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Act.2 アンブロワーズ視点
白薔薇を散らす*
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*王太子アンブロワーズの一人称になります。
*********************************
月の光に照らされた寝台の上で、私は彼女の抵抗を力ずくで抑え込み、薄衣を剥ぎ取った。青い光に浮かび上がる白い身体の眩しさに、脳が沸騰する。
「いや、やめて……! お願い、やめてくださいっ……」
やめてと言われたくらいでやめられるなら、初めから襲ったりしない。私はつい可笑しくなって、喉の奥で嗤った。きっと、酷薄な男だと思われるだろう。
「今さらやめられると思うのか?」
もう、無理だ。
私は目にしてしまった。この細く折れそうな華奢な肢体を。
蜉蝣のような儚い衣を剥ぎ取り、触れてしまった。この滑らかな肌に。
その瞬間、私を戒めていた心の枷が外れ、欲望は暴走を始める。長く押し込め、蓋をしてきた想いが溢れだし、溶岩のように煮え滾った情欲の炎で、わが身とこの人とを燃やし尽くすまで、きっと止められない。
抑え込まれながらも細い手足をばたつかせ、最後の抵抗を試みる彼女がかえって愛しい。髪を振り乱し、懸命に両腕で私を押しやろうとする。無駄なのに。力で敵うはずがない。私は折れそうな両の手首を片手でひとまとめにし、彼女の頭上で押さえつけた。覆いかぶさるように真上から見下ろせば、若草色の両目に涙が光り、目じりから零れ落ちる。
大きな瞳が恐怖に見開かれ、絶望に震えている。――愛しいアニエス、可哀想に。でも、もう逃がしてあげることはできない。
「いや、やめて……! 誰か、助けてっ!」
ようやく思い出したように人を呼ぼうとするアニエスを、私は憐れな子供のように諭した。
「私を誰だと思っている。皆知っていて知らぬフリをしているのだ。救けなど来るわけがない」
「そんな……どうして……」
怯えて見開かれる潤んだ瞳を見下ろす。剥き出しになった真っ白い胸の頂点では、緊張のために立ち上がった蕾が、紅く色づいている。私はもう一つの手で震える蕾を軽く摘まんだ。
「ひっ……いや、やめて……殿下、お願い、やめてください、許して……」
身を捩り、涙ながらに懇願するアニエスの胸を指先で弄び、蕾を指で弾く。彼女はびくりと身体を震わせ、豊かな二つの丘がふるりと揺れた。ふるいつきたくなる大きくて柔らかな胸と、対照的にほっそりとした頸筋から鎖骨のライン。私は指で首筋を辿り、細い顎から唇へと遡って、半開きになって微かに震える唇の輪郭をなぞる。
「諦めろ。そなたは今宵、私に汚される」
「どうして……だって、あなたは……王太子殿下、あなたはロクサーヌを愛して……あの子と結婚するのでしょう?!」
両手を掴まれて身動きを封じられ、裸に剥かれた屈辱的な状況でも、アニエスは必死に身を捩り、拘束から逃れようと私をにらみつける。その気の強さも、折れない矜持も、すべてが私には好ましい。私が愛しているのはずっと、彼女一人だけだ。だから、私が婚約者を愛しているはずという言葉に、失笑を隠せなかった。
「お願いです、ロクサーヌはわたしの妹で……妹を裏切るわけにはいかないのです! このようなことは神もお許しにはなりません! ですからっ!」
神の名まで持ち出して、王太子たる私を諭そうなど、いっそ滑稽だ。神聖なものを犯し、神を冒涜する。その背徳に昏い喜びさえ覚えているというのに。
必死に言い募るアニエスを私は無情に見下ろしながら、襟元に結んだレースのクラヴァットを解くと、片手で抑え込んでいた両手首を縛める。
「いや、やめてっ! どうして?! 殿下、わたしはロクサーヌの――」
両手の自由を失い、彼女は泣きながら、なおも何かを言おうと唇を震わせるが、他の女の名前など耳障りだ。私はアニエスの上に覆いかぶさって唇を奪い、言葉を封じた。柔らかな感触と、甘く爽やかな香り。出会ったあの日からずっと夢に見た――いや、夢に見ることさえ禁じてきた、彼女の唇を。
「!!」
驚いて息を詰める唇をこじ開け、舌を差し込む。こんなキスなど、彼女は知るまい。男の醜い欲望を剥き出しにした荒々しいキスに戸惑い、怯えている。無垢な反応が私の欲をさらに煽り、脳は蕩け、情欲は胸の奥で煮え滾った。
私は体重をかけて彼女の動きを封じ、無垢な身体を両手と唇と舌で余すところなく弄び、嬲り尽くした。――彼女が、抗うことを諦めてしまうまで。
「んん、やめ、やめて、いや、いやぁ……」
嗚咽まじりのアニエスの声が天蓋の中に響く。どれほど泣いても、神の園に帰してやることはできない。ただ、私のこの汚れた腕の中に堕ちるだけ――。
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月の光に照らされた寝台の上で、私は彼女の抵抗を力ずくで抑え込み、薄衣を剥ぎ取った。青い光に浮かび上がる白い身体の眩しさに、脳が沸騰する。
「いや、やめて……! お願い、やめてくださいっ……」
やめてと言われたくらいでやめられるなら、初めから襲ったりしない。私はつい可笑しくなって、喉の奥で嗤った。きっと、酷薄な男だと思われるだろう。
「今さらやめられると思うのか?」
もう、無理だ。
私は目にしてしまった。この細く折れそうな華奢な肢体を。
蜉蝣のような儚い衣を剥ぎ取り、触れてしまった。この滑らかな肌に。
その瞬間、私を戒めていた心の枷が外れ、欲望は暴走を始める。長く押し込め、蓋をしてきた想いが溢れだし、溶岩のように煮え滾った情欲の炎で、わが身とこの人とを燃やし尽くすまで、きっと止められない。
抑え込まれながらも細い手足をばたつかせ、最後の抵抗を試みる彼女がかえって愛しい。髪を振り乱し、懸命に両腕で私を押しやろうとする。無駄なのに。力で敵うはずがない。私は折れそうな両の手首を片手でひとまとめにし、彼女の頭上で押さえつけた。覆いかぶさるように真上から見下ろせば、若草色の両目に涙が光り、目じりから零れ落ちる。
大きな瞳が恐怖に見開かれ、絶望に震えている。――愛しいアニエス、可哀想に。でも、もう逃がしてあげることはできない。
「いや、やめて……! 誰か、助けてっ!」
ようやく思い出したように人を呼ぼうとするアニエスを、私は憐れな子供のように諭した。
「私を誰だと思っている。皆知っていて知らぬフリをしているのだ。救けなど来るわけがない」
「そんな……どうして……」
怯えて見開かれる潤んだ瞳を見下ろす。剥き出しになった真っ白い胸の頂点では、緊張のために立ち上がった蕾が、紅く色づいている。私はもう一つの手で震える蕾を軽く摘まんだ。
「ひっ……いや、やめて……殿下、お願い、やめてください、許して……」
身を捩り、涙ながらに懇願するアニエスの胸を指先で弄び、蕾を指で弾く。彼女はびくりと身体を震わせ、豊かな二つの丘がふるりと揺れた。ふるいつきたくなる大きくて柔らかな胸と、対照的にほっそりとした頸筋から鎖骨のライン。私は指で首筋を辿り、細い顎から唇へと遡って、半開きになって微かに震える唇の輪郭をなぞる。
「諦めろ。そなたは今宵、私に汚される」
「どうして……だって、あなたは……王太子殿下、あなたはロクサーヌを愛して……あの子と結婚するのでしょう?!」
両手を掴まれて身動きを封じられ、裸に剥かれた屈辱的な状況でも、アニエスは必死に身を捩り、拘束から逃れようと私をにらみつける。その気の強さも、折れない矜持も、すべてが私には好ましい。私が愛しているのはずっと、彼女一人だけだ。だから、私が婚約者を愛しているはずという言葉に、失笑を隠せなかった。
「お願いです、ロクサーヌはわたしの妹で……妹を裏切るわけにはいかないのです! このようなことは神もお許しにはなりません! ですからっ!」
神の名まで持ち出して、王太子たる私を諭そうなど、いっそ滑稽だ。神聖なものを犯し、神を冒涜する。その背徳に昏い喜びさえ覚えているというのに。
必死に言い募るアニエスを私は無情に見下ろしながら、襟元に結んだレースのクラヴァットを解くと、片手で抑え込んでいた両手首を縛める。
「いや、やめてっ! どうして?! 殿下、わたしはロクサーヌの――」
両手の自由を失い、彼女は泣きながら、なおも何かを言おうと唇を震わせるが、他の女の名前など耳障りだ。私はアニエスの上に覆いかぶさって唇を奪い、言葉を封じた。柔らかな感触と、甘く爽やかな香り。出会ったあの日からずっと夢に見た――いや、夢に見ることさえ禁じてきた、彼女の唇を。
「!!」
驚いて息を詰める唇をこじ開け、舌を差し込む。こんなキスなど、彼女は知るまい。男の醜い欲望を剥き出しにした荒々しいキスに戸惑い、怯えている。無垢な反応が私の欲をさらに煽り、脳は蕩け、情欲は胸の奥で煮え滾った。
私は体重をかけて彼女の動きを封じ、無垢な身体を両手と唇と舌で余すところなく弄び、嬲り尽くした。――彼女が、抗うことを諦めてしまうまで。
「んん、やめ、やめて、いや、いやぁ……」
嗚咽まじりのアニエスの声が天蓋の中に響く。どれほど泣いても、神の園に帰してやることはできない。ただ、私のこの汚れた腕の中に堕ちるだけ――。
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