家政夫は大変です

蒼龍葵

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第一部 久住家にようこそ

天使とハプニング

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「ねぇねぇ綾人。僕行きたいトコあるんだけどいいかなあ?」

 天使のお願いは大体嫌な予感しかない。一応どこですか? と聞いてみると匠真には内緒で、とこっそり耳打ちしてきた。

「はぁ!? ハプバーんぐううぐ……」
「わぁーッ! 声が大きいって綾人。内緒にしたいんだよ……」

 慌てた渉に口を押えられ、くぐもった呻きだけが零れる。
 とは言え、見た目天使な渉があんなトコに入ったら一瞬でヤられちゃうんじゃないか。
 それを守るのも家政夫の仕事かなあ。でも名前しか聞いたことないし、好奇心はある。
ハプバーとは”ハプニングバー”とのことで、様々な性癖を持つ男女が入り乱れている場所だ。
 他人に見られながらセックスしたい人、それを見たい人、またはどちらでもなくただ会話を楽しむ人など多種多様だ。

「綾人も、一回だけ行ってみようよ。なんか、先輩がこないだ彼女と初めて行ってみたらすごい興奮しちゃったらしくって」
「興奮するんでしたら匠真さんと行くといいんじゃないですか?」
「綾人、そんなこと言ったら匠真に殺されちゃうよ。渉の躰を他人に見せるなんて絶対ダメだって言うくらいなんだし」

 そりゃわかる。確かにこの可愛い天使は独り占めしたい。

「ねえ、綾人ぉ。行こうよ」
「うーん……匠真さんて、今日外に仕事行ってますよね? 見つからないようにでしたら今しかないような」
「やった。だから綾人のこと、大好きだよ」

 喜んだ天使は俺の頬にちゅっと触れるだけのキスを落とし、善は急げとそのまま腕を強く引っ張って外へ飛び出した。



 夜の街新宿。渉曰く、夜中の方が本当は人の出入りが少なくてチャンスとのことらしいが、夜中に家に帰ることの方が兄弟たちにあとから何を言われて何をされるかわからないので、人の多い時間だが勇気を持ってドアをくぐる。
 入った瞬間から異世界かと思いきや、意外と綺麗に整ったエントランスホールに、一風ただの広い部屋の多いバーにしか見えなかった。
 入口の受付がいらっしゃいませと声をかけてきたが、姿も普通のウェイター服だ。

「見た感じ普通だよね」
「奥がディープなんでしょうか……」

 二人とも初心者なので思わずきょろきょろしてしまったが、奥は暗くなっておりどういう状態なのかよくわからない。
 一応渉とカップルということにして会員証を作ってもらう。作るのはいいんだけど、これ見つからないようにしないとヤバイよなあ。捨てるわけにもいかないし。

「あはっ。綾人えっち。期待しちゃう?」
「渉さん……そんなこと言うなら帰りましょう……」

 はぁとため息をついて踵を返すと渉がごめんごめんと必死に引き留めてきた。そこまでして入りたいなんて、確かに興味はそそられる。
 まして、こういう機会が無ければ入ることすらできないのだから。

 ウェイター服の男に一通り中の様子や行動について説明された。
 セックスするならハプニングルームへ、ただ飲むだけだったらカウンター、人の行為を見たいのであればマジックミラー越しから見れる部屋もあるらしい。
 聞いているだけでドキドキしてしまう。

「前に綾人、僕と匠真のえっち覗いてたでしょう?」
「あ、あれは渉さんがデカイ声を出してたから眠れなくて……その……気になったら匠真さんに無理やり部屋に入れられたっつーか……」
「うん。あれねすごく興奮したぁ……僕、見られるの嫌いじゃないかも?」

 天使の顔で陶酔しないで欲しい。渉さんは本当に可愛い天使なのに、その小さな唇から零れるのは卑猥な言葉だ。
 見た目と中身のギャップが激しすぎる。だからこそ匠真さんも夢中になっているのかも知れないけど。
 結局渉に手を引かれてまずは噂のハプニングルームという場所を外から見させてもらうことにした。
 中では既に数名の男女が入り乱れている。しかも他人の行為など気にも留める様子もなく、獣のように互いを貪り合っていた。
 こ、これはディープ過ぎるだろう渉さん!!
 天使には新鮮な刺激だったのか、目を輝かせながら、他人のセックスを食い入るように見つめている。これを匠真さんが知ったら怖い……!

「あ、渉さん……あまり人の……その~」
「え? だって見せたくてヤってんだよあの人達。そういうのはしっかり見てあげなくっちゃ!」

 カクテルを飲みながら楽しそうにしている渉の姿をみれただけでもまぁいいかと自分もカクテルを飲む。

「ねーえ、綾人……僕らも部屋入ろ?」
「えぇっ。それはダメじゃないですか……だってみられるんですよ渉さん……そんなのもし匠真さんにバレたら俺ら殺されますって」

 それは、誘いをかけた渉も、のこのこついていった自分も同罪だ。
 既に興奮していた渉はあいている部屋ある? と店員に声をかけている。これはもう俺達匠真さんに殺されるの確定フラグじゃないか……。

 連れて来られた部屋は薄暗い感じだが、他人の気配も感じる。せめて、乱交にならないように渉だけは守らないといけない。

「渉さん、ソファーに座ってなるべく顔を人に見られないように……」
「綾人、優しいなあ。僕が勝手にしたいだけなのに」

 小悪魔になった天使は白いシャツからほんのり桜色に染まった肌をちらりと見せていた。
 自分のズボンを下げ、ソファーに座る俺の太ももに座りこんだ。

「あ、渉さん……?!」
「此処に入ったらしなきゃいけないって。さっき店員さんに言われたでしょう? 綾人の苺、食べたい」
「──ッふ、んん」

 胸の突起をぺろぺろ舐めた後、渉さんは俺の目の前に膝立ちして頭を持ち上げた半身を口に含んだ。

「おいひい……」
「あ、渉さ……だめだって」

 ぴちゃぴちゃと厭らしい水音を立てながら何度も幹をしごかれ、部屋の異様な空気や何処からか見られている視線が気になっていつもより早く感じてしまう。

「綾人──もっと、感じて」
「くっ……」

 息が上がるのが早い様子を悟った渉は嬉しそうに先端の孔を強く啜った。先走りのぬめりまで天使に搾り取られる。

「あ、ゆむさん……ダメですって」
「綾人、気持ちいい?僕……綾人が気持ちいいと嬉しいんだ」

 しゃぶっている渉の方も熱が上がっていた。ズボンに阻まれている半身が少し窮屈そうに見える。
 目の前の天使の肩を掴み、固いソファーの上に寝かせる。そして渉と自分の立ち上がった雄を片手で同時にしごいた。

「ああっ……綾人ぉ……気持ちイイ」

 だーかーらー、可愛い顔でそんなエロイ声出して喘いだらやばいでしょ!
 先ほどよりも視線の数が増えたような気がする。も、もしかして、行為も声もだだもれってやつ?

「綾人……挿れて……早く……」
「もう……渉さん、後で一緒に匠真さんに怒られてくださいよ……」
「うん。一緒に怒られようね? 大好きだよ綾人」

 赤い舌をぺろりと出しながらキスを強請る小悪魔の誘いを断ることも出来ず、俺は2回もイってしまった。


 匠真は二人の姿が無いことを不安に感じて何度も携帯に電話をしていたらしい。
 電源を入れた際に表示された着信履歴を見て顔色をなくした。

 帰宅直後、事情を知り怒りまくった匠真に、部屋でハプバー状態の扱いをさせられた。とんだとばっちりだ!

 わざわざお店まで行かなくても、久住家の兄弟達は愁一さん以外全員ハプニングじゃないかと帰ってから漸く学んだ綾人なのであった。
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