家政夫は大変です

蒼龍葵

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第一部 久住家にようこそ

変態さんのお部屋は危険がいっぱい

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 俺は究極の選択を迫られていた。
 壁ドンならぬ床ドン状態のシチュエーションで、渉さんが俺の躰をフローリングの上に押し倒している。

「綾人ぉ……ね? お願い」
「い、いやです……それは、渉さんが自分で……」
「だって僕が行ったら絶対虐められるし、そうなったら後の匠真が怖いんだもん」

 渉さんに下手に手を出すと匠真さんのお仕置きが怖い。それは前回の件で身をもって体験した。
 なので、夜勤明けの渉さんと、仕事が煮詰まっている匠真さんには近づかないようにします。はい、これ久住家教訓……!

 渉さんが俺に強請っているのは、最近瑛太さんが作った新しい玩具で、ハムスターの小型ローターだった。
 遠距離操作が出来て、小回りが利くからそれで匠真さんをいじめてみたいと思ったらしい。
 多分、匠真さんのことだから、きっとそんな渉さんの企みなんてすぐバレるだろうし、逆にやられちゃいそうだけど。
 俺もあのハムスターには初対面で散々泣かされたので、出来るなら話題に触れたくない。
 でもここまでお願いをしてくる渉さんは本気だ。そこまで使いたいんだったら俺と一緒に瑛太さんにお願いしすりゃいいのに。

「わかりました。でも、借りれるかわかりませんよ……?」
「やった。綾人大好き!」

 頬にちゅっとキスをして去っていく天使は頑張ってねと心もとないエールを送ると自分の部屋へ戻った。
 残された俺はただ項垂れるだけだ。先が思いやられる……。

 今日の瑛太さんのスケジュールは確か午前中ホテルの視察と午後からは接待が入っているから、少なくとも夜までは帰ってこない。
 いくら部屋の掃除を理由に……とは言え、家政夫ごときが主の不在時に勝手に人の部屋に入るのは落ち着かない。
 まして、渉さんのお願いを叶えるには、瑛太さんが隠している玩具グッズの場所を漁らないといけないのだ。
 大体、いつも彼がどこから玩具を取り出しているのか知らない。
 仕事用のテーブルや綺麗に整えられているベッドを見てもそれらしき物は見当たらなかった。
 先日、スーツを見立ててくれた時に開いたクローゼットにも確か無かったはずだ。
まさか、持ち歩いている……? 

「……っかしいなあ。後調べてない場所はベッドの下か。でもこの作りってどうなってるんだろ」

 車輪がないキングサイズのベッドはとても一人では動かせない。
 周囲をうろうろしていると小さなボタンが視界に入ったので、もしかして、と思い勇気をもって押してみる。するとベッドの後ろの壁がゴゴゴ、と動き、AVショップさながらの巨大空間をだした。

「これが……って、ここから探すのか……?」

 恐る恐るその異様空間の中に入り、引き出しの中やぶら下がっているチェーンの間からハムスターを探すものの、なかなか見つからない。
 やっぱりお手製のアイテムは持ち歩いているのか、企業秘密でどこかにしまっているのだろう。
 収穫無し、勝手に入ってごめんなさいと謝りながらその空間から出た瞬間、何かに足を掴まれた。

「えぇっ!?」

 まさか侵入者撃退システムでもあるのかよ! って、まあこれだけの部屋だしありえなくはないけど……。いくら身じろいでもその掴んできたものが離れない。
 これは瑛太さんが戻ってくるまであきらめるか……と思い、ぼんやりしていると部屋の入口で笑っている瑛太の姿が見えた。

「綾人、俺がそんなに欲しくてここに来たんだね」
「え、え、瑛太さんっ!? 今日は接待じゃあ……」

 やば、余計なこと言った。
 慌てて口を塞いだが遅かった。勿論俺が部屋を漁っていることに気づいた瑛太の表情が一気に険しくなる。

「ふーん……俺が居ない間に悪いコトしようとしてたんだ」
「ち、ちが……」
「ナニ探してたのかなぁ、綾人は?」

 これはヤバイ。完全にスイッチの入った獣だ。

「あ、渉さんが、その……」
「渉が何?」
「えっと……」

 匠真には見つからないようにしたいと懇願していた渉さんの企みを暴露するわけにいかない。

「あっ……」

 俺は両手両足に黒いチェーンのついた手錠をかけられ、ベッドの上に転がされた。

「じゃ、今日はお仕置きタイムだ」

 瑛太が細い革鞭を手に持っている。やばいって……このドS兄さんの本気になったら──。
 ビシッと渇いた音と共に革鞭で叩かれた。チノパン越しだっつーのに何て破壊力だよ。ぶたれた尻がじんじん痛んだ。

「ってぇ……」
「あ、そっか。綾人は奴隷じゃないから悦ぶわけないか……ごめんごめん」
「瑛太さん……実は、ちょっと頼まれてあのハムスターを探してたんです」

 こうなってた以上、瑛太さんにドS本気モードになられる前に正直に話した方がいいかと思い、大人しく部屋に侵入した目的を白状する。

「なんだ、そんなこと?」
「へ?」

 ごそごそと腰ポケットから小さなハムスターを3匹取り出す。

「綾人、これ気に入ってくれてたんだ。実は今日改良するのに会合に持って行ってたんだよ」
「改良、ですか……」
「そ、前は一定の距離しか進まなかったけど、今度は直進だけじゃなくてこの小さな頭を動かして左右の際どい中も蹂躙してくれるすごい子になりそうで」
「……」

 瑛太が作った小型ハムスターは3cm程度の超小型ながら見つからずに相手を蹂躙出来るかなり危険なものだ。
 見た目から可愛いハムスターのつぶらな瞳が憎らしい。

「この改良版の実験台も綾人がやってくれるんだね。ホント、いい子だね」
「ん、んっ!」

 優しいキスをされ、下半身だけ全部脱がされた俺は一瞬油断していた。
 ローションを垂らされてトロトロになったハムスターが綾人の蕾の中にカタカタと入ってきたのだ。

「え、え、これって……」
「そう、平面だけじゃなくて坂道も登れるように改良したから、綾人が膝立ちしてても入るよ」
「これ……抜けるんですよね……?」

 少しずつ中を蹂躙する異物の感触に内臓が押し上げられて気持ち悪くなってきた。

「え、瑛太さん……なんか、気持ち悪い……」
「うーん…やっぱムードが悪いとダメだよね」
「ん、んんっ……」

 王子様スマイルを浮かべた瑛太は綾人の半身を扱き、甘く優しいキスを仕掛けてきた。後ろに神経が集中しないようキスが多い。
 何度も角度を変えて吐息を奪い、舌を互いに絡められたと同時に中のハムスターが暴れた。

「んんっう!!」

 後ろの刺激と前を扱かれ、いつもより濃厚なキスの連続で頭がおかしくなりそうだった。

「綾人……新型ハムちゃんはどう?」
「あ、あぁ……わか、んな……い」
「もう、ちょっとくらい貢献してくれないとデータ取れないでしょ? じゃあ明日もまたしようね」
「え、も……むり……」


 無理と言ったのにそれから30分程ハムスター2号機に蹂躙され、散々玩具でイかされてしまった。
 まだデータが欲しいという瑛太の体力には付き合いきれずその日は解放されたが、もう二度とこの部屋に一人で来ないことを再度心に誓う綾人であった。
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