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第二部 ライバル登場?
優しい雇い主とラブラブお風呂
しおりを挟む愁一さんは忙しい人で、とある事業の経営者であり、更に他の仕事も掛け持ちしている。
あの若さで分刻みのスケジュール。どこかの国の偉い人ばりにあちこち駆け回っているが、彼が疲れた顔を俺に向けることは少ない。
そんな愁一さんに一ヶ月ぶりくらいに「休暇」が取れるタイミングがあり、ゆっくり休むのかと思いきや、彼は欲しいものがあると言い俺をとある家具店へと連れて行った。
「愁一さん、何をお探しなんですか?」
「あぁ。実は仕事用に使用しているデスクと椅子を変えようと思ってな。今使っているものはアンティーク物で気に入っているからお前の部屋に運ぼうかと」
T商事の社長室にあるデスクと椅子は確かに数十年前に作られた一点ものだ。
それを愁一さんは自ら選んでずっと気に入って使用していたのだと言う。
最近になって忙しさの余り朽ちてきたのが気になるとのことで馴染みの家具店に行きたかったらしい。いや、朽ちてきたのは明らかに忙しいせいだけではないのだけど……
一点もののイギリス産やイタリア産の家具を見つめてふむ。と顎に手を当てながら真剣に悩む愁一さんの横顔を見るのが好きだった。
整った大人の男というイメージが強い。精巧な顔立ちに引き締まった躰。
今日は寒いのでイングランド産のロングコートに覆われているが、あの中には野性の獣のような肉体が収められている。
……って、何でこんな買い物に来て俺は愁一さんを変態みたいに分析しちゃってるんだろ。あぁ恥ずかしい。
「綾人、これどう思う」
「あ……い、いいんじゃないですか?」
俺に同意を求められても、家具の価値なんてさっぱりだ。まして、こんな高級なもの。俺みたいな一般人からしてみたら桁が二つ多いって。
結局一目ぼれした紋様のついたオーク素材のデスクを即決で購入していた。支払う桁が多いと思うんだけど、お金持ちはわからない。
しかもこんなアンティークものを仕事で使うという神経がまた変わっている。こういうものって大体家に飾っておくものじゃないのか。
ハードワークをするあの職場には向いていないような気もするのだが、結局またダメになったらそれを屋敷に運んでまた新しいアンティーク1点ものを探すのだろう。
「さて、帰るぞ綾人」
目標の品物を発見した愁一さんの行動は早い。流石に毎度分刻みで動いているだけあって行動に一切無駄がない。
俺は慌てて愁一さんの背中を追いかけながら待っていた黒いベンツの後部座席へと乗り込んだ。
「愁一さん、次はどちらに?」
「いや、屋敷へ戻ろうかと思う。久しぶりにお前とゆっくり過ごしたい」
「えっ……」
やはり今までのハードワークで疲れていたのか、愁一さんは珍しく俺の肩に頭をこつんと乗せてきた。
こんな弱った愁一さんは一度も見た事無い。一体どうしたのだろうか、と思いそっと肩を引き寄せると異常に熱いことに気付いた。
「……愁一さん、いつからお風邪を?」
「風邪だと? 私は病気ではない」
訝し気な顔で眉を寄せる愁一さんだが、この人が弱ってること事態激レアな光景なんだから絶対おかしい。
大体、病気じゃないって……そういう人に限って風邪ひいてるんだよ……この寒い季節、インフルエンザだって猛威を振るっている。
いくら愁一さんがケアを怠っていないとしても、大勢の人と関わっているのだからどこかから菌をもらってる可能性は大いにありえる。
「えぇっと……じゃあとりあえず屋敷に戻って医者を呼びましょう?」
「不要だ。風呂に入りたい」
「そ、そんな熱あるのに……」
「ならば、お前が洗ってくれ。とにかく風呂に入ってこの汗を流したい」
愁一さんの額から珍しく汗が伝っていた。その姿さえも色っぽく見えてしまうのだが、確かに汗ばんだまま着替えるよりもすべて綺麗にしてからの方が良いだろう。
黒塗りのベンツは状況を察していつもより早く屋敷に到着してくれた。
気だるい躰を引きずっている愁一さんを浴室へと連れていき、従者のように彼の着ている衣類を脱がせた。
「愁一さん、先にお風呂入っててください。俺、着替え持ってきます」
「……後ででいい……お前も入れ」
「えっ…?」
既に裸になっていた愁一さんとは対照的に、俺はまだ何も準備もしていないから服を着たままだった。
それなのに強制的に浴室に入れられ、躰を洗うように促される。
ぼうっとしている愁一さんはされるがままになっており、何だかとても可愛く見えてしまった。
「何、笑っている……」
「いいえ、愁一さんの少し弱った一面が見れてうれしいんです」
スポンジで泡を立ててゆるゆると全身洗っていくと、下半身に手が伸びた瞬間、愁一さんの躰がほんの少しだけ動いた。
「ここも、お世話させてください」
「お前はいつからそういう……」
半ば呆れるように溜息をつかれたが、まんざらでもない顔で愁一さんは俺の手を股間へ誘導していた。
スポンジではなく、手で直接泡立てて彼の雄をゆるゆるとしごく。泡まみれになったそれをわざといやらしい音を立てて擦るとさらに熱が膨れるのがわかる。
「……気持ちいいですか?」
「あぁ」
短い声でそう言い、愁一さんは俺の頭を引き寄せて熱いキスをしてきた。
絡み合う舌も熱のせいか異常に熱い……この密室のような浴室でこんな激しいキスなんかしたらお互いのぼせてしまう。
はぁっと息を吐いて唇を離した時には俺の下半身も熱を持っていた。だからってこんなところで風邪をひいている愁一さんを抱くわけにいかない。
急いで泡を落として愁一さんの躰を清めているとシャワーの向きが変わり、俺の躰に思い切りお湯を吹きかけて来た。
「わぷっ!?」
「――もう観念して脱いだらどうだ。我慢できないだろう?」
ど、どうせ脱がせるんだったらこんなお湯でべたべたの状態にしないで欲しかったと思う……
上着のシャツはぴっとりと素肌に張り付いており、恥ずかしい俺の張りつめた乳首を露わにしていた。おまけに今日に限って白いシャツだから余計に目立つ……
ジーパンを押し上げている浅ましい下半身の反応もお湯の刺激でさらに目立っており、出来れば脱ぎたいところだがこんなに重くなってはズボンも下げられない。
「しゅ、愁一さん……これじゃあ脱げないですよ」
「じゃあお前はそのまま感じていればいい……」
ズボンもシャツも下げられないまま、俺は布越しに愁一さんの熱い指先が這っていくのを感じる。
胸元をいじられるだけで、下半身の苦しい熱の疼きが酷くなっていく。唇から零れるのは熱い吐息だけ。
ジッパーだけが下げられ、するりと勃ちあがっている目的のものだけを取り出され、そこに指が這わされた瞬間、躰が小さく跳ねる。
逃げようにも、再び愁一さんに熱いディープキスを落とされ、頭を支えられてしまってはどうすることも出来ない。
与えられる優しい愛撫に身悶えながら、俺は簡単に絆されてしまった。
寒暖差のある風呂場で散々乱れた所為で、愁一さんも俺も思い切り風邪をひいてしまい、翌日はベッドの中で仲良く甘い一日を過ごしたのだった。
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