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III プレ女王国連合の成立

それぞれの出撃準備……

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「回復(強)!!」

 バシュウッキラキラキラキラ……

「回復(弱)!!」

 バシュッキラキラキラキラ……
 まだ望みがある移動可能な重傷者に向けて、メランがル・ツーの魔ローダースキル回復強と回復弱を立て続けに掛け、星型のキラキラ粒子が怪我人達に降り注がれた。

「ふぅ」
『……という訳なんですよY子殿、半透明に付随していた大砲抱えた野郎は撃退しました!! 持ってた大砲もサクッと叩き潰してやりましたよっ! 所でコーディエの野郎からどぎついセクハラ受けてませんか?』

 メランが苦労して回復している横で、砂緒があたかも公衆電話かの様にY子に魔法秘匿通信で話し掛けていた。

『……何を言っている? 戦闘続きでセクハラなど受ける暇は無いぞ』
『いえいえ、戦闘中に受けるテクニカルなセクハラもあるはずです。それを心配していました』
『悪いな、真面目な話を優先して欲しい。つまり大砲を潰したからもう砲撃も散弾も心配は無いと? 予備機は無いのだろうか?』

 Y子は黒い兜から少しだけ見えている美しい頬を触りながら考えた。

『ええ、セレネが飛んで行った時に長い砲身を捨てて短くして瞬間移動したのですよね? もしいくつもあればわざわざ砲身を折ったりしないで予備に持ち替えるはずですから』
『なる程……』
「何だ何だ? 砂緒が遂にあたしに会いたいってか?」

 会話の中で自分の名前が聞こえた事で、複座では無く同じ操縦席の横からこっそり見ていたセレネがY子に小声で聞いた。最近砂緒がセレネセレネ言わなくなって内心心配していたからだった……

「んーん、一言も言って無いわ!」
「……あ、そ」
『どうしたんですか?』
『いや何でも無い。代わるか?』
「結構!!」
『どうしたんです??』

 Y子が会話の途中でセレネに確認したが、意地になったセレネは交代を断った。

『では双方油断せぬように! 動けぬ重傷者は回復魔導士を付けて置き、速やかに進軍を再開しよう!』

 Y子こと雪乃フルエレ女王は一見酷い事を言ったが、早く隊と離れる事で戦闘に巻き込まれ無い様にとの配慮から出た言葉だった。しかし砂緒も特に気遣いでは無くそのつもりだった。

『Y子殿もコーディエのセクハラ攻撃を油断せぬ様に!』

 プチュッ
 双方から同時に魔法通信を切った。

「砂緒さん最近セレネさんの事忘れがちじゃないですか? セレネさん多分凄く寂しがっていると思いますよ」

 会話を後ろから聞いていたメランが眉間にシワを寄せながら言って来た。

「いやいやセレネはそんな事は無いでしょう。戦闘が楽しくて、私の事忘れてるんじゃないですか?」
「まー別にどっちでも良いですけど、寂しくても口に出せないタイプだと思いますが」
「つまり私から声を掛けると凄く喜ぶと?」
「さー知りません。敵に塩を送る事になりますので」
「……敵だなんて、なか~まじゃないですかっ」
「はいはい」

 言いつつメランは回復(弱)の再始動を待った。


 ―メドース・リガリァ魔ローダー駐機場。

「おおっサッワとココナツヒメ殿、戻って来たかご苦労であった」

 瞬間移動で戻り、飲み物を飲みながら一時の休憩を取っていた二人に貴嶋が出迎え話し掛けて来た。珍しい態度な上に、そもそも魔ローダー駐機場に来る事自体が珍しい。二人は貴嶋の不安感と焦りを感じていた。しかしそれ以上に以前の様な悪辣な独裁者然とした雰囲気では無くなっていた。

「ええ、戻って来ちゃいましたわ」
「ハッ! すぐさま再出撃します!!」

 サッワは頭を下げた。

「西側については約一万の地上兵の内、七千くらいはやっつけちゃいましたわっ」
「おおっそれは凄い」

 ココナツヒメの言葉に驚く貴嶋。

「して東側には?」
「東側に関しては魔ローダーが多かったからか、意外に手こずりまして……」
「おお?」

 サッワが話し始めたが、口ごもり出したのでココナツヒメが交代した。

「最初一万四千くらいだったかしら? その内三千から四千は撃滅したと思うのよね。あと十七機いた雑魚魔呂も二機程撃破しましたわっ」
「おおっそれは凄い」

 てっきりその程度かっ! と怒り出すと思っていた貴嶋が笑顔で褒めだしたのでサッワもココナツヒメも拍子抜けした。しかしそれは優しくなったとかいう生易しい物では無くて、独裁者として覇気が無いと言おうか、死を覚悟してしまったかの様な寂しさを感じた。

「貴嶋さまっアンジェ玻璃音女王陛下がお戻りになるまでに、我らさらに敵を漸減してお見せましょう!」

 サッワは気が抜けた様な貴嶋が心配過ぎて、あえて女王陛下の名前を出した。

「そうだ、そうであった! きっとお戻りになる女王陛下の為にも守り切らねばならぬ……」

 貴嶋はぶつぶつと自分に言い聞かせる様に言った。

「そう、敵が進軍を再開する前に……わたくし達、魔ローダー全機で瞬間移動斬り込みを掛けたいと思いますの。それで魔呂を漸減しますから、メド国軍には敵地上兵に対して魔戦車とゴーレム兵と騎馬兵を中心とした地上兵で突撃を掛けて欲しいのですわ」

 当初、サッワの超長距離魔砲撃で同盟軍の魔ローダーの大半を撃破する予定であった物が、すぐに砂緒とセレネに無効化されてしまい、結界くんの範囲外からではあるが、遂にいよいよ瞬間移動での捨て身の斬り込みを開始する事となった。それに地上兵が連携して投入されるという事は、とうとうこの戦いの最終局面である事を意味していた。もちろんメド国側にとって悪い意味での最終局面である。

「サッワさま! ココナツヒメさまっ!」
「私達いつでも出撃出来ます!!」
「行きましょう!」
「絶対に勝ちますよ!」

 そこにシャクシュカ隊Ⅱの生き残り、ジェンナとパララとノーラとルシアがやって来た。

「よしみんな、絶対に勝って生き延びよう!!」

 サッワは美女達に向けてあたかも年上のコーチの様に優し気に声を掛けた。

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