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Ⅳ セブンリーフ新北中同盟女王選定会議
落下、フォールダウン
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バシーーン! ガキーーーン!!
雪乃フルエレ女王の無限の魔力と砂緒の強力な雷の魔法剣で、さしもの金輪の貴城乃シューネも防戦一方となって来ていた。魔ローダー金輪の中では不思議な静寂が訪れていた。もはやシューネの大口も猫弐矢の小言も無かった。一体この戦いはどの様に終わるのか、誰も何も語らなくなって来ていた。
「ほら猫弐矢、見ろ! 遂に私達は七葉後川流域最西の都市、海と山とに挟まれた小さき王国の真上まで来たぞ!」
突然シューネが生き返って少年の様に喜んで声を上げた。猫弐矢が魔法モニターを見ると確かに足元には夜でもうっすらと不思議な光をした結界に守られた小都市が見えた。
「だから?」
「そうか分かったぞ! つまりここから東に行けば私達の神聖連邦がある中心の洲、北の海を渡れば荒涼回廊、そして西の海を越えれば域外の帝国のある大陸だっ! ははははは」
ガシーーーン!!
シューネは言いながらも蛇輪が繰り出す剣を受け止めた。猫弐矢は自信家のシューネが失意の余り少しおかしくなって来たと感じ、ここはもう恥を忍んで共通魔法回線で砂緒に謝り倒そうと決意した。
『うーーん、しぶといですねえ、早く落ちれば良いのに!』
『ちょっと待ってよ! 海と山と国の結界シールド上に落としてはダメよ! 私達の大切な同盟の一員よ、迷惑を掛けちゃダメ……』
フルエレの声は後半になるに従って小さくなって行く。
『いやーそんな事言いましても、三毛猫があっちにあっちに飛んで行く物ですからねえ』
『でも駄目よ、王様もおかあ、いえお后様もびっくりしちゃうわ……』
『確かに! 美しきお后様も私の大切な人に違いありません。しかしフルエレはお会いした事ありましたっけ??』
『え、ああY子ちゃんに聞いたのよ』
『おお、Y子殿は一体今何処……』
『そそうよね』
本気でY子の事を心配するスナコこと砂緒をライラは不思議に思った。当然だが今この間も激しい剣での攻撃を繰り返している。
『あのう、砂緒様いやスナコ様』
『どちらでも良いですが』
『では砂緒さま、あの敵なのですが最近魔力不足か背中のリングがフッと消える事があり、その時軽く落下しております。ですので、砂緒さまの雷攻撃で直接背中のリングを狙えば奴を落下させる事が出来るのでは?』
『おおっライラ、ナイスアイディア!! では奴が結界の上空から離れた瞬間にリング目掛けて雷をバチッと撃ってやりますよハハハ』
『上手くやって……』
という訳で砂緒は魔法剣を振るいながら、金輪三毛猫スペシャルを海と山と国の結界の範囲から巧みに外そうと誘導した……
「なんだ銀色! 我々をさらに高い上空に誘っているつもりか?? まだまだ私は飛べる!!」
シューネは挑発された思いがして砂緒の思惑通り結界の範囲から離れつつあった。しかし猫弐矢もフゥーも、もはや魔力の限界は近かった。
「シューネ、フゥーちゃんも僕も君ももう魔力は限界だ、僕はもう砂緒くんに頭を下げて降伏しようと思う。あの子は悪い子では無い、話せば禁固刑くらいで許してくれるよ」
猫弐矢の声を聞いてももはやフゥーは反論する力も無くなっていた。
「バカなっ! まだまだやれ……」
等と言い合いしている最中であった。
『落ちろ! 金色!!』
バリバリバリ、ドォーーーーン!!
黒雲からでは無く、蛇輪の指先から直接放たれた凄まじい電撃が、金輪の背中の光輪に直接ヒットした。
フッ……
ライラの予想通り、光剣を撃ち落とす砂緒の電撃は直接背中の後輪をも破壊する事に成功した。もはや魔力を失いつつある三人には、もう一度スキル展開する力は残っていなかった……
「どうした!?」
「何が起こった!?」
「キャーーーーーッ!!」
魔力不足で魔法モニターが消え、真っ暗となった操縦席内は一瞬で真っ逆さまに落下する状態となり、フゥーは少女らしく恐怖のあまり泣き叫んだ。その直後、三人全員の脳裏に地面への激突死という言葉が浮かんだ。
「フゥーくん!! しっかり身を護るんだ」
等と言いながら猫弐矢はフゥーを抱き締めた。抱き締めたからとてどうなるとも思えないが、なんとかこの子だけでも守ろうと必死だった。だがフゥーは恐怖から一転軽い虚脱状態にあった。先程のシューネと砂緒の会話を聞いて、主人の心には常に手の届かない高貴な姫乃という女性がいる、結局自分は魔力と能力目的で利用された存在なのだと、賢いフゥーは一瞬で悟っていた。
「猫弐矢さまありがとう」
「!」
フゥーは最後の瞬間まで自分を守ってくれる猫弐矢に頭を預けて、軽く手に手を添えた。うっすらと涙も出ていた。だがシューネを憎む気持ちは無かった。
「くっここまでか……」
ぐるぐると回転して落下しながら、シューネの服の胸元からペンダントの鎖が飛び出して来た。彼はそれを完全に引っ張りだして握りしめた。
「姫乃殿下……姫乃済まない……」
幼き日に城から手を引いて連れ出した姫乃が、ある日恥ずかしそうにプレゼントしてくれた物だった。
「貴方が何もくれないからわたくしが差し上げます! 代わりにシューネ、いつになったらお城の外におうちを作って結婚式を挙げてくれるの??」
純真な少女姫乃はいつも本気でそんな問いをしていた。
「……ふふっいつになってもそんな日は来ないのですよ私のお姫様」
シューネは激突の瞬間に備えようと、醜い姿は誰にも見せまいと目を閉じて不敵に笑った。
雪乃フルエレ女王の無限の魔力と砂緒の強力な雷の魔法剣で、さしもの金輪の貴城乃シューネも防戦一方となって来ていた。魔ローダー金輪の中では不思議な静寂が訪れていた。もはやシューネの大口も猫弐矢の小言も無かった。一体この戦いはどの様に終わるのか、誰も何も語らなくなって来ていた。
「ほら猫弐矢、見ろ! 遂に私達は七葉後川流域最西の都市、海と山とに挟まれた小さき王国の真上まで来たぞ!」
突然シューネが生き返って少年の様に喜んで声を上げた。猫弐矢が魔法モニターを見ると確かに足元には夜でもうっすらと不思議な光をした結界に守られた小都市が見えた。
「だから?」
「そうか分かったぞ! つまりここから東に行けば私達の神聖連邦がある中心の洲、北の海を渡れば荒涼回廊、そして西の海を越えれば域外の帝国のある大陸だっ! ははははは」
ガシーーーン!!
シューネは言いながらも蛇輪が繰り出す剣を受け止めた。猫弐矢は自信家のシューネが失意の余り少しおかしくなって来たと感じ、ここはもう恥を忍んで共通魔法回線で砂緒に謝り倒そうと決意した。
『うーーん、しぶといですねえ、早く落ちれば良いのに!』
『ちょっと待ってよ! 海と山と国の結界シールド上に落としてはダメよ! 私達の大切な同盟の一員よ、迷惑を掛けちゃダメ……』
フルエレの声は後半になるに従って小さくなって行く。
『いやーそんな事言いましても、三毛猫があっちにあっちに飛んで行く物ですからねえ』
『でも駄目よ、王様もおかあ、いえお后様もびっくりしちゃうわ……』
『確かに! 美しきお后様も私の大切な人に違いありません。しかしフルエレはお会いした事ありましたっけ??』
『え、ああY子ちゃんに聞いたのよ』
『おお、Y子殿は一体今何処……』
『そそうよね』
本気でY子の事を心配するスナコこと砂緒をライラは不思議に思った。当然だが今この間も激しい剣での攻撃を繰り返している。
『あのう、砂緒様いやスナコ様』
『どちらでも良いですが』
『では砂緒さま、あの敵なのですが最近魔力不足か背中のリングがフッと消える事があり、その時軽く落下しております。ですので、砂緒さまの雷攻撃で直接背中のリングを狙えば奴を落下させる事が出来るのでは?』
『おおっライラ、ナイスアイディア!! では奴が結界の上空から離れた瞬間にリング目掛けて雷をバチッと撃ってやりますよハハハ』
『上手くやって……』
という訳で砂緒は魔法剣を振るいながら、金輪三毛猫スペシャルを海と山と国の結界の範囲から巧みに外そうと誘導した……
「なんだ銀色! 我々をさらに高い上空に誘っているつもりか?? まだまだ私は飛べる!!」
シューネは挑発された思いがして砂緒の思惑通り結界の範囲から離れつつあった。しかし猫弐矢もフゥーも、もはや魔力の限界は近かった。
「シューネ、フゥーちゃんも僕も君ももう魔力は限界だ、僕はもう砂緒くんに頭を下げて降伏しようと思う。あの子は悪い子では無い、話せば禁固刑くらいで許してくれるよ」
猫弐矢の声を聞いてももはやフゥーは反論する力も無くなっていた。
「バカなっ! まだまだやれ……」
等と言い合いしている最中であった。
『落ちろ! 金色!!』
バリバリバリ、ドォーーーーン!!
黒雲からでは無く、蛇輪の指先から直接放たれた凄まじい電撃が、金輪の背中の光輪に直接ヒットした。
フッ……
ライラの予想通り、光剣を撃ち落とす砂緒の電撃は直接背中の後輪をも破壊する事に成功した。もはや魔力を失いつつある三人には、もう一度スキル展開する力は残っていなかった……
「どうした!?」
「何が起こった!?」
「キャーーーーーッ!!」
魔力不足で魔法モニターが消え、真っ暗となった操縦席内は一瞬で真っ逆さまに落下する状態となり、フゥーは少女らしく恐怖のあまり泣き叫んだ。その直後、三人全員の脳裏に地面への激突死という言葉が浮かんだ。
「フゥーくん!! しっかり身を護るんだ」
等と言いながら猫弐矢はフゥーを抱き締めた。抱き締めたからとてどうなるとも思えないが、なんとかこの子だけでも守ろうと必死だった。だがフゥーは恐怖から一転軽い虚脱状態にあった。先程のシューネと砂緒の会話を聞いて、主人の心には常に手の届かない高貴な姫乃という女性がいる、結局自分は魔力と能力目的で利用された存在なのだと、賢いフゥーは一瞬で悟っていた。
「猫弐矢さまありがとう」
「!」
フゥーは最後の瞬間まで自分を守ってくれる猫弐矢に頭を預けて、軽く手に手を添えた。うっすらと涙も出ていた。だがシューネを憎む気持ちは無かった。
「くっここまでか……」
ぐるぐると回転して落下しながら、シューネの服の胸元からペンダントの鎖が飛び出して来た。彼はそれを完全に引っ張りだして握りしめた。
「姫乃殿下……姫乃済まない……」
幼き日に城から手を引いて連れ出した姫乃が、ある日恥ずかしそうにプレゼントしてくれた物だった。
「貴方が何もくれないからわたくしが差し上げます! 代わりにシューネ、いつになったらお城の外におうちを作って結婚式を挙げてくれるの??」
純真な少女姫乃はいつも本気でそんな問いをしていた。
「……ふふっいつになってもそんな日は来ないのですよ私のお姫様」
シューネは激突の瞬間に備えようと、醜い姿は誰にも見せまいと目を閉じて不敵に笑った。
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