家政夫は大変です

蒼龍葵

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第一部 久住家にようこそ

優しい唇と露天風呂の誘惑

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 今日は兄弟の相手から解放され、愁一の付き添いで有名な旅館へ来ていた。
 しかし、愁一の仕事はまだ謎のままだ。受付で彼の姿を見たオーナーらしき人が飛んできてすぐに特別室へ案内された。

「愁一さんって、一体何の仕事をしてらっしゃるんですか?」

 T商事の前で拾われたが、彼がT商事で働いているような話は聞いていない。
 しかし愁一は綾人の質問にふっと笑みを返しただけで仕事について答えようとはしない。

まさか。
いや、まさか……。
とても口には出せない裏組織のボスとか?それとも、やっぱりマフィアとか繋がりのあるヤの人とか!?
そんなん、今更でしょう。でも裏組織のボスだったらもっと怖いものをぶん回したりして、俺みたいな何も取り柄のない一般人を囲ったりなんてしないでしょきっと。

「俺、怖いところに家政夫にきちゃったんでしょうか……」
「今更だろう、お前はよく順応出来ている。あのやんちゃな弟達を相手に出来たのはお前でだ」
「気になっていたのですけど、瑛太さんも、匠真さんも、渉さんも同じことを言ってました。前の人と全然違うって」

 前の人、という言葉は愁一の表情を少しだけ曇らせた。一体久住家で何があったのだろう。
 それに、匠真と渉の異常な兄弟間の愛情も。

「愁一さん、久住家の本当のことを教えてください」
「綾人……それを聞いたらお前はもうこの仕事を途中で放棄はできないぞ?」

 それでもいいのかと訊かれると流石に悩む。
 今の囲われる生活は人間としてダメになってしまう気がするし、でも兄弟の不思議な関係が知りたいという好奇心もある。

「前に家政夫をしていた人の事だけ知りたいです」
「実は、前に使用人がもう一人いてな。綾人のようにごく普通のサラリーマンだったよ」

 話が長くなるからこっちにおいで、と言われ、愁一の座るレザーチェアーの横に座った。

「使用人の名は礼人あやと。お前とは正反対の性格と容姿だ。鋭い眼光に人に媚びない所が妙にそそられた。あいつの魅力に取りつかれた母親は……ある日、あの男と一緒に久住の家を出て行った」

 しかも、母親が多額の金を礼人という男に貢いでいたらしい。何よりもアヤトという同じ名前でそういうことがあったのに、あの兄弟達は何も感じなかったのだろうか。
 ふと渉と匠真の顔が浮かんだ。

「まさか、母親が出て行ってから、渉さんがおかしく……?」
「そう。渉はまだ12歳の子供だった。母親が居なくなってから愛情が欲しくて欲しくて壊れてしまった渉を癒したのが匠真だ」

 最初匠真が変態だと思っていたのを今更ながら詫びたい。彼は大切な弟が壊れてしまったのを現実に戻す為にわざと激しく抱いていたのだろう。肌を重ねることで、互いの存在を確かめる為に。

 なんだ、ただの変態かと思ったのに意外と優しいんじゃないか……
 愁一は項垂れている綾人の頭をぽんぽんと撫でると今度は膝の上に座りなさいと囁いた。

「愁一さん……」
「お前は、同じ名前であってもあの使用人とは違う。偶然とは言え、アヤトという名前に我々はかなり敏感だった。でもお前が与えてくれた愛も好意も言葉も、私達兄弟を十分癒してくれた」

 改めてそう言われると気恥ずかしくなった。

「この姿勢、落ち着きませんね……」

 膝上に座っているせいで必然的に抱きつく形となっている。密着する素肌は旅館の部屋着を着ているのに、逞しい躰からは上級な香りが漂っていた。
 触って欲しい……乱暴にされてもいい。なんて思うのは、やっぱり自分も少し変態になってしまったんだろうか。

「愁一さん……」
「そんな目で見るな。歯止めが利かない」
「いいです……歯止めなんて」

 最初はただの家政夫として久住家に入ったのに、事情を知るとあの変わった兄弟に対して愛着が湧いてきた。

「んっ……」

 肩から部屋着を脱がされ、露わになった鎖骨を軽く吸われる。

「愁一さん……お風呂、いきましょう?」
「全く……あいつらがお前をこうも変えてしまうとは……」

 我が弟達ながら嫉妬してしまうと囁かれ、綾人は肌を赤らめた。


 露天風呂からは綺麗な夜景が一望できる。

「はっ……しゅ、いち……さ……」

 愁一さんのキスは他の3人とは違う。大人の余裕があってあちこち触れられる度に背筋に甘い電流が流れる。
 ぱちゃんとお湯が跳ねる度に現実に戻されるが躰の熱はさらに昂る。

「んんっ……」

 くりくりと敏感な先端をいじられ、お湯の中でじんわりと先走りの液が染み出た。
 脱力して解れた後ろの蕾にもお湯と一緒に指を入れられて前後からの刺激に強烈な快感が脳まで突き上げる。

「あ、あぁっ……愁一、さっ……」
「お前がこんなに厭らしい声を出すとは想像もしていなかったよ……本当にあいつらは」

 更に濃厚なキスをされて、それだけで脳みそが蕩けそうだった。
 後ろに入れる指を二本に増やされても不思議と痛みを感じない。

「綾人、お前は、私の大事なひとだよ」
「ありがとうございます……俺も、愁一さんが……んん…」

 続きの言葉をキスで呑み込まれる。縋る場所を求めて彼の首筋に腕を絡め、背中は岩に当たって痛かったけれども、指を引き抜かれた後に足を大きく開かれて中に猛った熱が入り込んだ。

「んぅっ……」
「きついな……お前の中は熱い……」
「あ、あぁ……愁一さん……ッ」

 ぱちゃんとお湯が動く波と共に、軋めく躰の中で熱く轟く愁一さんの熱を感じられて、俺は恍惚の表情で闇の中で嬌声をあげていた。


 露天風呂で散々暴れてしまったせいで、俺は翌日、高熱を出して寝込んでしまった。
 迷惑をかけてしまったことに申し訳ないと思う反面、愁一さんのたがを外すのも悪くないなとひっそり思う綾人であった。
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