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骸龍編

骸龍

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「自ら利を捨てるなんて舐められてるね」
「奴にとって人間など取るに足らない生き物だ」
「助かるから良いけど」

骸龍ボルロダスは静かに2人を見下ろす
他の者とは違う人間
恐れず戦う意思すらある
魔法を使う、ボルロダスが骸龍と言われる所以となった魔法
持ってきていた大量の骸が地面に落ちる
そしてカタカタと音を立てながら人や魔物の姿を形取る

……骨、聞いていた通りの魔法

……不死の軍勢か

骨の軍勢が2人に襲いかかる

「ウィンドブレス」

風を巻き起こして吹き飛ばす
軽い骨の軍勢は風に耐えられず吹き飛ばされていく
剣で素早く切り裂く
切り裂いた骨は直ぐにくっつき再び動き出す

……再生はしてない。つまり

くっついた骨が再生していないのを確認する
連続で剣を振るい切り刻み細かくなった破片を踏み潰す
くっつこうとするが部位が足らず身体が維持出来ず倒れる

「再生しないなら斬って砕けばいい。細かい破片まで操れる程の精度はない。いやこの大群を操っているのならその余裕が無いと見るべきかな」
「成程な。不死では無いか。ならやり易いアースソーン」

地面から無数の棘が現れ骨の軍勢に突き刺さる
魔力を纏った剣で骨を叩き砕く
次々と再生出来ないように削っていく
クロナは素早く切り裂いて骨を踏み砕く
それはかつて人であった骨でも関係無い
そんな事を気にしてはいられる余裕は無い
何故ならまだ骸龍は動いていない
骨の軍勢だけの今はまだ本気では無い

……動かないうちに削る

骨の軍勢と同時に相手取るのは難しい
動き出す前に削る

「ウィンドソーン」

風の棘が骨を貫いていく

「いつ攻める?」

一旦合流して骨を倒しながら話し合う

「龍とは言えど魔法に集中しなければこの量は扱えまい、今がチャンスとも取れる」
「動かないのでは無く動けないか」
「あくまで可能性だがな」
「可能性は潰していく方が良い」
「だが奴は強固な鱗に包まれているどうやって突破する」
「魔法でも難しい?」
「難しいな」

騎士団長は魔力ポーションを飲む
龍の鱗はそこらの防具や鉱石よりも硬い
突破するにはそれ程に強力な攻撃か壊れるまで叩き続けるような事が必要となる

「力かぁ」
「行けるか?」
「試しては見る」
「道は私が作る。ウィンドインパクト」

突風が吹き荒れる
前方の骨の軍勢が吹き飛び一本の道が出来る
クロナがその道を通る

……大きいから届かない狙うは足

胴体、首や顔は届かない
狙うは足一択
地を蹴り進む
剣を振りかぶり足に重い一撃を食らわせる
ガキッン
金属同士がぶつかるような音が響く
傷1つ付かない

……硬いなぁ

素早く何度も斬り掛かる
ビクともしない、傷一つ付かない
何度も斬り掛かる、かなりの数斬り掛かると傷が付き始める

……これなら壊せるけど一回一回これだけ掛かったら流石に骸龍も対応するよね

息を整えて剣を強く握る
そして大きく振りかぶる
剣術の1つで隙の大きい大振りの一撃

「壊」

全力を込めて放つ
鱗に剣が当たる
硬い物を砕く為の技、一撃で鱗を砕く
砕け散った紫色の鱗は飛び散る
その部分から肉が見える
続けて別の技を使う
速度を重視した軽い連撃、無刃よりも遅いが早く複数回斬る事に特化させた技

「速撃」

素早く肉を切り裂く
一呼吸で連続で肉を斬る
血が飛び散る
肉はウロコのように硬くは無い
骸龍は攻撃に気付く
そして地面から生えるように骨の棘をクロナ目掛けて放つ
飛び退いて回避する

「流石に気づくか。良いね」

骸龍はクロナを見る
そして傷を付けたクロナを明確な敵を看做した
足を上げて踏み潰すかのように足を叩き付ける

「通じるなら問題なし、これなら勝てる」

技を出し惜しまず使う
龍は魔物の中でも最上位、いやこの世界に存在する者の中で最上位に君臨する存在
出し惜しめば負けるのは自分
壊で鱗を砕いて速撃で肉を切り裂く
足を攻撃し続ける
骨の軍勢を使いクロナに攻撃を仕掛ける

その時、騎士団長が自由となった
骸龍はクロナの方が危険だと認識していた
今の状況での活躍では正解だろう
しかし、それは騎士団長がまだ本気では無いという事を知らない事から起きた過ち
一番警戒すべきなのは魔力を持たないクロナより多くの魔法を扱える騎士団長であった

騎士団長は無詠唱で魔法が使えない
名前を言う単一詠唱までしか使えない
その点では副団長のアルトに劣る
しかし、それでもこの国で最も強い者はとなると皆が騎士団長だと言う

「精霊よ我が声を聞け」

騎士団長が詠唱を始める
騎士団長の周囲に光が集まる

……なんか凄い事しようとしてる

「皆様こっちですよ!」

骨の軍勢を切り刻み骸龍に攻撃を叩き込む
意識を騎士団長に向かないように立ち回る
詠唱には時間がかかる
そしてその間詠唱者は無防備になる
この場で無防備になる詠唱をするという事はそれだけの効果のある魔法の起動を意味する

骸龍はクロナを見ている
そして口を開く
口の中に魔力を集める、龍種が使う攻撃手段
自身の持つ膨大な魔力を込めて放つブレス
クロナ目掛けて放つ
範囲が広く破壊力の高い一撃
骨の軍勢を巻き込むつもりで放つ

……あれはまずい

本能的に理解する
逃げようにも骨の軍勢に囲まれている
剣を振るい切り裂くが次から次へと近付いてくる

「えぇい、鬱陶しい!」

素早く切り刻み薙ぎ払う

「人々の祈りを聞きなさい災厄を守る盾となりなさい代行者たる我が声を聞け」

……間に合わない。斬るか斬れるのか?

範囲外に逃げようにも逃げられない
そしてブレスは剣術でどうにかなる物とは思えない
ブレスが放たれる
一か八か剣を構える
その瞬間目の前に魔法障壁が展開される

「これは……」

見覚えがある魔法

身体が動かない、ただ戦っている所を見ている事しか出来ない
2人なら勝てるのかもしれない
勝てないかもしれない
分からない

ユイラは他の人々と同じく2人の戦いを見ていた
そして骸龍がブレスを使おうとしているのが見えた
その標的は見えている詠唱している騎士団長では無いと分かる

……クロナさんが標的? 回避出来ればいや骸の軍勢は今恐らくクロナさんに

見えている情報だけで整理する
そしてブレスと骨の軍勢の標的はクロナだと予想する
そうなればもし突破出来なければブレスが直撃する
龍のブレスは大抵の防御魔法を塵に返す程の一撃
なら魔力を持たないクロナは防ぐ術がない
騎士団長は今詠唱中なら防御魔法は張れない

……不味い、動いて、身体

骸龍を恐れて身体が動かない
向いていない今ですら動けば死ぬと思う程の恐怖が襲いかかる
助けないとクロナが死ぬかもしれない
なのに動かない
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