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第79話 銀狐、目合う 其のニ ※

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『……あの時も思いましたが貴方は悪い人ですね、こう。一度思い知った方がいい。私があの時も今も、どんな風に貴方を抱きたいと思っているのか』

 
 脳内に響く白霆はくていの声に、晧はくつくつと場にそぐわない笑い方した。

 
「……お前が全部……っ、教えてくれるんだろう? 白霆」
『──っ、晧……』

 
 名残惜しいとばかりに耳孔をぐうるりと掻き回してから、白霆がじっくりと舌を抜き始める。今までこの耳をこの舌が埋めていたのだと、分からせるかのように。

 
「っ、あ……」

 
 耳から舌が抜けたのと同時に、白霆の昂りの先端が既に勃ち上がった晧の花芯を淫猥になぞる。くちゅり、くちゅりと擦る度に鳴る淫靡な水音が聞こえて、布越しに糸を引く様に晧は更に溢れてしまう先走りの蜜を自覚した。

 
「ええ……教えて差し上げます。たくさん」
「んっ……少しだけ加減しろよ、初めてなんだから……」
「なるべく」
「……ぁ、優しくしてくれるんじゃ、ないのか……?」

 
 額に落とされる接吻を、擽ったくも思いながら受け入れる。やがて鼻梁、鼻先に移動した接吻くちづけが晧の唇にもうすぐ触れる、そんな位置で止まった。

 
「優しくしたいのは山々なんですが、何せ私も初めてですし、今まででそれはそれは散々煽られてますので、なるべくと申し上げておきます」
「はくて……」

 
 晧が白霆の名前を呼ぶ、その声や吐息すらも惜しいのだと言わんばかりの接吻くちづけが降ってくる。まさにそれは食らい付くかのような接吻くちづけだった。

 
「んんっ……! ふっ……」

 
  竜の長い舌が口腔内を蹂躙する。歯列のひとつひとつの形を確かめるかのように舐め、晧の銀狐としての牙の尖りを舌先で愛撫する。まさかそんなところが感じるとは思わなかった晧は戸惑った。

 
「ふっ……んっ……」

 
 思わず竜の舌を甘噛みすれば、白霆の身体がびくりと反応を示す。それがとても可愛いと思った晧が幾度か舌への甘噛みを繰り返せば、熱い舌からとても甘いさらさらとした蜜のようなものが溢れて出してきた。
 こくり、と晧は喉を鳴らしてそれを飲む。
 途端に尾骶から熱い疼きが生まれて、思わず晧は腰をくねらせた。   
 聞いたことがある。
 真竜の雄の体液には催淫の効果がある、と。
 一番は子種でもある精だが、唾液にも少量含まれている。雄竜は番と交尾をする際、甘蜜のような甘い唾液を飲ませて始まりを促すのだという。

 
(ああ……欲しい、もっと)

 
 舌の甘噛みを止めた晧は、おずおずと自分の舌を絡ませた。すると逃がさないとばかりに白霆の舌に絡め取られ、強く吸われて舌の根がつんと痛む。

 
「んんっ……!」

 
 やがて、きゅ、きゅと緩急を付けて扱くような動きを見せていた舌が外れる。
 はぁ……とお互いに熱い吐息を洩らして唇が離れれば、何故かとても口の中が寂しい気がした。

 
「……はくてい……」

 
 もっと、と伝えるはずだった言葉は、啄むような接吻くちづけに遮られる。

 
「もっと……貴方の唇を堪能したいですが、他の場所もたくさん愛させて下さい、晧」
  
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