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第二部 ライバル登場?
変態さんとチョコレート
しおりを挟む瑛太さんの経営しているホテルが波に乗り、新しい別館ホテルの完成記念パーティが開かれることになった。
「綾人が行かないなら行かない」
「あの……社長が行かないとダメじゃないですか?」
前回は女装させられて、ケツにローターぶち込まれて散々恥ずかしい目に遭わされた苦い過去が脳裏を過る。
瑛太さんが、無傷の状態で俺をパーティに連れて行ってくれるなんて考えられない。
「──こないだみたいなのは嫌です」
「うん、大丈夫。今日はお揃いのスーツで行こうね?」
ちくしょう。この人はやっぱり色気が強過ぎる……!
王子様スマイルとウインクにやられた俺は瑛太さんにスーツを見立ててもらった。
「綾人、ネクタイ太い」
「あ……すいません……」
「もう、綾人は外勤やってた割にネクタイ絞めるのが下手だねえ。──俺に縛られたいのかなあ?」
しゅるしゅるとネクタイを外され、最後の仕上げで締め上げる瞬間に瑛太さんの顔が物凄く近くて不穏な空気を感じてしまった。
縛るって意味違うしっ。
大体朝っぱらからこの人何考えてるんだっ!
「そ、そんなことありませんっ! ほら、パーティ遅刻しますよ行きましょう」
「はああ……気が重いなあ……あ。そうそう。綾人。あーんして」
「は……?」
瑛太さんの手には小さなチョコレート。まあ、カカオ70%以上のものを摂取した方がいいとか何とか? でもなんでこのタイミング。
「早く、溶けちゃう。あーんして?」
「あ……」
強制的に開けられた口に小粒のチョコが3個程突っ込まれる。てっきり苦いやつかと思っていたのに、口の中でふわっと甘い香りが広がっていた。これは70%では無さそうだ。
あまり甘いものは好きじゃないけど、別に変なものじゃなくて少しだけ安心する。
そうだよ……いつもいつも瑛太さんが変態だって思ったら失礼だ。いい加減、瑛太さんもまっとうな仕事をしてる人間だって思い直さないと。
「すいません、俺瑛太さんをちょっとだけ見直しました」
「今更なんてひっどいなぁ……まぁいいや。さ、行こう」
そう、瑛太さんが今日に限って何もしてこない。
これが恐ろしいことの始まりだなんてこの時の俺は気づくはずもなかった。
◇
祝賀パーティは滞りなく行われていたが、俺はその大広間の中で異様な躰の熱さに襲われていた。てっきりフロアの人間が多いせいなのかと思い、襟首に手を入れて少しだけ風を入れてみるが全く変わらない。
公共の場でジャケットを脱いで歩いたら付き添いのくせに服装がだらしない、と思われるのも瑛太さんに申し訳ないのでそれも出来ない。
額からじめっとした汗が伝い、シャツの間を伝い落ちて気持ち悪くなってきた。
うろうろしているとバルコニーが視界に入ったので、ちょっと風に当たりたいのでとガードマンに声をかけて外に出ることに成功した。
「涼しいには涼しいんだけど……」
冷たい風を浴びても全く躰の熱が収まることが無く、むしろ悪化していた。衣擦れの感覚がゾクリと背筋を粟立たせて全身の神経が敏感になっている。
何もしていないのに下半身が疼いた熱を帯びており、スーツを押し上げるのではないかと不安になってきた。
な、何でこんな……
酷く浅ましい自分の体調の変化に、俺は戸惑いながらもうこれ以上ここに居られないと悟った。
瑛太さんの姿を探して先に屋敷に帰らせて欲しい旨を伝えようとするが、大広間にその姿がない。
仕方がないので重鎮に瑛太さんの居場所を尋ねた。
「久住様は40階のスイートルームでお休みになられています」
「いつの間に……瑛太さんに用事があるので、俺もそちらに行って構いませんか?」
「どうぞ。キーは開けておりますので」
キーは開けている?
まるで俺がそこに向かうのを分かっているかのような言い方に違和感を感じたものの、この病気のような躰の熱をどうにかして欲しくて俺はエレベーターに乗り込んだ。
「ここ…って1部屋だけなのかな」
40階は1フロア全て1部屋としている作りのようで、他にドアは見当たらなかった。
一体ビジネスホテルでこんな大きな部屋って誰が使うんだよと心の裡で呟くが、需要があるからこそそういう一向変わった部屋も作られるのだろう。
コンコンとノックをしても中から返事はない。まさか騙されたのかと思いながら恐る恐るドアを開ける。
「瑛太さん?」
ちらりと部屋の中を覗くと、キングサイズのベッドにスーツ姿の瑛太さんが気持ちよさそうに眠っている姿が見えた。
人当たりはいいのに、趣味のAV関連の仕事以外は極力表舞台に出てくることが少ない。こうしてたまに公に出てくるとその甘いマスクと社交性の高さでメディアや方々からインタビュー攻めにあってしまう。
少し疲れたようなその顔を見ていると、先に帰らせてくださいなんて言えなかった。
ベッドにぎしりと座り、瑛太さんの頬をするりと撫でる。
「お疲れのようですね、瑛太さん……」
「疲れているけど、綾人を愛してあげる体力は残してあるよ?」
「えっ!? お、起きてたんですか……!?」
うわ、めちゃ恥ずかしい。しかも頬を触っていた俺の手を瑛太さんがしっかり握っている。
「ん、綾人の手、好きだなあ」
「っ……ん」
「どうしたの? 綾人……なんか、いつもより敏感じゃなーい?」
「き、気のせいです……ちょっと今日は、躰が熱くて……か、風邪かなあ、っはは」
苦笑しながら瑛太さんに手を離してもらいたかったのに、震える躰の変化を一瞬で悟った瑛太さんは手を引っ張り、俺の躰をでかいベッドに組み敷いた。
「まだ触ってないのに、綾人のココ……どうなってるのかなあ」
「い、や……何で……」
ちょっと指先を舐められただけなのに、浅ましい躰は仰向けにされた瞬間、下半身の明らかな反応をまざまざと見せつけていた。
スーツのズボンの中で苦しそうにしている部分を瑛太さんの唇が布越しからわざと音を立ててキスをしていく。
「ひ、ぁっ!?」
「熱いなあ……もう、多分これ下げたらトロトロになってそう」
「だめ……だめなんです……なんか、俺……変、で…っ」
唇で形を変えている半身を軽く食まれるとそれだけで吐精しそうになった。
溢れる声を押さえることもできないし、快楽に溺れている下半身はもう抵抗する力すらない。
「え、瑛太さ、ん……おかしくなる……っ!!」
「まさか、こんなに効果があるなんて思わなかったなぁ」
「ぇ……?」
涙目になっている俺の目尻を瑛太さんの唇が優しく拭っていく。
一瞬聞こえたごめんね? という優しい声と共にズボンと下着を一気に下げられ、露わになった部分は風を浴びてさらに熱を孕んでいた。
「綾人が朝食べたチョコは、媚薬が入ってるんだ。ちょっとお試しのつもりだったんだけど、3個はトリップしちゃうみたい」
「そ、そんな……」
自分のこの浅ましい反応の原因が分かったことは安心したが、朝っぱらからそんな危険なものを喰わされた俺は、電車移動間とかに醜態を曝したらどうするつもりだったんだろう?
「あ、ああ、ん……えい、たさ……」
与えられる快楽の波にあっさり溺れた俺はそこから先の記憶がない。
久住の屋敷に帰って来た時の俺は全く歩けなくなっており、ご機嫌の瑛太さんに横抱きにされて帰ってきたと後に渉さんから聞かされた。
もう、瑛太さんから食べ物を頂くのはやめよう。危険すぎる。
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