【R18】ゴーレムの王子は光の妖精の夢を見る

無憂

文字の大きさ
47 / 68
第五章 〈真実〉か、〈死〉か

ゴーレムの激情*

しおりを挟む
 ジョナサンの言いたいことは、しかし俺にもわかっていた。

 ステファニーとの婚約を議会が承認してしまった。立憲君主制において、王権は議会の制約のもとにある。王権そのものが君主の血筋の権威に基づくものである以上、王子の結婚に議会の承認が必要なのは当然でもある。俺も、そのことは理解している。

 エルシーとの結婚を議会が承認しない可能性は、俺も危惧していた。だが、俺が了承もしていないステファニーとの婚約を、議会が先走って承認するなんてことは、想定もしていなかった。

 俺は首相、バーソロミュー・ウォルシンガムの顔を思い出し、悔しさで奥歯を噛みしめた。

 議会の承認をもぎ取るよりも、一度議会が承認した婚約を取り消す方が、はるかにハードルが高い。議会の承認を受けて、内閣は俺の結婚に向け、具体的な日取りと予算の算定にかかる。――このままでは、ステファニーとの結婚にまっしぐらだ。

 議会の承認とは、要するに正式な婚約を政府が認めたことに他ならない。
 王子たるもの、貴族や議会が認める、相応しい女を妃に迎えるべきだと。
 王子たるもの、国のためなら好きでもない女と結婚して当たり前だと。

 お前は王太子のスペアのために作られた、ゴーレムに過ぎない。お前の命も人生も何もかも、すべては王家と周囲の貴族たちに捧げられるべきものなのだ。

 ――本当にエルスペス嬢を守りたいのならば。

 ジョナサンの言葉が俺を抉る。わかっている。俺が悪い。エルシーを抱くべきじゃなかった。婚約者でもないのに、体の関係を持ち、アパートメントに囲う。……誰がどう見てもだ。俺が、ただ一人の恋人だとどれだけ叫ぼうとも。
 
 そもそも、エルシーとの結婚を望むべきじゃなかった。俺がエルシーを望み、マックスは父上に俺と彼女の結婚の許しを願い出る。だが、それを知ったレコンフィールド公爵や、首相のウォルシンガムは、地方の伯爵令嬢ごときと、第三王子の俺との結婚など、認めるべきでないと考えた。古臭い貴族制にどっぷりつかり、古い権威によりかかった貴族や議会は、俺がおとなしくステファニーと結婚すれば、すべては丸く収まると思っている。エルシーやアシュバートン家は、我が国の平穏を乱す異分子だと――。

 ――そうして、エルシーの相続を潰し、エルシーを没落の淵に追い込んだ。アシュバートン家とリンドホルムごと、王家の恥部を踏み潰し塵と消し去ろうとした。

 なんという、身勝手な呪い。王家と王国の存続のためにローズを食いつぶし、今またエルシーまで。

 ――この呪いに、これ以上エルシーを巻き込むのか?
 


 昇降機エレベーターを昇りながら、だが俺の中の怒りだけがずんずんと大きくなっていた。

 すべてが許せなかった。レコンフィールド公爵も、首相も、父上も、エルシーを罵ったステファニーも、そして彼女を現在の境遇を強いている、自分自身も。

 チン、とベルが鳴って昇降機の扉が開く。すぐに玄関のドアが開き、ジュリアンが出迎えた。

「お帰りなさいませ」
「エルシーは?」
「お部屋に」
「変わりはないか? 昼間、厄介事が起きたようだが」
「特にお変わりは見受けられません」

 俺はタイを緩めながらまっすぐに自室に向かう。その足はどんどんと速くなって、最後は半ば走り込むように、エルシーの寝室に続くとドアを開けた。そこにいたのは――。

 暖炉マントルピースの前にたたずんで、壁の絵を眺めるエルシー。
 エルシーが薔薇園の絵を眺める時は、昔を思い出し、ままならぬ未来を思い悩んでいる時だと、俺は近頃気づいた。

 王子の婚約者に突然踏み込まれ、と罵られ、別れろと言われて。
 悩まないはずがない。誇りを傷つけられ、悔しさに歯噛みしたことだろう。すべては、俺のせいで――。

 エルシーの姿を目にして、俺の中でさまざまな感情が荒れ狂った。ただならぬ雰囲気を感じ取った、エルシーのブルーグレーの瞳が見開かれ、恐怖に身構える。その様子に、俺の激情が爆発した。

 俺は上着を脱ぎ、帽子を投げ捨てて、エルシーに襲いかかる。

「ま、待って……」

 抵抗するエルシーを俺は無理矢理抱き上げ、ベッドに引きずり込む。


 ――本当にエルスペス嬢を守りたいなら――

 わかっていても、どうにもならなかった。もうこのまま、エルシーを殺して俺も死ぬくらいの気分になって、俺はエルシーのガウンと寝間着ネグリジェを力ずくで剥ぎ取ると、彼女に圧し掛かり――。

 俺はエルシーの脚を強引に開かせ、無毛の秘所に手を伸ばす。秘裂を割り、指をまだ濡れていない蜜口に沈めれば、エルシーが痛みに悲鳴をあげた。

 胸を唇で吸いあげながら、乱暴に中を掻き回す。快感ではなく、おそらくは異物を排除するための、生物の防御本能から湿ってきたそこに、自分のトラウザーズの前を寛げて取り出した、猛った剛直を突き立てた。

「い、いやあっ……待っ……あああっ……」

 組み敷いたエルシーの眉が、苦痛に歪む。
 電灯が煌々と照らされたまま、ベッドのカーテンも開けっ放しで、俺は明るい中で力ずくでエルシーを犯す。まだ解れていないそこはいつもよりもさらに狭い。でも、夜ごと俺に慣らされた体は、ぎちぎちに締め上げながらも、やがて俺を受け入れていく。

 最奥までつながって、エルシーは抵抗も諦めてただ、枕の両端を握り締めて耐えている。俺はその様子を見下ろして、まずはウエスト・コートを脱ぎ棄て、カフリンクスを外し、ズボンのポケットに押し込むと、もどかしくタイを抜き取り、吊りベルトサスペンダーを下ろす。シャツのボタンを引きちぎる勢いで脱ぎ捨て、トラウザーズは膝まで下ろしたまま、俺はエルシーの細い腰を両手で掴み、ゆっくりと抽挿を開始した。

「ふっ……んんっ……あっ、あっ……」
 
 前戯もなしに無理矢理に犯されているというのに、エルシーの内部は早くも蕩けて、溢れる蜜がぐじゅぐじゅといやらしい水音をたて、奥を突かれるたびに甘い喘ぎ声をあげる。すっかり俺に調教され、俺の意のままに感じて溶ける淫らな女の身体。剃り上げられた無毛の秘所は幼女のようなのに、赤く腫れた花弁は俺にまとわりつき、その奥の蜜洞は俺を締め付ける。

 誰が何と言おうが、エルシーは俺のものだ。
 あの日、リンドホルムの早春の庭で、初めて会った時からずっと、俺はエルシーのためだけに生きてきた。

 薔薇の泉に囲まれてた、無垢で汚れないエルシーも、今俺に貫かれて、快楽に蕩けるエルシーも、どちらも俺だけのもの。

 俺はエルシーの、揺れる二つの胸を両手でわしづかみにする。俺の指の飲み込む柔肉を揉み込み、指の間から飛び出した、赤く熟れた木の実のような尖りを口に含む。

「んんっ……あっ……」

 舌で転がし、圧し潰すように舐め上げれば、その刺激に反応して、エルシーの内部がうねる。

「くっ……ああっ……エルシー……」

 じゅぼじゅぼと内部を抉るように肉棒を出し入れし、エルシーの内部を擦りたて、腰を打ち付ける。快楽を追い求めているけれど、快楽が目的じゃない。ただエルシーとつながり、一つになり、同じ奈落に堕ちていきたい。俺が足を取られた泥沼に、清純だったエルシーを引きずり込み、そのまま泥に沈めて閉じ込めたい。
 
「り、じー……」

 エルシーが荒い息の合間に俺を名を呼び、俺に手を伸ばす。

 俺はその両手を握り、指を絡め、もう一度ベッドに押し付け、縫い留める。さらに激しく腰を動かしながら、エルシーの唇を塞ぎ、舌を絡め――。

「ん――」

 エルシーの内部が俺を締め付け、絶頂する。俺はその締め付けを振り切るようにギリギリで楔を抜き去り、エルシーの白い下腹に射精した。

しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

処理中です...