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氷崎 玲奈
気になったこと
しおりを挟む「それより、昨日のことをできるだけ詳しく教えてもらえませんか? 氷崎先輩の目から見て、何か気になったことがあれば何でもいいので」
陽向が必死に頼み込む。
「そうね。みんないつも通りだった気がするけど……」
氷崎先輩は数秒間黙り込んでから顔を上げた。
「そういえば、千秋くんがちょっと落ち込んでいたみたい。スタメン外れちゃったからかな?」
「琉星が?」
「うん。時々考え事しているみたいにボーッとしてたの。そんなに落ち込まなくても、陽向くんとのコンビネーションは使いたいって監督が言っていたからフル出場ではないけど試合には出られると思うよって言っておいたんだけど、聞こえていなかったみたいな反応で」
千秋琉星という名前にはどこかで聞き覚えがあった。
中学時代の古い記憶を掘り起こしてみる。
確か、いつかのバスケの大会で陽向が「あいつすごいよ」って誉めていた別の中学の選手だったような気がする。
かつてのライバル同士が、同じ高校に入ってチームメイトとしてプレイしていたとは知らなかった。
でも、さっき氷崎先輩は陽向が二年で唯一のスタメンになったと言っていた。ということは、陽向とのスタメン争いに千秋くんが敗れてしまったんだろう。ずっとライバルだった相手に水をあけられてしまったわけだ。落ち込んでしまうのも無理はないと思う。
「言われてみれば……今日の琉星なんか変だったかも。あんまり集中してなかったような」
陽向も真面目な顔つきで顎を撫でた。
「他には特に思い当たることはないわ。部活が終わった後はすぐに帰ったから、何も見てない」
「そうですか」
「あの……ちょっとお聞きしてもいいですか?」
ピリッとした空気を感じながら、私は言った。
千秋くんの話も気になったけど、それよりももっと気になることがある。
「先輩の教室のロッカーに、陽向のタオルが置いてあったような気がしたんですけど……あれは先輩のですか?」
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