356 / 562
Ⅳ セブンリーフ新北中同盟女王選定会議
タカラ座の怪人 中 謎の庭師
しおりを挟む「一体入って来たのはどなたさまで御座いましょう?」
怪訝な顔をして薄暗い城の奥から現れたのは、胸元が大きく開いたメイドさんの格好をした七華であった。
「七華じゃない!! 何してるの?」
「王様に連れ帰されて以来ねえ、どうしてたのよ七華!? お客さん皆寂しがってるわよ~」
雪布瑠こと雪乃フルエレ女王と猫呼が同時に呼び掛けたが返事が無い。
(ゲゲッ探してた七華がいきなり出て来た……でも無事で少し安心しましたが)
『雪布瑠ちゃんは七華王女の事知らない設定よ……』
砂緒扮するスナコちゃんは久しぶりに会う七華をまじまじと見つめた。
「よかったじゃんスナコちゃん、七華抱えてトンズラすりゃあ、後は軍隊の到着を待つだけで解決じゃねーか」
一応剣を鞘に納めたセレネは七華の腕を強引に掴もうとした。
「お止め下さいまし……私は名も無きメイドさんです、有名な美しく清楚で高貴な七華王女様などでは御座いません」
七華に見えるメイドさんは古武道の様な最小の動作でスッと鮮やかにセレネの腕から逃れた。
「何!?」
「美しいなんて言ってないわよー」
「清楚で高貴って誰が言ってるのよ?」
『わたしも聞いた事あります、七華姫は清楚で高貴で有名ですよ』
「んなの聞いた事もないわっ」
いぶかしがるセレネと猫呼と雪の横で、女性の姿はしていてもセクシーなメイド姿の七華に目を奪われているスナコちゃんの様子が目に留まった七華はスッと彼に近寄って来た。
「……あら貴方とても魅力的な女の子ですわね……何てお名前ですの? 此処には何をしにお立ちよりを?」
改めて久しぶりに接近して見た七華は深く開いた胸元も合わせて妖艶な魅力があって、スナコちゃんに変装中の砂緒は色々な事が頭に蘇り赤面して唾をゴクリと飲み込んだ。それを見て七華が不敵に笑った。
『わ、わたしスナコ……』
(七華、本当に記憶が無いとかなのですか?? それとも分かって言ってる??)
「あらあら可愛い女の子なのに女性に興味がおありですのね。でも要領を得ませんわ……不法な侵入ならお断りしますわよ」
七華メイドは頬に指を当てて首を傾げ困り果てる顔をした。
「あくまでも白を切るつもりなら仕方ないわね。じゃあメイドさん私達旅の途中で疲れ果ててしまって一夜の宿をお借りしたいの」
「そうなのメイドさん悪気は無いのよ、私足を挫いててもう歩けないの! 泊めて欲しいの」
(お兄様も居るのかしら??)
猫呼は薄暗い城内をキョロキョロ見た。
『という訳なんです。お願い出来ますでしょうか?』
「お、おいお前らこんな妖しい所に本気で泊まる気かよ?」
セレネは三人の前に立ちはだかって制止した。
「ふふ、お嫌なら性格のキツそうなお嬢さんだけでも野宿されても良いのですわよ」
「なんだって!?」
「……ただ、今晩泊れるかどうかはわたくしの一存では決めかねます。お館様のお眼鏡に適うかどうかお会いして頂かないと……」
七華メイドは言いながら館の奥を顧みた。
『お館様ですって?』
(貴城乃シューネか!?)
「お館さまってどんな方ですか? 会って下さるのですか?」
(どうせ貴城乃シューネとか言う人でしょ……)
「なんか怖いよ~~~」
(いやいやお兄様かもよ?)
「夕食に招待してくれる訳じゃ無いんかよ?」
(ぼーっと見てるんかよ他人の食事をよ……)
小声で会話する三人を横目で見つつ、七華メイドは一呼吸置いて再び話し始めた。
「はい、お館さまは普段は館の奥から出られる事は滅多にありません。ですがお夕食の時まで待って頂ければ……お会い出来る事もあるでしょうか?」
七華メイドは遠い目をした。
「最終的に疑問形て」
「あるでしょうかっていい加減だな」
「それでスカくらったら結局野宿じゃん!」
『ちょっとちょっと落ち着きなさいよ。貴方達知らない内に世界観に浸り過ぎよ。本気で遭難し掛けの旅行者の気持ちに成りかかってない? こっちは城の奪還と七華の救出が目的なんだから、お眼鏡に適うかどうか別として、そのお館さまにさえ会えれば、ぶちのめすなりなんなりとこっちの物なのよっ!?』
スナコちゃんがホワイトボードの長文で警告して三人はハッとした。
「お、恐ろしいヤツ。知らない内にあたしゃらを世界観に引き込んでやがったな!」
「お兄様は何処なのよっ!?」
「あ、あの……メイドさん、この館にネコミミを付けた青年はいらっしゃいますか?」
雪が遠くを見つめたままの七華メイドに聞いた。
「ネコミミを付けた青年ですか? はて……この城に使用人はわたくしの他はもう一人庭師が居るだけ。その男がネコミミを付けていた様な付けていない様な」
「猫耳付けてるか付けて無いかくらい分かるだろフツー」
「きっとお庭にお兄様がいるのね!? 連れてってよメイドさん」
「ふふ、良いでしょうこちらにお越しに」
そそと歩く七華メイドの後ろを皆で付いて行った。スナコは七華の黒いスカートに包まれる大きめのお尻をガッツリと見た。
―眺めの良い庭園。
「凄い……様々な色の薔薇が咲き誇っているわっ! きれーい!! あははーーっ」
雪が両手を広げてスキップ的に駆けて行った。
『危ないです。昼間でも油断して単独行動しないで』
「確かに景色の良いお庭ね。お日様が射して気持ちいいわっ」
「お前らさっき夜更けて言ってたんだぞ? てかタカラ山新城にこんな庭あったかよ?」
ガサガサッ
その時、突然茂みの奥から巨大な鋏を持った、ネコミミを付け眼鏡を掛けた優男が出て来た。
「皆気を付けろっ……って猫弐矢さんかよ」
『猫弐矢お兄様よっ猫呼』
いち早く反応したセレネとスナコが驚いて見た。
「……お、お兄様!? 猫弐矢お兄様なのねっ!! ふえーーーお兄様ーーーっ!!」
遂にもう一人の兄、猫弐矢と再会した猫呼が泣きながら飛び付いた。
「ちょっ、ちょっとお嬢ちゃん誰かな? ワシは六十過ぎの庭師のじいさんじゃぞ? お嬢ちゃんみたいな可愛い妹さんがおる訳無いわい……ふぉっふぉっふぉっ」
猫弐矢にしか見えない庭師は泣いて抱き着いて来た猫呼を優しく引き離した。
「えっ!? 何を言っているのお兄様、私が猫呼が分からないの??」
『どうしたの猫弐矢兄上、猫呼ちゃんが分からないの!?』
スナコがキャラを崩す事無く猫呼を認識出来ない猫弐矢に戸惑った。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
36
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる