エミリオとアリエッタ

柴咲もも

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使えない女中のアリエッタ

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 月日が過ぎて、エミリオは寄宿学校へ入学した。
 寄宿学校の生徒は長期休暇になると、帰宅組と家の都合で帰れない残留組に別れる。

 入学して三月後の冬季休暇、エミリオは兄と共に帰郷した。
 アリエッタは屋敷の門前で雪掻きをしていた。たった三ヶ月離れていただけだというのに、柔らかな赤毛を編んで纏め、地味な使用人服に身を包んだアリエッタが、エミリオには少し大人びて見えた。

「ウルバーノ様、エミリオ坊ちゃん、おかえりなさい」

 はにかむような笑顔を向けられて、エミリオはびくりと身を強張らせた。だが、アリエッタの笑顔が向けられた先が後ろに立つ兄なのだと思い至ると、途端に腹立たしくなり、エミリオは足元に積もる雪を思い切り蹴り飛ばした。

「わぷっ」

 頭から雪を被り、アリエッタが身を縮こまらせる。頭と肩にかかった雪を手で払うと、翠色の瞳を丸くして、アリエッタは呆然とエミリオに目を向けた。

「なんだよ。文句あるのか?」

 ぶっきらぼうにそう告げて、エミリオはずかずかと家に入った。少しやりすぎたかと気になって振り返ると、門前で雪掻きを再開したアリエッタの肩に、兄が上着を掛けてやっているのが見えた。
 腹立たしくて謝る気にもなれなかった。上着のお礼に、今夜アリエッタは、より一層手厚い奉仕をするのだろう。ちっと舌打ちして、エミリオは自室に引き篭った。
 その夜、アリエッタは熱を出した。そのまま風邪を拗らせて、エミリオの冬季休暇が終わるまでアリエッタが姿を見せることはなかった。



 最初の冬季休暇こそ帰郷したものの、次の春季休暇以降、エミリオは残留組に混じり、いつも寮に残って休暇を過ごすようになった。兄は相変わらず長期休暇のたびに帰郷していた。
 家に帰るのが、なんとなく怖かった。アリエッタと顔を合わせるのが怖かった。
 エミリオが戻らない間、アリエッタは兄に何度も奉仕しているのだろう。口だけでなく、今は身体も捧げているかもしれない。
 
 そうして一年が過ぎ、寄宿学校に入学して二度目の冬、両親からエミリオに手紙が届いた。「元気にしているか。たまには帰って来なさい」と、手紙にはそんなことが書かれていた。

 一年ぶりに家に帰ると、アリエッタは昨年と同じように屋敷の前で雪掻きをしていた。

「ウルバーノ様、エミリオ様、お帰りなさい」

 慎ましくお辞儀をして見せたアリエッタは一年前より背も伸びて、痩せっぽっちだった身体も女性らしく丸みを帯びていた。かあっと顔が熱くなり、エミリオは彼女から顔を背けた。そのまま家に上がり、昨年そうしたように、そっと後方を振り返ると、目の前に兄の身体が立ちはだかっていて、エミリオはおかしな悲鳴をあげてしまった。

 夜、自室に戻ったエミリオは、ひとりで自慰行為に励んでいた。
 今頃、アリエッタは兄の雄を舐め咥えているのだろう。あの夜目にした白濁塗れの彼女の顔を思い出すだけで、エミリオの股間は熱くなり、雄々しくいきり勃った。
 先走りに濡れた竿を激しく扱いていたエミリオは、やがて小さく呻くと、床に置かれたチェンバーポットに白濁を解き放った。


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