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第二部 ライバル登場?
優しい雇い主とのひと時
しおりを挟む最近、愁一さんのお手伝いをさせてもらえることが増えたので、俺はT商事の重要社員用エレベーターを使う機会が増えた。
しかし、俺みたいな一般の人間が、愁一さんに関わることを快く思わない人間は多い。周りはみんな敵みたいなものだ。
俺が久住家の家政夫であるということを皆が知っていても、愁一さんの側で働かせていただけるポジションは、周りの女達からしてみたら喉から手が出る程羨ましい場所だ。
嫉妬に狂った女の狂気の視線が非常に怖い……今日も出来るだけ一目を避けながらエレベーターのカードキーを当てた。
俺が乗ったと同時にもう二人の男が乗ってきた。
こんな人、T商事にいたっけ? と思うくらい派手な風貌にガラの悪いサングラスまでかけている。
見た目で判断してはいけないよな。
男達が先に出ていってくれるのを待っていたが、彼らは狭いエレベーター内で少しずつ俺の方ににじりよってきた。
え、え…まさか、この人達って、俺を殺しにきた危ない手の人達?!
そんな、今攻撃されても何もないんですけどっ……。
「篠原綾人だな」
低い声でそう囁かれ、俺は鳩尾に強烈な一撃を食らってそのまま一瞬で意識を失った。
◇
気が付いた時はスーツをぼろぼろに引き裂かれ、両手は拘束されたまま天井につるされていた。
身じろぎすると手首の鎖が手に食い込んで激痛が走る。下半身は何も身に着けていない状態で、しかも足は宙に浮いていた。
こ、この状態はやばい。
まず足が地面についていないことが不安。おまけに、この手首の拘束してる鎖がもし地面に落ちたら……
「こ、この……ちょっと、誰かっ!!」
「動くな。愁一さんに張り付くドブ鼠め…」
尻に冷たい何かが押し当てられた。それは玩具ではなく、小さなハンドガンが当てられていた。
どうみたってレプリカじゃないだろそれ……!
日本では銃刀法違反ってのがあるんだよ!
大体、どうして知らない奴にさらわれて、ケツにそんな危ないもんぶっこまれないといけないんだよっ!
愁一さんの気を引きたいんだったら本人にアプローチしてくれよ。俺は出来れば平穏に過ごしたい一般人なんですけど。
「ドブ鼠め、お前どうやって愁一さんにとりついた? 金か? その躰か? 汚い男娼め」
「ひっ……う」
ずぶりと銃口が蕾をぐりぐりと捩じるように侵入してくる。痛みと恐怖とで躰がおかしくなりそうだった。
「うぁ……あぁっ!!」
「こんな無機質なもので感じてるのか? 厭らしい男娼だな。ほら、もっと咥えろ。ドブ鼠め」
痛い、苦しい、気持ち悪い……。
約束の時間なんてとうに過ぎているから、きっと秘書の滝川さんにあとで怒られる。
それに、連絡も出来ないなんて、絶対愁一さんを心配させる……。眸からは生理的な涙が伝い落ちた。こんな格好で、俺はこんな知らない奴らに嬲られて死ぬのか。
人生28年。短かったなあ……もっとやりたいこといっぱいあったのに。
「く……あああぁあっ!!」
ハンドガンの先端部分が全て蕾を切り開いて奥まで入り込んだところで、暗闇の部屋に明かりがついた。
ドアが勢いよく開けられ、俺の躰の横を銃弾が飛ぶ。
何? 何の撮影なのこれっ!
だから、日本でそんなドンパチやるなんておかしいだろ! 警察の人しか持っちゃいけないんだろそういう危ないもんは!!
流れ弾でも食らって死んだとしても、こんな情けない姿で死体確認なんてされたくないっ!
そう思っている矢先に一番会いたい人が視界に入り思わずその名前を叫びそうになってしまった。
「綾人っ!」
愁一さんと秘書の滝川さん、他にSP部隊が数名監禁部屋に乱入してきた。
俺のケツに銃をぶっこんでたやつはあっさりと拘束され、銃刀法違反プラス監禁・強姦罪にて掴まった。近づいて来た愁一さんの姿を確認して思わず涙が止まらなかった。
切り裂かれたスーツは殆ど肌を覆っておらず、恐怖のあまり下半身はガクガク震えている。
手首の拘束を外されて漸く地面に足がついたものの、力を全て失っていた俺はそのまま愁一さんの胸の中になだれ込んだ。
一体どうしてこんな襲われたのかさっぱりわからない。
多分、嫉妬に狂った奴らに俺の存在そのものが恨まれているだけ。俺が愁一さんの側にいることで迷惑になるのであればもうここに来ない方がいいのかも知れない。
「あ……」
恐怖で気絶していた俺の躰はキングサイズのベッドに寝かされており、額には冷たいタオルが乗せられていた。
ここは久住家の愁一さんの部屋だ。忙しいのに俺が会社だと落ち着かないからここまで連れてきてくれたのだろう。
愁一さんは珍しく部屋で仕事を続けていたが、俺が目覚めたことでピタリと手を中断させて俺の横に座った。
「綾人、気が付いたか」
「すいません愁一さん……迷惑ばかりかけて……」
「酷いことをされたようだな。あいつらはライバルD社の子飼い連中だ。全く、大した実績も出せないからってお前に手を出すなど……潰してやる」
俺の髪を優しく撫でながら愁一さんは眉ひとつ動かすことなく、物騒なことを言っていた。
「愁一さん……なんか、変になりそう……」
一度銃で蕾の奥まで蹂躙されたせいで、お尻がずっとむずむずしていた。頭を動かすと吐き気が襲う。
そんな俺の変化に、愁一さんが少しだけ眉間に皺を寄せて顎を掴んできた。
「愁一、さん……? んっ」
触れるだけのキスは少しだけ煙草の味がした。唇が触れる距離で愁一さんが身を任せろと囁く。
その甘い声にゾクリと背中が粟立つのを感じたが、感じている間に愁一さんの舌が口の中を蹂躙していく。
空いた両手は乳首と半ば立ち上がりかけている俺の雄を撫でてきた。
「ふ、ぁ……んん」
与えられる甘いキスに蕩けていると愁一さんが引き出しから透明なローションを取り出して指に垂らす。冷たいそれが下腹部にとろりと落ちて、次に臍の辺りに垂らされたローションを胸元までのばされた。
乳首までぬるぬるした刺激がくると下腹部がヒクつく。
「まだ触っていないのに元気だな」
「ふ、あっ!?」
くくっと笑われて自分の躰の反応の浅ましさに一気に躰が熱くなった。足を閉じようにも愁一さんの躰が間に捻じ込まれており、開かれた足を閉じることすらできない。
左足だけ高く掲げられ、背後の蕾には指を入れられ、前はゆるゆるとしごかれる。
「あっ、あっ……ああ!」
銃で傷つけられた内部はとんでもなく痛んだが、優しい愁一さんのキスと指で違う感覚に置き換えられる。
「可哀想に、あんなものを入れられるとは……D社は必ず潰してやるから待ってろ」
中がまだ傷だらけだったせいで、痛みが酷く結局愁一さんを受け入れることは出来なかったけれど、労わるような優しい愛撫に全身トロトロにさせられ、いつも以上に感じてしまっていた。
生きるか死ぬかの恐怖を味わったのに、好きな人に抱かれると、そんなことはどうでも良くなってしまうものなのだと改めて実感した綾人なのであった。
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