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第一部 久住家にようこそ
変態さんとインテリ営業マン
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ホテル経営をしている瑛太さんは毎日忙しい。今日もお洒落なスーツを着て朝から視察の準備を整えていた。
「瑛太さん、今日は遅くなりそうですか?」
綾人は自分が食事を作る担当ではないのだが、今晩誰が家にいるのかを把握する為に毎朝各部屋を回ることを日課として始めた。
渉さんは看護師なのでいちいち聞かなくても勤務表通りの仕事だが、他の3人は違う。
俺の視線に気づいた瑛太がうーんと考えながらネクタイをきゅっと締めた。
「そうだなあ……ちょっと1人じゃできない仕事があるんだよね。綾人も今日同伴してくれる? スーツで」
「は、はい。分かりました」
「今日は悪いことしない。本当だよ?」
瑛太は光沢感のある高級そうなダークグレーのスーツをクローゼットから取り出した。
「似合うな、やっぱり」
「は、はは……瑛太さんのスーツは高いのでスーツ効果ですよ」
コーディネイトしてもらったストライプのネクタイと薄いブルーのシャツもサイズはぴったりだった。
「やっぱり仕事柄かなあ。銀行マンみたいに堅い印象──でも、それを暴いて中の淫乱な部分を曝け出したい欲望も出るけど……」
「え、瑛太さん……?」
触れるだけのキスをした瑛太は優しい笑みを浮かべていた。
彼が動いた瞬間に香る爽やかなトワレの匂いにぐらつく。
あー、この人って玩具大好き変態プレイさえ無ければ見た目と喋り方だけは王子様なんだよなあ……。黙って微笑んでいたらモテる要素しかない。
「じゃあ行こうか」
◇
連れて来られたのは瑛太が経営しているホテルの分店だった。
どうもよくない政府関係者が逢引の為に使用している噂が広まっており、マスコミにばれたら客層に影響が出るから早めに調べたいらしい。
「でも、こういうのって、探偵に頼めば、すぐに足元割れるんじゃないですか?」
「俺は粗さがしを生業にしている人を職場に入れたくないんだ。ひとは裏切る生き物だからね」
カメラを持ちながら苦笑する瑛太の眸はいつもより悲しそうだった。もしかして、過去に何かあったのだろうか。
そういえば、前に愁一さんから聞いたアヤトさんの仕事を知らない。もしかして、探偵だったとか?
「……そろそろ、かな」
窓際に佇む瑛太は真剣なまなざしで反対側のビルの窓を見つめていた。うわ、無言で佇んでいるだけで絵になってめちゃくちゃ格好いい。──って、俺は何を考えているんだ!
「あと、スキャンダル探しを仕事にしてる奴よりも先に、美味しい情報って掴みたいでしょう。それをネタにして強請るの楽しいよ」
王子様スマイルでものすごく物騒なこと言わなかったかこの人。今強請るって……。
「廊下の監視カメラが仕事してくれるし、部屋の中には仕掛けられないけど使用後の写真は証拠になるからね」
受付システムは無人なのでいじることは出来ないが、空き部屋と相手が入りそうな部屋の使用後写真を撮影したり使用禁止にすることは経営者の瑛太であれば簡単に出来る。
ふと疑問が過る。最初っから自分の権力を使って片付けられるものであれば彼一人でよかったのではと。
「だったら、俺が同伴する必要って……」
「ばっかだなあ綾人。忘れてたかもしれないけどここ、ラブホだよ?」
「………………」
そうでした。見た目がビジネスホテルに変わっていたからすっかり忘れていました。
瑛太さんの運営しているホテルはビジネスホテル風に改装された元ラブホが多い。
「あちらさんがホテルから出てくる頃に俺宛に連絡が来るようになってるから、それまでは俺達も楽しもう?」
「え、瑛太さん今日は悪いことしないって……!?」
「うん。悪いことはしないと言ったけど、綾人とセックスしないなんて一言も言ってないよ?」
「な、な、な……」
悪びれる様子もなく言う眸に、俺は上手く言葉が出てこなかった。
開いた口が全く塞がらない。
じゃあこのお洒落なスーツは!? 朝のコーディネイトは!? 思わせぶりな発言は何だったんだよ!
不敵な笑みを浮かべてネクタイを緩める瑛太さんが怖い。やる気満々じゃないか!!
「あのぉ……俺、そういうつもりで来たわけじゃあ……」
「だって、綾人のきっちり着こなしたスーツ見てたら完全に欲情しちゃって。そのネクタイで縛ってスーツを乱したい」
スプリングの利いたベッドが二人分の体重を乗せてわずかに軋む音を立てる。長い指が器用に綾人の首にきっちり巻き付いたネクタイを外していく。
触れるだけのキスをしながら胸元のボタンを外される。
トワレの香りと色気のある瑛太さんの切れ長の眸に魅入られて抵抗らしい抵抗もできない。
「あっ……あっ!」
両手首をネクタイで縛られ、スーツは中途半端に乱されただけで下着の上から愛撫される。
「パンツがびちょびちょになっちゃうね」
「や、やだ……ぬ、脱がせて……くだ、さい」
「今日はハムちゃんもうさぎちゃんもないからなあ……それに、折角スーツ着たまま悶える綾人は珍しいし」
結局最後までスーツは脱がせてもらえず、下着の中は大惨事だった。
「綾人……今度は執事プレイしようか?」
ぐったりと果てた俺に腕枕をしたまま、王子様スマイルでそう言いのける瑛太は本気だ。
久住兄弟……本当に恐ろしい。
「瑛太さん、今日は遅くなりそうですか?」
綾人は自分が食事を作る担当ではないのだが、今晩誰が家にいるのかを把握する為に毎朝各部屋を回ることを日課として始めた。
渉さんは看護師なのでいちいち聞かなくても勤務表通りの仕事だが、他の3人は違う。
俺の視線に気づいた瑛太がうーんと考えながらネクタイをきゅっと締めた。
「そうだなあ……ちょっと1人じゃできない仕事があるんだよね。綾人も今日同伴してくれる? スーツで」
「は、はい。分かりました」
「今日は悪いことしない。本当だよ?」
瑛太は光沢感のある高級そうなダークグレーのスーツをクローゼットから取り出した。
「似合うな、やっぱり」
「は、はは……瑛太さんのスーツは高いのでスーツ効果ですよ」
コーディネイトしてもらったストライプのネクタイと薄いブルーのシャツもサイズはぴったりだった。
「やっぱり仕事柄かなあ。銀行マンみたいに堅い印象──でも、それを暴いて中の淫乱な部分を曝け出したい欲望も出るけど……」
「え、瑛太さん……?」
触れるだけのキスをした瑛太は優しい笑みを浮かべていた。
彼が動いた瞬間に香る爽やかなトワレの匂いにぐらつく。
あー、この人って玩具大好き変態プレイさえ無ければ見た目と喋り方だけは王子様なんだよなあ……。黙って微笑んでいたらモテる要素しかない。
「じゃあ行こうか」
◇
連れて来られたのは瑛太が経営しているホテルの分店だった。
どうもよくない政府関係者が逢引の為に使用している噂が広まっており、マスコミにばれたら客層に影響が出るから早めに調べたいらしい。
「でも、こういうのって、探偵に頼めば、すぐに足元割れるんじゃないですか?」
「俺は粗さがしを生業にしている人を職場に入れたくないんだ。ひとは裏切る生き物だからね」
カメラを持ちながら苦笑する瑛太の眸はいつもより悲しそうだった。もしかして、過去に何かあったのだろうか。
そういえば、前に愁一さんから聞いたアヤトさんの仕事を知らない。もしかして、探偵だったとか?
「……そろそろ、かな」
窓際に佇む瑛太は真剣なまなざしで反対側のビルの窓を見つめていた。うわ、無言で佇んでいるだけで絵になってめちゃくちゃ格好いい。──って、俺は何を考えているんだ!
「あと、スキャンダル探しを仕事にしてる奴よりも先に、美味しい情報って掴みたいでしょう。それをネタにして強請るの楽しいよ」
王子様スマイルでものすごく物騒なこと言わなかったかこの人。今強請るって……。
「廊下の監視カメラが仕事してくれるし、部屋の中には仕掛けられないけど使用後の写真は証拠になるからね」
受付システムは無人なのでいじることは出来ないが、空き部屋と相手が入りそうな部屋の使用後写真を撮影したり使用禁止にすることは経営者の瑛太であれば簡単に出来る。
ふと疑問が過る。最初っから自分の権力を使って片付けられるものであれば彼一人でよかったのではと。
「だったら、俺が同伴する必要って……」
「ばっかだなあ綾人。忘れてたかもしれないけどここ、ラブホだよ?」
「………………」
そうでした。見た目がビジネスホテルに変わっていたからすっかり忘れていました。
瑛太さんの運営しているホテルはビジネスホテル風に改装された元ラブホが多い。
「あちらさんがホテルから出てくる頃に俺宛に連絡が来るようになってるから、それまでは俺達も楽しもう?」
「え、瑛太さん今日は悪いことしないって……!?」
「うん。悪いことはしないと言ったけど、綾人とセックスしないなんて一言も言ってないよ?」
「な、な、な……」
悪びれる様子もなく言う眸に、俺は上手く言葉が出てこなかった。
開いた口が全く塞がらない。
じゃあこのお洒落なスーツは!? 朝のコーディネイトは!? 思わせぶりな発言は何だったんだよ!
不敵な笑みを浮かべてネクタイを緩める瑛太さんが怖い。やる気満々じゃないか!!
「あのぉ……俺、そういうつもりで来たわけじゃあ……」
「だって、綾人のきっちり着こなしたスーツ見てたら完全に欲情しちゃって。そのネクタイで縛ってスーツを乱したい」
スプリングの利いたベッドが二人分の体重を乗せてわずかに軋む音を立てる。長い指が器用に綾人の首にきっちり巻き付いたネクタイを外していく。
触れるだけのキスをしながら胸元のボタンを外される。
トワレの香りと色気のある瑛太さんの切れ長の眸に魅入られて抵抗らしい抵抗もできない。
「あっ……あっ!」
両手首をネクタイで縛られ、スーツは中途半端に乱されただけで下着の上から愛撫される。
「パンツがびちょびちょになっちゃうね」
「や、やだ……ぬ、脱がせて……くだ、さい」
「今日はハムちゃんもうさぎちゃんもないからなあ……それに、折角スーツ着たまま悶える綾人は珍しいし」
結局最後までスーツは脱がせてもらえず、下着の中は大惨事だった。
「綾人……今度は執事プレイしようか?」
ぐったりと果てた俺に腕枕をしたまま、王子様スマイルでそう言いのける瑛太は本気だ。
久住兄弟……本当に恐ろしい。
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