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第五章 〈真実〉か、〈死〉か
ジョナサンの言葉
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馬車の前に、ジョナサンが立っているのを見て、俺が目を見開く。とても嫌な予感がした。
「どうした、エルシーに、何か?」
「あの後、メゾンにステファニー嬢が来ました」
俺はたっぷり三十秒ほど、息ができなかった。
「中で話しましょう。エルスペス嬢は、もうアパートメントに戻っています」
「特には何もなかったのだな」
「直接の被害は――ただ、もう少しで、護衛の男の、フィッテイング・ルームへの侵入を許すところでした」
申し訳ありません、と謝罪するジョナサンに、俺は息を飲む。
「許してはいないのだな?」
「ええ、それは大丈夫ですが、男を止めている隙に、ステファニー嬢自身がフィッティング・ルームに入ってしまい、エルスペス嬢と鉢合わせを――」
俺は眉間にしわを寄せ、ジョナサンに言う。
「……馬車の中で話そう」
俺たちは馬車に乗り、御者台の横に登ろうとしていたロベルトも呼び、三人で同乗する。
「殿下たちがメゾンを出て、ミス・リーンが採寸をしたいと言い、エルスペス嬢がフィッティング・ルームに入りました。僕もよくは知りませんが、その、下着の採寸もするでしょうから、その……裸に近い状態になっていたと思われます」
生真面目なジョナサンが、言いにくそうに眼を伏せる。
「メゾンの方も心得ていて、男性の従業員や僕たち護衛なども、フィッティング・ルームのドアには近寄らせてもらえない感じで。そこへ、階下が騒がしくなり、ステファニー嬢が強引に入ってきたのです」
「……姉貴のサロンは、基本、完全予約制だぜ? そこへ、予約も取らずに? マジで?」
ロベルトが身を乗り出す。
「殿下にお会いしたい、どうしてもお伝えしなければならないことがある、とそんなことを言って。ですが、すでに殿下はメゾンを出ているので、殿下はいないと告げましたが、納得しないでサロンへと上がってきたのです。――公爵令嬢ともなれば、メゾンの従業員はもちろん、僕の配下の平民の護衛でも手が出せません」
「伝えなければならないこと――」
俺が呟けば、ロベルトが言った。
「今日の、議会の件かもしれません。レコンフィールド公爵側は、もちろん議会にかけるのを知ってたでしょうしね」
ジョナサンも頷く。
「後で……国王陛下のお許しが出たので、正式に婚約が決まった、とステファニー嬢が言っていましたから、おそらくそうです」
俺は唇を噛む。胃がムカムカしたが、話を先に促した。
「ステファニー嬢は殿下はもういないというのを信じなくて、メゾンが殿下を隠していると言い張って、護衛の男たちに踏み込ませたのです。もちろん、そのドアの先はフィッティング・ルームですので、僕はとにかく、男をドアの向こうに入れるわけにいかないと、護衛を止めるのに必死で、その隙に、ステファニー嬢が中に入ってしまったんです」
そうなるともう、ジョナサンも踏み込むことはできない。結局、ミス・リーンが貫録でステファニーを追い出し、だが、ステファニーはエルシーと話がしたいと言い張ったという。
「それでエルシーは……」
「採寸が済んでからならば、と結局、ミス・リーンのサロンで話し合うことに――」
俺は、ギリギリと奥歯を噛みしめた。
俺がその場にいれば、ステファニーを追い出すことも、あるいは話し合うにしても、俺の意志を明確に示すこともできた。でも、俺は議会の一件に動揺して無駄に王宮に向かい、結局、何一つ変えることができなかった。その間にエルシーは――。
「ステファニー嬢の話はなんだったの?」
黙っている俺の代りに、ロベルトが尋ね、ジョナサンが眉を顰めた。
「その――正式な婚約が決まったから、バーティとは別れて欲しい、と」
俺が思わず、拳を馬車の壁に叩きつける。
「殿下、馬車が壊れますって」
「うるさい。……エルシーはなんて?」
ジョナサンは極力冷静な声で言った。
「エルスペス嬢は、バーティという愛称に覚えがなくて、そのことをステファニー嬢が、さすがに愛人に愛称は許さなかったのだ、と……」
「何をバカな! バーティなんて呼び方、俺はもともと嫌いだったし!」
「ですが、ステファニー嬢は終始、エルスペス嬢のことを愛人だと。……もし、殿下が本気だったら、手を出さずに紳士的にふるまうはずだと。……以前の、ステファニー嬢への態度のように」
俺は堪えきれず、もう一度、拳を馬車の壁に叩きつけた。
「ふざけるな! 俺はステファニーなんて好きじゃないから抱かなかっただけだ。キスもしたことはないが、別に礼儀を守ってのことじゃない」
「……バーティは常に、自分を最優先にしてくれた、と。昔は殿下を試すように我がままばかり言ってしまったけれど、バーティを本当に愛している、と」
「バカな……」
俺はため息をつく。――俺がステファニーの我儘を聞いていたのは、王妃に告げ口されて折檻されるからだ。別に愛してなんかいない。
ジョナサンがさらに言う。
「ステファニー嬢は、殿下を庇う形で亡くなった、アシュバートン中佐の恩に報いるために、エルスペス嬢を愛人にし、ついでに身体の欲を満たしているのだと――」
「うわ、下世話!」
ロベルトが言い、ジョナサンの頷く。
「僕もあまりだと思いましたので、ステファニー嬢には発言の取り消しを求めました。……でも、ステファニー嬢はなおも、エルスペス嬢のことを娼婦と同じで、貴族の出とは信じられない、自分だったら死んだ方がマシだと――」
俺がもう一度拳を握り締めるのを、咄嗟にロベルトが押さえる。
「もうやめて! 馬車がマジで壊れるから!」
俺は怒りのあまり、声も出ない。――ステファニーにもだが、自分自身に対しても。
エルシーの純潔を奪ったのは、俺だ。入院したおばあ様を人質にするかのように、嫌がるエルシーを力ずくで――。
「……エルシーは、なんて?」
俺が辛うじて声を絞り出せば、ジョナサンはまっすぐに俺を見た。
「エルスペス嬢は、見た限りでは全く、怯みませんでした。まっすぐにステファニー嬢を見て、自分に恥じるところはない、と。自分から殿下を誘惑したり、金目のものをねだっているわけじゃない、決定権は自分にはない、と」
そして、苦笑いして言った。
「それから、自分の知る殿下と、ステファニー嬢の語る殿下は、まるで別人のようだ、と。だから僕は、殿下は戦争を機に人が変わったと。以前は優しいというよりは無気力で、人の言いなりになってばかりな人だったけれど、戦争で地獄を見て、変わったのだと。僕は言いました」
ジョナサンの言葉に俺は目を見開く。
「だから――戦前の、グレンジャーやステファニー嬢が見ていた殿下と、現在の殿下はまるで違う、と言ったのです」
俺は、ジョナサンに尋ねる。
「それで、ステファニーは?」
「ええ、戦場で人が変わったから、自分から心変わりしたのか、とおっしゃったので、あくまで僕の私見だと断ったうえで、殿下は戦前は決められた婚約者だからステファニー嬢を尊重していたけれど、戦争を機に、人のいいなりになるのをやめたのだと思いますと、言いました。昔の殿下と違い、今の殿下はすべてを自分の意志で決めている。エルスペス嬢と付き合うかどうか、決めているのはすべて殿下ご自身だと。二人を別れさせたいなら、殿下を説得するべきだと申し上げました」
「……ステファニーは怒っただろう?」
「ええまあ、それなりには。でも、とりあえずはそれでおとなしく帰りましたよ。……ステファニー嬢は、本当に愛されていると思っていたようですね」
ジョナサンが俺に言った。
「……正直、戦前の殿下とステファニー嬢の関係は、とても歪だと思っていました。婚約者で従妹とはいえ、公爵令嬢が我儘で王子を振り回すなんて、なぜ殿下はもっと厳しく言わないのかと、ジェラルドなどは陰で怒っていました。彼女の我儘で王子の予定が頻繁に変更されて、警備の者が振り回される。しかし、殿下がそれを認めている以上、僕たちは何も言えない。――僕は、ステファニー嬢の我儘を許すことが愛なのかどうか、当時はわかりませんでしたが、今は違うとはっきりわかります」
ジョナサンは、少しだけ視線を窓の外に向け、それから俺を見た。
「ロベルトから聞きました。エルスペス嬢には、昔、会ったことがあって、その頃からずっと好きだったのですね。……それでも、周囲の言うままにステファニー嬢との婚約を受け入れるつもりだった。昔のあなたは何もかも受け身で、無気力だった。今思えば、生きることを諦めていた。でもあの時、目の前でマックス卿に死なれてあなたは変わった」
俺は微かに頷いて言った。
「ああ、そうだ。――マックスが目の前で死んで、俺はエルシーとリンドホルムを守らなければと思ったんだ」
「でも現状、あなたはエルスペス嬢を守れていません。議会も婚約を承認してしまった。……本当にエルスペス嬢を守るためにはどうすべきななのか、そろそろ考えるべき時にあるのではないですか」
「……それは、どういう……」
だが、ジョナサンの真意を聞きだす前に、馬車はバージェス街の、アパートメントの前に止まった。
「どうした、エルシーに、何か?」
「あの後、メゾンにステファニー嬢が来ました」
俺はたっぷり三十秒ほど、息ができなかった。
「中で話しましょう。エルスペス嬢は、もうアパートメントに戻っています」
「特には何もなかったのだな」
「直接の被害は――ただ、もう少しで、護衛の男の、フィッテイング・ルームへの侵入を許すところでした」
申し訳ありません、と謝罪するジョナサンに、俺は息を飲む。
「許してはいないのだな?」
「ええ、それは大丈夫ですが、男を止めている隙に、ステファニー嬢自身がフィッティング・ルームに入ってしまい、エルスペス嬢と鉢合わせを――」
俺は眉間にしわを寄せ、ジョナサンに言う。
「……馬車の中で話そう」
俺たちは馬車に乗り、御者台の横に登ろうとしていたロベルトも呼び、三人で同乗する。
「殿下たちがメゾンを出て、ミス・リーンが採寸をしたいと言い、エルスペス嬢がフィッティング・ルームに入りました。僕もよくは知りませんが、その、下着の採寸もするでしょうから、その……裸に近い状態になっていたと思われます」
生真面目なジョナサンが、言いにくそうに眼を伏せる。
「メゾンの方も心得ていて、男性の従業員や僕たち護衛なども、フィッティング・ルームのドアには近寄らせてもらえない感じで。そこへ、階下が騒がしくなり、ステファニー嬢が強引に入ってきたのです」
「……姉貴のサロンは、基本、完全予約制だぜ? そこへ、予約も取らずに? マジで?」
ロベルトが身を乗り出す。
「殿下にお会いしたい、どうしてもお伝えしなければならないことがある、とそんなことを言って。ですが、すでに殿下はメゾンを出ているので、殿下はいないと告げましたが、納得しないでサロンへと上がってきたのです。――公爵令嬢ともなれば、メゾンの従業員はもちろん、僕の配下の平民の護衛でも手が出せません」
「伝えなければならないこと――」
俺が呟けば、ロベルトが言った。
「今日の、議会の件かもしれません。レコンフィールド公爵側は、もちろん議会にかけるのを知ってたでしょうしね」
ジョナサンも頷く。
「後で……国王陛下のお許しが出たので、正式に婚約が決まった、とステファニー嬢が言っていましたから、おそらくそうです」
俺は唇を噛む。胃がムカムカしたが、話を先に促した。
「ステファニー嬢は殿下はもういないというのを信じなくて、メゾンが殿下を隠していると言い張って、護衛の男たちに踏み込ませたのです。もちろん、そのドアの先はフィッティング・ルームですので、僕はとにかく、男をドアの向こうに入れるわけにいかないと、護衛を止めるのに必死で、その隙に、ステファニー嬢が中に入ってしまったんです」
そうなるともう、ジョナサンも踏み込むことはできない。結局、ミス・リーンが貫録でステファニーを追い出し、だが、ステファニーはエルシーと話がしたいと言い張ったという。
「それでエルシーは……」
「採寸が済んでからならば、と結局、ミス・リーンのサロンで話し合うことに――」
俺は、ギリギリと奥歯を噛みしめた。
俺がその場にいれば、ステファニーを追い出すことも、あるいは話し合うにしても、俺の意志を明確に示すこともできた。でも、俺は議会の一件に動揺して無駄に王宮に向かい、結局、何一つ変えることができなかった。その間にエルシーは――。
「ステファニー嬢の話はなんだったの?」
黙っている俺の代りに、ロベルトが尋ね、ジョナサンが眉を顰めた。
「その――正式な婚約が決まったから、バーティとは別れて欲しい、と」
俺が思わず、拳を馬車の壁に叩きつける。
「殿下、馬車が壊れますって」
「うるさい。……エルシーはなんて?」
ジョナサンは極力冷静な声で言った。
「エルスペス嬢は、バーティという愛称に覚えがなくて、そのことをステファニー嬢が、さすがに愛人に愛称は許さなかったのだ、と……」
「何をバカな! バーティなんて呼び方、俺はもともと嫌いだったし!」
「ですが、ステファニー嬢は終始、エルスペス嬢のことを愛人だと。……もし、殿下が本気だったら、手を出さずに紳士的にふるまうはずだと。……以前の、ステファニー嬢への態度のように」
俺は堪えきれず、もう一度、拳を馬車の壁に叩きつけた。
「ふざけるな! 俺はステファニーなんて好きじゃないから抱かなかっただけだ。キスもしたことはないが、別に礼儀を守ってのことじゃない」
「……バーティは常に、自分を最優先にしてくれた、と。昔は殿下を試すように我がままばかり言ってしまったけれど、バーティを本当に愛している、と」
「バカな……」
俺はため息をつく。――俺がステファニーの我儘を聞いていたのは、王妃に告げ口されて折檻されるからだ。別に愛してなんかいない。
ジョナサンがさらに言う。
「ステファニー嬢は、殿下を庇う形で亡くなった、アシュバートン中佐の恩に報いるために、エルスペス嬢を愛人にし、ついでに身体の欲を満たしているのだと――」
「うわ、下世話!」
ロベルトが言い、ジョナサンの頷く。
「僕もあまりだと思いましたので、ステファニー嬢には発言の取り消しを求めました。……でも、ステファニー嬢はなおも、エルスペス嬢のことを娼婦と同じで、貴族の出とは信じられない、自分だったら死んだ方がマシだと――」
俺がもう一度拳を握り締めるのを、咄嗟にロベルトが押さえる。
「もうやめて! 馬車がマジで壊れるから!」
俺は怒りのあまり、声も出ない。――ステファニーにもだが、自分自身に対しても。
エルシーの純潔を奪ったのは、俺だ。入院したおばあ様を人質にするかのように、嫌がるエルシーを力ずくで――。
「……エルシーは、なんて?」
俺が辛うじて声を絞り出せば、ジョナサンはまっすぐに俺を見た。
「エルスペス嬢は、見た限りでは全く、怯みませんでした。まっすぐにステファニー嬢を見て、自分に恥じるところはない、と。自分から殿下を誘惑したり、金目のものをねだっているわけじゃない、決定権は自分にはない、と」
そして、苦笑いして言った。
「それから、自分の知る殿下と、ステファニー嬢の語る殿下は、まるで別人のようだ、と。だから僕は、殿下は戦争を機に人が変わったと。以前は優しいというよりは無気力で、人の言いなりになってばかりな人だったけれど、戦争で地獄を見て、変わったのだと。僕は言いました」
ジョナサンの言葉に俺は目を見開く。
「だから――戦前の、グレンジャーやステファニー嬢が見ていた殿下と、現在の殿下はまるで違う、と言ったのです」
俺は、ジョナサンに尋ねる。
「それで、ステファニーは?」
「ええ、戦場で人が変わったから、自分から心変わりしたのか、とおっしゃったので、あくまで僕の私見だと断ったうえで、殿下は戦前は決められた婚約者だからステファニー嬢を尊重していたけれど、戦争を機に、人のいいなりになるのをやめたのだと思いますと、言いました。昔の殿下と違い、今の殿下はすべてを自分の意志で決めている。エルスペス嬢と付き合うかどうか、決めているのはすべて殿下ご自身だと。二人を別れさせたいなら、殿下を説得するべきだと申し上げました」
「……ステファニーは怒っただろう?」
「ええまあ、それなりには。でも、とりあえずはそれでおとなしく帰りましたよ。……ステファニー嬢は、本当に愛されていると思っていたようですね」
ジョナサンが俺に言った。
「……正直、戦前の殿下とステファニー嬢の関係は、とても歪だと思っていました。婚約者で従妹とはいえ、公爵令嬢が我儘で王子を振り回すなんて、なぜ殿下はもっと厳しく言わないのかと、ジェラルドなどは陰で怒っていました。彼女の我儘で王子の予定が頻繁に変更されて、警備の者が振り回される。しかし、殿下がそれを認めている以上、僕たちは何も言えない。――僕は、ステファニー嬢の我儘を許すことが愛なのかどうか、当時はわかりませんでしたが、今は違うとはっきりわかります」
ジョナサンは、少しだけ視線を窓の外に向け、それから俺を見た。
「ロベルトから聞きました。エルスペス嬢には、昔、会ったことがあって、その頃からずっと好きだったのですね。……それでも、周囲の言うままにステファニー嬢との婚約を受け入れるつもりだった。昔のあなたは何もかも受け身で、無気力だった。今思えば、生きることを諦めていた。でもあの時、目の前でマックス卿に死なれてあなたは変わった」
俺は微かに頷いて言った。
「ああ、そうだ。――マックスが目の前で死んで、俺はエルシーとリンドホルムを守らなければと思ったんだ」
「でも現状、あなたはエルスペス嬢を守れていません。議会も婚約を承認してしまった。……本当にエルスペス嬢を守るためにはどうすべきななのか、そろそろ考えるべき時にあるのではないですか」
「……それは、どういう……」
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