家政夫は大変です

蒼龍葵

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第一部 久住家にようこそ

インキュバスの甘い罠

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 夕方になってようやく躰が動くようになったので、俺はかなりスローペースで着替えを済ませ、風呂場を探して一階をうろうろしていた。
 ひ、広すぎるんだよこの家。部屋も多いし、迷路みたいになっている場所もあるしご案内板が欲しいくらいだ。

「くそお……愁一さんに案内してもらうべきだったな……」

 俺をここに連れてきた愁一さんは多分、社長クラスの仕事をしているのだろう。あれから一度も姿を見かけないし、誘われもしない。本当に気まぐれで俺をここに連れてきたのだろうか?
 あ、でも雇い主は一応愁一さんだから、もしもこのまま愁一さんに会えなかったらまさか契約自体無かったことにされる?
 ──それはないか。こんな金持ちがケチケチするとは思えない。

「疲れた……」

 かれこれ15分くらい屋敷で彷徨っている気がする。キッチンにいるシェフに話しかけても俺と会話してはいけないルールでもあるのか、困惑したように眉を寄せて奥の方に消えてしまう。
 掃除をする人を時々見かけるが、同じように俺からそそくさと離れていく。

「いっそあの兄弟の誰かに場所を聞くか……」

 いや、あんなのと一緒に風呂になんて入ったら何をされるか……!

「綾人、何してるの?」

 噂をしていたら……この天使のような声は渉さんだ。
 夜勤明けでひと眠りしたせいか、機嫌はいいようだ。本当に天使のように可愛らしい笑みを浮かべている。
 一方、その真後ろに立っている匠真さんは少しやつれたように見えた。この二人の間に何があったんだろう。勿論、そんな恐ろしいことは訊けない。

「えっと……お風呂に入りたくて。この屋敷広いから迷子になってました」

 もう二人に絡まれたら逃げられない。ならばと素直に目的を白状すると、天使が俺の手を引いた。

「じゃあ一緒に入ろうよ、ほら。こっちこっち」

 この笑顔に誘われると躰が疼く。か、可愛すぎる……!
 惚けていると匠真さんに耳打ちされた。

「気をつけろよ、渉が一番性欲強いからな」
「はい!?」
「……あいつはこの家の天使だけど、猛烈なドMでドSにもなる。特に夜勤明けに捕まると大変なんだ。お前がここにきてくれて本当に良かった」

 ああ、匠真さん、その情報はもっと早く欲しかったです。もしかしなくても、あなたが先ほどよりやつれているのはそういうことなのでしょうか。
 やっぱり怖くて聞けない。風呂場の方で渉さんが二人とも早く、と急かしているので俺達は急いでお姫様のもとに向かった。



 案内された浴室は一般人の使う風呂ではない。銭湯、もしくは温泉レベルの広さだ。
 よくテレビで見る億万長者のプール付き大豪邸ってレベルじゃないか。しかも、兄弟全て仕事をしているので真っ当な金なのだろう。特に渉さんが看護師だと言ったので他の兄弟が黒い仕事に手を染めているとは考えにくい。
 長男の愁一さんはT商事で何をしているのだろう。そういえば、彼のことだけはよく解らない。

「ねえ、早くおいでよ綾人」
「は、はい」

 先に湯船に入った渉さんの肢体は本当に中性的な天使に見えた。隠しきれない色気に愛くるしい笑顔。あの強烈なフェラをしてくるとはとても思えない。
 魔性の女……じゃない。彼は男。インキュバスか。惹きつけられる妖しい魅力にドキドキしてしまう。

「ほら、こっちきて」
「あ、渉さん、俺まだ脱いでないですよ」

 モタモタ服を脱いでいると天使は湯船から脱衣所まで大股で近づき、俺の服を引っ張った。

「焦らさないでよ」
「え、えええ……?」

 どう考えても匠真さんの話だと二人は先ほどまで愛し合っていたはずだ。まだやりたりないのだろうか?
 助け舟を求めて匠真さんの方を見るが、彼はもう無理と首を振っていた。

「はい、綾人バンザーイ」
「う、わっ」

 すぱっと服を脱がされ、下着までズルズル引き下げられる。

「早く頂戴」
「ちょ、ちょっと渉さん! 俺、先に風呂に入りたいです!」

 幹を両手で撫でられ、唇で愛撫し始めたので流石にそれは止めた。脱衣所でエッチなんてしたらお互い風邪をひいてしまうし、それに、いい加減ベタベタしたものを綺麗に落としたい。

「綾人、僕の身体も洗ってくれるの?」
「ええ。それもお仕事ですし」
「もー……仕事仕事って。綾人は僕達の兄弟だよ、僕にとっては大切なお兄様」

 その甘い声でお兄様なんて言われたら本当におかしくなるからやめて欲しい。
 自分には兄弟が居ないので、こんな可愛い弟が出来たと思うと嬉しくなる。変態なのは否めないが。
 あぁ、いかんいかん。まだアブノーマルな世界に足を突っ込みたくない。一応、まだ健全な未来を考えていたいんだよ俺は。

「じゃあ、洗いますよ」

 柔らかいスポンジを泡立てて渉の腕を取る。手折れそうなくらい細い腕は本当に女性のようだ。色素も薄いし、体毛もかなり薄い……手入れがかなり行き届いているような赤ちゃんのように吸い付くような素肌だった。
 存在だけでエロいって、こういう人のことを言うのだろうか。ここに座っているだけでフェロモンを出してるような……。

「あっ……んぅ……くすぐったい」
「ご、ごめんなさい……」

 考え事をしながら身体を洗っていると渉さんの敏感な乳首をやたらゴリゴリ弄っていたようだ。
 不意打ちのエロい声にこっちの方がびっくりしてしまう。

「や、ああん……」

 耳まで赤くなる渉さんがすごく可愛い。俺の中にある邪(よこしま)な気持ちが膨らんでいく。
 泡だけ指先ですくい取り、直接彼の赤い乳首をきゅっと摘み、反対側を舌で舐めるとぴくりと小さな躰が跳ねた。

「や、だ……綾人……」
「渉さん、敏感なんですね……」

 今度はゆるゆると乳首の周りを泡で悪戯すると急激に彼の体温が上がった。

「あぁん……気持ちいい……」

 頭の中ではこれ以上悪戯するのは危ないと理解しているのだが、危険なもの程、啼かせてみたいと思ってしまう。

「あ、あぁっ……綾人、こっちも……」
「どこを洗いますか?」

 渉は細い躰を少しくねらせて右手で熱を帯びている下腹部へと俺の手を誘導した。分かっているけど、まだそこには触れずに際どい足の付け根だけを泡で撫でる。

「意地悪……してよ、もっと」
「ッ……」

 その哀願に俺の理性の糸はあっさり切れた。
 先の闘いを終えてのんびりと浴槽に浸かっている匠真さんが俺の暴走を止める様子はなかったので、俺は渉さんをタイルの上に組み敷いた。

「触られたいんですか?」
「うん。いっぱい触って……舐めて。綾人の、僕のナカに入れて」

 インキュバスに誘導された俺は熱を帯びた渉さんの幹をしごいていた。唾液まで飲み込むキスを繰り返し、ご希望通りに渉さんの中に自分の欲望を打ち込む。

「あっ、あっ!」
「匠真さんと、した後なのに……なんであなたはそんなに……」
「はげし、……あや、と……ぉ」

 決して嫉妬ではない。言葉責めというものが分からないのでたまたま近くにいる匠真さんの名前で言ったものの、渉さんは大好きな匠真さんに犯されるところをまた妄想しているのか、幸せそうに微笑み俺の腰に足を絡めてきた。

「綾人、もっと欲しい……もっと……もっと突いて!」

 インキュバスの誘いに完全に負けた俺は、そのまま渉さんの中を蹂躙して果てた。
 ことが終わり肩で呼吸を整えている俺を見かねた匠真さんが、だから言ったのに、と苦笑しながら俺を労ってくれた。
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