家政夫は大変です

蒼龍葵

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第一部 久住家にようこそ

歪んだ愛情に弄ばれて

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 夜勤明けから帰って来た渉さんが物凄い勢いで風呂場に連行されていたのを目撃してから30分後──。
 俺はキッチンで渉さんと家にいる匠真さんの昼食を作っていたが、携帯が鳴った。

「綾人、今すぐ俺の部屋に来い!」
「は、え、え?」

 と匠真さんから。比較的穏やかなあの人らしくない。一体何があったんだろう?

 ノックをして匠真さんの部屋の中を開けたらもう開いた口が塞がらなかった。カーテンレールにじゃらりと長い鎖がつけられており、その先には両手首を手錠で縛られた渉さんの姿がある。
 しかもベッドの上には固い板と、その上には以前俺も瑛太さんにひどい目にあわされたアレが……

「ちょ、ちょっと匠真さん何してるんですかっ!!」
「……これはお仕置きなんだよ、なあ渉」

 冷たい眸で渉を見下ろす匠真の表情にぞっとした。まるで、今にも人を殺しかねないような目だ。
 渉は目隠しはされていない状態で何度も何度も匠真にごめんなさい、赦してと謝っていた。こんな弱った渉さんも初めてみる。

「一体何があったんです? これはちょっと……」
「渉が、精神科の患者にレイプされた」

 渉が勤めている病棟の個室に入院しているごく平凡の患者だったらしい。
 女性スタッフでは男相手には力負けしてしまうので、いつも男性スタッフが対応しており、今日は渉がその部屋の受け持ちとなっていた。
 昨日の夜勤は渉しか男性スタッフが居なかったので受け持ちをしていたわけだが、運の悪いことに同室者まで症状を出してまんまとハメられたらしい。
 訴えるのは簡単なのだが、渉自身この恥ずかしいことが外に露見するのは嫌だと誰にも何も告げずに仕事を終えて帰って来た。
 そしてその現状を知り逆上した匠真にこのような仕打ちを受けている──というわけだ。

「……で、でも渉さんが悪いわけじゃ」
「そう。渉は全く悪くない……けどな、そんな危ない奴だってわかってたのに何も準備しないで、あっさりほだされた渉が赦せないんだ」

 この明らかに狂ったSMプレイのような状態を止めることは出来ないし、だったら一体何のために俺は呼ばれたんだろう?
 嫌な予感しかしないが、恐る恐る匠真に近づく。

「綾人、全部脱いでこっちにおいで」
「え、あ……はい」

 今匠真を刺激したらめちゃくちゃ怖そうなので、言われるがまま衣服を脱いでベッドに乗る。
 離れた場所にちょこんと座っていると、遠いと叱られ、匠真の強い腕に引き寄せられた。

「渉、お前はお預けだ。玩具とそのまま遊んでろ」
「や……やだ、匠真ぁ……!」

 え。とフリーズしている間にぐいっと顎を掴まれ、匠真にキスされる。触れるようなキスの後、唇を啄まれて舌先がするりと口の中に入ってきた。

「ふぁ……た、くまさ……」

 声を出さないようにしたつもりが、逆に甘ったるい声が溢れた。
 綾人と匠真の情交を見せつけられた渉はすすり泣くような声でごめん、匠真と小さく呟いていた。
 ある意味、こんな恥ずかしい所を見せる俺の立場も理解して欲しい!
 この二人は昔からお互い散々えっちしまくってるから別にいいんだろうけど、俺にとって公開処刑状態だっての!

 でも、匠真さんの手慣れたキスは本当に気持ちよくて頭の芯がすぐにとろとろになってしまった。漸く離された唇からはつぅっと唾液の線が伝う。

「綾人、こっちもその気になってる」
「え、あ、あ!」

 我に返ると匠真は胸の突起に齧り付いてきた。

「いっ……!」

 痛みの後、すぐさまぺろぺろと舐められて背中に甘い電流が流れる。
 
「あっ、ああぁ……」

 震える手は匠真の肩口を掴み、何とか呼吸を整えようと肩で喘ぐ。その間も右手で扱かれた先端からじわりと先走りの液が染み出てきた。

「んんっ……」
「渉、しっかり見るんだよ?」

 四つん這いにされた俺は匠真さんに蕾を刺激されていた。同時に前の方もゆるゆると断続的に愛撫される。

「ひぁっ!」
「ははっ……綾人もいつもより感じてる……? もしかして、渉に見られて興奮するのかな……」
「ち、ちが…」

 確かに性行為を他人に見られることなんて今まで無かったけど、それで感じるなんてドMみたいなこと絶対ないと信じたい。
 一方の渉は二人の情交を唇を噛みしめたまま見ていた。
 大好きな匠真が違う男とセックスしている。それは彼にとって拷問に等しい。

「あ、あぁ……匠真さ……ん」
「もうダメ?」

 綾人の中で暴れる匠真の熱も普段より猛っていた。
 それは渉をレイプした患者に対してなのか、彼をお仕置きという行為でしか愛情表現できない自分自身に対してか。
 屈折した兄弟愛は綾人には理解できない。ここまでしなくてもこの二人にはもっと自然な方法があるはずなのに。
 
「た、たくま、さん……」

 激しく突き上げられ、互いに達した瞬間、俺は渉さんを赦してと囁いた。

「綾人……」
「もう、わかってるはずですよ。匠真さん……渉さんを赦してください。そして三人でご飯を食べましょう?」
「お前って……」

 冷たい獣のような眸をしていた匠真が俺の言葉でふわりと優しい笑顔に変わった。
 だが、今更この状況下で渉を赦しても、既に時遅く、匠真が得意のピッキングで渉の手首を自由にした瞬間、先ほどまで悔しがって泣いていた天使が俺にのしかかって来た。

「あ、渉さん……?」
「綾人すごく優しいんだね……僕、興奮しちゃったよ……ねぇ、僕ともして? 綾人の中、久しぶりに感じたい」

 天使が妖艶な眸でこちらを見下ろしてくる。するりと頬を撫でる手は冷たくて気持ちいいけど、そういう問題じゃない。
 背筋を冷や汗が伝い落ちる。後ろにいる匠真もクツクツと愉しそうに笑っており止めてくれそうもない。

「いや、だから、それは……」

 そういう痴話喧嘩だったら二人でやってくれ!!!!
 俺の叫びは誰にも通じることもなく、その後二人に交互に嬲られて意識をぶっ飛ばしてしまい、次に気がついた時は渉に甲斐甲斐しく介抱されていた。

 でも、まあ……この二人が幸せならそれでいいのかな?
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