恭親王はうっとりと目を細めた。

 「んんっ……はあっ……ううっ……はあっ、はあっ……もうっ……つかれ、て……」

 しかし、体力がなく、行為自体にまだ慣れていないアデライードが、このぎこちない騎乗位でイくのはかなり絶望的だと恭親王は気づく。まだ夜は始まったばかり。ここで無駄に体力を消耗させるわけにはいかなかった。
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