家政夫は大変です

蒼龍葵

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第一部 久住家にようこそ

綺麗なひとは好きですか?

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「おっさん達の相手は疲れるんだよねえ。俺まだ30歳だし……悪いんだけど、綾人も一緒に付き添いしてくれる?」
 
 夕飯後に瑛太さんに誘われたのは彼が経営しているホテルの誕生祭だった。

「……ねえ綾人、勿論来てくれるよね?」
「嫌です。俺、マナーとか堅苦しいの苦手ですから」

 引き下がると思ったのに、瑛太さんはウルウルした眸で俺の両手を掴んできた。

「綾人、俺を助けて」
「はぁー…………いつですか? その誕生祭は……」
「やった!」

 せめて最低限のマナーだけは習いたいとお願いすると、翌日から3日間、専門の講師をつけられた。



 元ラブホとは言え、海外の顧客を収集して今やその収益は兆に昇るところまで発展したそのホテルは、景色もいいし使い勝手が良いとかなり好評だという。
 瑛太は20代前半の頃から大きなビジネスに手を出していたかなりのやり手だ。
 その頃はまだ父が健在だったから、と言う話から、瑛太の営業スキルは父親譲りなのだろう。

「失礼。綺麗な人だね。君は瑛太様のご友人ですか?」

 何もしゃべらなくて良いと言われているので、俺はにこりと微笑みだけ返し、まだ代表挨拶をしている瑛太の顔を見る。
 こんな千人規模の人間相手によくあれだけ堂々と喋れるものだと感心してしまう。

「そのつれない姿も美しい……噂の伴侶かな」

 そう──俺は女装をさせられていた。   
 金髪のウィッグは重いし、化粧が気持ち悪い。口紅をつけたのであまり口を舐めるなと怒られた。
 瑛太はあのルックスに金と権力。モテないわけがない。だが、当の本人は全く女に興味がなく、独身貴族を貫きたいと豪語している。
 その周囲による彼曰くウジ虫<女>を寄せない為に協力してくれと言うのが今回の話の発端だった。
 ハイヒールだけは勘弁して欲しいと願い、ロングドレスとローヒールでコーディネートは落ち着いた。
 絶対バレるだろうと思っていたのに反し、意外と純粋そうな金髪美女が完成してしまった。これじゃあ綾人の方にウジ虫が寄るよとメイクしてくれた渉さんが笑っていたのがまさしく今、現実になっている。

 これで10人目。俺は男ですと言ってこの場から早々に立ち去りたい。
 慣れないシャンパンを飲みながら早く瑛太がこっちに戻ってきてくれないかとただひたすら待つ。
 馴れ馴れしく寄って来た男が肩を掴んできた瞬間、振り払おうと躰の向きを回転させると、別の力で後ろに引き寄せられた。

「悪いな、この素敵なレディは瑛太の大切な人だから、オッサンが声かけちゃダメだって」

 知らない人にぐいっと引き寄せられて驚いたが、瑛太を呼び捨てで呼んでいることから、この人は仲間だと安心する。
 丁度、俺が口説かれている光景を見ていた瑛太が重役連中との会話を無理矢理切ってこちらに近づいてきた。

「千尋(ちひろ)、悪いな。助かった」
「いーや別に。むしろ役得? 気を付けろよ瑛太。お前の恋人、相当おっさん達の目の色変えさせたからな」

 嬉しくない……女装させられて、しかも親父連中にモテたって全く嬉しくない!!
 しかも、瑛太があちこち捕まって俺の側にこられない所為で不機嫌MAX。
 スイッチで俺の中にあるアレを振動させているから正直もう立っているのも辛い。
 元々、俺が根負けして瑛太さんにすり寄って部屋にまで運んでもらうという設定だったのに、いつもいつも主導権をあちらに握られて悔しくて我慢していた。
 そんなやせ我慢が更なる悲劇を呼び、おっさん連中が集まったのだ。

 こんなことなら、さっさと部屋まで運んでもらえばよかった。
 こつんと瑛太の肩口に顎を乗せてもう無理です……としおらしく言う。
 一気にご満悦になった瑛太はそうか、そうかと俺のウィッグを優しく撫でながら甘い声でよく頑張ったな、と囁く。

「俺の大切な人が具合悪いので、ちょっと休ませてきます。後はみんな適当にパーティ楽しんでください」

 軽くウィンクをして綾人を軽々と抱き上げる瑛太は相当男らしく見えただろう。
 女性達はうっとりしており、羨望の眼差しで見つめられるが、俺の気分は複雑だった。
 まあ、でもこうやって見せつけたことで瑛太さんの周りに集まるルックスと金と権力目当てという女性が減るならいいのか。

「思ったよりも綾人に頑張られちゃったなぁ、そんなにその玩具感じない?」

 はぁショック、とため息をつく瑛太は心底残念そうに呟いている。
 抱きかかえられたままでも尻の中で与えられる微妙な振動は続いている。下着の中はひどい有様だと思うが、敢えて何も答えずに瑛太の首に手を回す。

「……綾人、部屋入ったらちゃんと中見せて」
「悲劇ですよ、多分」

 到着したスイートルームにあるクィーンサイズのベッドに優しく下ろされる。

「ドレスの裾持ち上げて」

 淡いピンク色のドレスの裾をゆっくり持ち上げると、黒いレースの下着の中で蠢く玩具が小刻みに震えていた。

「相当我慢してたんだね。もうこんなになっちゃって……」
「あっ……」

 先走りで下着がぬるぬるになっていた。その変化も嬉しそうに瑛太はスイッチを切り替えた。

「や、やだっ……もう……抜いて」
「どうしよっかなあ。綾人我慢してたし、もうちょっと頑張れるんじゃない?」
「もっ……や、だ……ぁあ……ぬ、抜いてくださ…い」

 ちくしょうこのドSめ。きちんとお願いしないともっと酷いことするってことかよっ!

「あぁっ……くる、しぃ……」
「どうして我慢しちゃったのかなあ…綾人は。最初から俺に縋れば良かったのに」
「こ、の……変態……ッ」
「あぁ嬉しい。褒めてくれるんだね綾人。可愛い」

 そうだった、この人にとって変態は最高の褒め言葉だった。
 泣いても喚いても赦してもらえず、両足をぐっと横に開かれる。

「玩具でイきたい? それとも抜いて欲しい?」
「だ、から……抜いて……くだ、さ……」
「んーこの玩具じゃダメかあ。もう少し内径と振動を変えて」

 玩具の分析は終わってからにしてくれ!! 俺は、限界なんです!

「もう、瑛太さ……の……挿れて」
「綾人は本当に可愛いね……沢山感じて、俺で全部満たしてあげるから」
「んんっ……ぅ」

 乱暴に玩具を引き抜かれ、一瞬その刺激でイきかけてしまった。
 これ以上はダメ、とまたはちきれそうな雄をぎゅっと握られ、玩具の代わりに熱い肉棒が奥まで一気に挿れられる。

「本当は、ちゃんとゴムつけないとダメなんだけど……ごめんね綾人」
「あ、ああっ……瑛太さ、……んぅ」

 全身からじっとりした汗が吹き出、腰をロックされたまま激しく奥まで穿たれる。

「はぁっ……はぁっ」

 瑛太の頬を伝う汗が綾人の胸にぽたりと落ちた。この綺麗な男が俺の躰に溺れている。あんなに綺麗な女性達に言い寄られても見向きもしなかったのに。

「……綾人、気持ちいい?」
「んんっ……は、い」
「そう……良かった。一緒にイこうね?」

 満足そうな瑛太に揺さぶられ、いつも以上に貫かれる。
 いつもより激しいセックスに俺はふと脳裏に恐ろしい妄想が過った。

 まさか、とは思うけど、女装した俺に欲情したわけじゃないよな?
 玩具プレイに女装が大好きとか、それだけは勘弁してくれ。男を捨てたわけじゃないからそれだけは止めないと。

 互いに求め合い果てた後、掠れゆく意識の中でそう思う綾人なのであった。
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