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第13話 銀狐、熱に浮かされる 其の二

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 白霆はくていは先程の三角の紙を、晧の目の前に持ってくる。それは薬の入った薬包紙だった。紙には城下街にある有名な薬屋の印がされていた。
 主に魔妖や真竜を診る医生が営む薬屋だ。だがこの医生はかなり気難しく、変わり者で有名だった。診察や薬の提供に、金銭は一切要求しない。珍品を始め薬の代償となる物に興味を惹かれるか否か。惹かれなければ、診ることも薬も提供することもない徹底振りだ。
 そんな医生が弟子を取ったという噂は、愚者の森の奥にまで流れて聞こえていた。あんな奇傑を師と仰ぐ者は、それこそどんな変わり者かと思ったものだが。

 
(一件普通の優しそうな人間に見える。だがあの薬屋の下で働いているのなら)

 
 見た目で判断しない方がいいだろう。

 
「貴方が掛けられた薬、この独特の甘い匂いからして、いま繁華街で流行りの魔妖専用の、強力な媚薬だと考えられます。貴方はこの薬をどれほど掛けられたか、もしくは飲まされたか、覚えてらっしゃいますか?」

 
 そう聞かれて晧は先程の痴態を思い出し、羞恥のあまりに顔に朱を走らせた。

 
「……二、かい……かけられ、た」 
「ニ回、ですか。口の中には入りましたか?」
「す、こし……」

 
 白霆はくていが眉を顰める。

 
「──真実を申しますとこれは、性的に摂取する『魔妖の調教用』に作られた媚薬です。私は幾度かこの薬を使われ、医生の元へ逃げてきた者達を看ています。媚薬の特徴は身体の動きを制限され、小康状態と激化状態の波があることです。小康状態の時には今の貴方のように理性がありますが、一度激化状態に入りますと、本能のままに性欲を満たそうとします」

 
 晧がこくりと頷く。それはまさに先程経験したことだ。自分を捕らえたどこの者とも知れない男に、自分は縋るように滾った物を男の一物に擦り付けたのだ。

 
「そして再び小康状態となった時に、自分が激化状態であった時の記憶がしっかりと残るそうです。媚薬の効果は性的絶頂を迎えると少しずつ弱まります。ですから調教の際はこの媚薬を何度も利用し、まずは精神的に落として魔妖の矜持を折り、そして最後に今一度媚薬を使い、身体を快楽に落として傀儡にしていくそうです。貴方が使われたのはそんな媚薬です」
 
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