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第一部 久住家にようこそ
プログラマーさんのお仕事
しおりを挟む「よし……」
やはりなあなあで退職は自分にとっても、今後のことを考えてもよくない。
期限はとうに過ぎていたが、しっかり退職の手続きをする為に、綾人は久しぶりに自分のスーツに袖を通した。
ネクタイをびしっと絞めてしばらく放置していた革バックを持ち部屋を出る。
「綾人っ! も、もしかして、出て行っちゃうの……?」
渉さんと言い、匠真さんと言い、どうして少し外に出るだけで過剰に反応するのだろうか。
最初から「前の人とは全然違う」と言われてたから、きっと以前の使用人と何かあったのかもしれない。
「S商事に、退職届を出し忘れていたんです。もう時効でしょうけど、色々辞める手続きがあるんでそれの処理してきます」
ついでに一度自分のアパートに戻って荷物を処分してこよう。あと必要なものとか、書類とか溜まっていたらそれも。
「そっか……ちゃんと帰ってきてよ」
「はい、行ってきます」
不安そうにする匠真さんが妙に可愛く見えてしまい、俺は彼の額にキスをして出かけた。
◇
都会の街並みに溶け込むと、現実に戻ってきた気がする。
あの兄弟から離れると、あれは夢だったのではないか?と錯覚してしまう。
「あ……篠原さん!」
久しぶりにS商事に入ると、職員は綾人に大丈夫か? と声をかけてくれた。
「突然篠原がいなくなって困っていたんだよ。また来てくれるのは有難い」
「いや、それが……新しい仕事につくから退職の手続きに来ただけなんだ」
「え? 退職?」
同僚は気を利かせて受付に色々確認してくれた。すると、既に手続きは終わっているから問題ないとの返答があり、しかも中に入れてもらえなかった。
詳細は教えてもらえなかったが、俺は愁一さんに引き抜かれた形らしい。
一生懸命働いた8年間は何だったんだろう。こんなにもあっさりと追い出されて今や仕事というより男娼だ。
まだ28だし、出来ることならバリバリ働きたい。
「綾人、手続きは終わった?」
聞きなれた声に項垂れた頭をあげると、シックなスーツに身を包んだ匠真がこちらに手を振っていた。朝の寂しそうな表情は消えていたので少しだけほっとする。
「あ、匠真さん。珍しいですねスーツに、パソコン?」
「うん。これからT高校に行って、ハッキング仕掛けてきたデータから犯人割り出しと、新しいプログラムでセキュリティ改善かな」
匠真はハッキングもプログラミングもお手の物だ。俺よりも年下なのに、なんでもできる彼が少し羨ましい。
こないだ見せてもらったファイリングのセンスも抜群だったし。
「綾人も手続き終わったなら、俺の仕事に付き合わない?」
「いいですよ、荷物持ちます」
「良かったぁ……綾人に拒否されたら、俺……愁一兄さんに合わせる顔がなかったよ」
何故か匠真はほっとしていた。別に自分は愁一さんに雇われている身なので、この兄弟からのお願いは、よほどのことがない限り断る理由がない。
ノートパソコンの入っているバックを持ち、T高校まで5分程歩く。
到着した先のコンピューター室には30台のパソコンがずらりと並んでいた。
今の授業は殆どパソコンを介してのことが多い。これがハッキングされたとなると面倒な作業のような気がしたが、匠真は教師陣にプログラム更新は3時間くらいと言った。
「ただ、作業中は集中しないといけないのと、機密データなので、人を絶対に入れないでください。何かありましたらこちらから連絡します」
「久住さんでしたらすべてお任せします。よろしくお願い致します」
匠真のプログラムの腕は知る人ぞ知るの業界の中では相当有名らしい。
マザーパソコンと持ってきた仕事道具を繋ぎ、データベースの中身を洗い出す。
画面に羅列されている意味の分からないスペルは綾人の頭をかなり混乱させたが、匠真はそれを見極めながらあーこの程度かと笑っていた。
「よし、これで終了。ま、高校のデータなんてハックした所で個人情報がちょっと洩れる程度だし犯人は後で引き取ってもらおうか」
「え? まだ5分しか作業してないのにもう終わったんですか?!」
時計を見ると実際5分間でハッカーの割り出しが終了していた。
その後にCD-Rをマザーパソコンに入れてセキュリティシステムの書き換えを始める。
「あぁ、もしかして綾人は時間かかると思ってた? 違うよ、新しいセキュリティプログラムを入れる方が時間かかるの。パソコンが勝手に再起動繰り返してやってくれるんだけど」
「へええ……凄いなあ」
関心して資料を見ていると背後から不埒な手がワイシャツのボタンをはずしてきた。
「ちょ、匠真さん……?」
「しーっ……綾人のスーツ姿ってエロいんだもん……どうせパソコンが頑張ってくれている間俺らも帰れないし、いいだろ……」
仕事でここに来てるのに何で欲情してんだこの人は! しかも、ここ高校だぞ!?
拘束から離れようとするが、がっちり躰をロックされており殆ど身動きが取れなかった。
「匠真さ……」
「静かに。誰か来たらやばいでしょ?」
耳元で甘い声で囁かれ、それだけで腰が砕けた。耳朶を甘噛みしたまま耳の裏まで舌先でちろちろ舐められ、背筋が粟立つ。
「っ……んん」
口元は声を出さないように自分で抑えていたが、悪戯がどんどんエスカレートしていくので指の間から声が漏れる。
「うわっ……!」
一気にスーツのズボンだけが下げられ、既に熱を帯びた半身をパンツの上から舐められた。
「……イケナイことしてるね、俺達」
わかっているなら今すぐやめて欲しい。大体、もしも誰か来たら……!
確かにパソコンの作業中人を入れるなとは言っていたが、誰かが入ってこない保証なんてどこにもない。
誰かに見られるかもしれない恐怖と、感じてしまい、声を抑える自信がないダブルパンチに躰が震える。
「やらしいね、綾人」
下着はやはり下ろしてもらえず、布越しから前を揉み扱かれ、口元に当てられていた手は指を舐めるように口内に入れられた。
「ふぁ……っや、だ……」
「えっちな綾人……もうドロドロになってる」
太腿の方から手を下着の中に入れて直接触ってくる。先走りがじわりと溢れるのを自分で止めることなんてできない。
「あ、あぁっ……た、くま…さ……ダメ、だって……こんな……」
「こんなとこで?」
くちゅ、と後ろにも指を入れられる。ゼリーのない乾いた指は内壁の収縮で押し返された。
「服、汚れ……」
「淫乱な綾人が乱れたら汚れちゃうかも……じゃあやめる?」
ぴったりと密着した匠真の雄も熱を帯びていたので、ここで中断したらお互い辛い。
いや、分かっているからこそ、敢えて綾人に恥ずかしいことを言わせたいのだろう。熱い吐息を耳元で感じ、仕方ないと腹を括る。
「匠真さん……して」
「……綾人、いい声は家でたっぷり聞かせてもらうから」
口元は押さえたまま、後ろからの突き上げにただひたすら悶える。
声を殺して快楽に溺れる綾人の乱れように、場所を変えるのも悪くないね?と悪びれる様子もなく囁く匠真に呆れてしまった。
こんな青少年の学校でこんな卑猥なことを……。
家に帰ったらいい加減彼のこういう自由奔放なところは説教しなきゃいけない。そう心に決めた綾人であった。
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