家政夫は大変です

蒼龍葵

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第二部 ライバル登場?

愛しの匠真様

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「綾人、お願いがあるんだけど」

 珍しく匠真さんが俺の部屋まで来て正座をしてきた。こんなに低姿勢な匠真さんなんて絶対におかしい。あれ、渉さんが居ないとか? 何か変なものでも食べたのかな?

「そんな、らしくないですよ。どうかしましたか?」
「明日一日、ちょっと行く場所があるんだけど、俺を下僕として扱ってくれ」
「はい?」

 ああ、やっぱり変な依頼だ。思わずこめかみを抑えてしまう。

「えっと……明日はT高校のウイルスチェックとプログラム更新でしたよね?」
「ああ。あそこの生徒に気に入られてしまって厄介なんだ。どうやら俺が男を食いまくると勘違いしているみたいで、お手伝いでついて来ているお前に頭が上がらない残念な奴を演じたら諦めてくれるかなって」
「それは……無理じゃないですかね」

 俺が匠真さんを下僕みたいに扱うなんて絶対に無理だ。すぐにボロが出て逆に高校生が興奮するかも知れないし。

「相手が女なんだ」
「じゃあ尚更変な方向に興奮するんじゃないですか!? 普通に行きましょうよ、普通に……」

 しかし一度匠真さんに惚れてしまったその女子高生はどうやって突き詰めたのか、匠真さんに散々ラブレターを送りつけ、ウィルスチェックのタイミングを見計らってうまく匠真のいるパソコン室に侵入していることもあったらしい。
 プログラムの改変中は誰も入れないようにと依頼していたのに女子高生の侵入。流石の匠真もこれにはキレた。情報漏洩の危険があるので学生は絶対に中に入れないよう伝えていたのに、これではお互いの信用問題に関わる。
 あまりにもストーカー行為が酷い為、学生から匠真への接触禁止令を敷くことになったらしい。

「はああ……俺が匠真さんより上の立ち位置なんて無理ですよ……」
「そんなことないよ。たまにはいいんじゃないかな?」



「匠真様が今日いらっしゃる……」

 頬を赤らめてパソコン室の近くを徘徊しているのは二年生の髙橋照子という学歴優秀のクラス委員長だった。

「はぁ、あの麗しいお姿を拝見するだけでも良いのですけど……やはりもう少しお声を聞きたいですわ」

 しかし彼女は接触禁止令を敷かれているのでそれも叶わない。逸る気持ちだけが溢れる。

「あっ、そろそろ匠真様がいらっしゃいますわ……」

 また見つかったら今度こそプログラム改変に来てくれなくなる可能性もある。それだけは何とか避けたいと思い、照子は妄想を抱いて三つ隣にある図書室に逃げ込んだ。

「とりあえずその子は居ないみたいですね」
「綾人さん」

 さん呼ばわりなんてちょっとむず痒い。そうだった、例の子がどこにいるか分からないから、俺は今日だけ匠真さんに対して強気でいかないとダメなんだっけ。

「た、匠真、早く仕事してくれよ」
「はい、早く帰って綾人さんに激しく抱かれたいですからね。こんなプログラムすぐに終わらせます」
「いい子だ。ご褒美は後でね」
「はぁ……んぅっ」

 軽く触っただけなのに匠真さん感じすぎだろっ!! てか、まだ仕事始めるところなのに出来あがったらまずい。

「こら、匠真。先に仕事」
「はい……そうします」

 何だろう。俺に従順な匠真さんが新鮮過ぎて可愛い!!
 こんな匠真さんは一生お目にかかれないだろう。

「ん?」

 廊下に落ちていたペンシルを拾い、俺は匠真さんにそれを渡した。

「──ああ、それ録音する機械」
「こ、こんなペン型のやつがあるんですか!?」
「ふぅん……綾人、それ持っててね」

 こそっと耳打ちされて俺はそのままペンを持ち今日の仕事場に入った。

「さてと、今日もプログラムが勝手に頑張ってくれるからいいとして……」
「あの、匠真さん……さっきこれが録音できるって?」
「そっ。そのペンシル型のやつよ、よく教授の講義とか録音したい時に使ってたなあ。ボールペンみたいでバレないだろう?」

 なるほど、最近の録音器具は優れている。しかし、これがすぐにただのボールペンではないって分かる匠真さんが凄い。

「俺が綾人に悪戯されているの録音してやろうか」
「ええっ!? 別に被害が無かったからしなくてもいいじゃないですか!」
「何言ってんだよ、俺は今日綾人に抱かれる為にちゃんとパンツも変えてきたんだから」

 ほら、とズボンを下げた匠真が履いているのは大事な部分だけを覆う面積しかないかなり際どいビキニパンツだった。

「何だよ、綾人もその気じゃん」
「だ、そ、それは、触られたらやっぱり……っあ」
「ダメだって、今日は綾人がやる番ね。はい、適当なタイミングで録音よろ」

 ぽんとボールペン型録音機を渡された俺は本気で焦った。そもそも、匠真さんを抱いたことなんてないし、後が怖い!
 それでも少し触るだけで頬を赤らめて思った以上に甘い声をあげる匠真さんが妙に愛おしくなり、俺は狂ったように自分の熱を彼の秘部へと穿った。

 結局、あまりにも匠真さんが可愛い声で喘ぐからとんでもない録音をしてしまったけど、これで匠真さんに纏わりつくストーカーのような女子高生が諦めてくれたらいいな。
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