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番外編
ある愛の呪い
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第二王子は十一人の兄弟を殺した荒ぶる竜の神を鎮めることに成功した。
だが、病床の身に無理が祟ったのか、その日から三日三晩、生死の堺を彷徨うことになった。
そして、峠を迎えた四日目の夜、第二王子は夢を見た。
***
月明かりの中で、漆黒の長い髪の少女が彼を見下ろしていた。
少女は彼に尋ねた。
「お主、死ぬのか」
第二王子は何も答えることができなかった。
少女は再度、彼に尋ねた。
「もう一度、唄を聴かせてはくれぬか」
第二王子は小さく頷くと、唄を歌おうと口を開けた。
だが、掠れた吐息が漏れるだけで、その声は歌にはならなかった。
ごめんね、と、彼は口を動かした。
黙って彼を見下ろしていた少女は、徐に黒いドレスの袖を捲ると、その白い腕に噛み付いた。
「飲め」
そう言って、少女は傷口から流れる朱紅い雫を、ぽたぽたと彼の口へ垂らした。
だが、雫は唇から頬を伝い、流れ落ちるのみだ。
ちからなく唇を動かす彼を見下ろしていた少女は、先の腕の傷を口に含むと、彼の上に屈み込んだ。
少女の唇が少年の唇を覆い、喉の奥に朱紅い液体が流れ込んだ。
「お主を死なせはせん」
少女はそう言って口元を拭うと、 夜の闇に紛れて消えた。
夜が明け、第二王子は目を覚ました。
それまでの病床の日々が嘘のように、身体が軽かった。
そうして彼は、死の淵から再び蘇ったのだ。
だが、この話はそこで終わらない。
竜の血は万病を治し、永遠の命を与える。
それは呪いでもある。
以後、第二王子は人でなくなるその日まで、竜の呪いに苦しめられることになる。
だが、病床の身に無理が祟ったのか、その日から三日三晩、生死の堺を彷徨うことになった。
そして、峠を迎えた四日目の夜、第二王子は夢を見た。
***
月明かりの中で、漆黒の長い髪の少女が彼を見下ろしていた。
少女は彼に尋ねた。
「お主、死ぬのか」
第二王子は何も答えることができなかった。
少女は再度、彼に尋ねた。
「もう一度、唄を聴かせてはくれぬか」
第二王子は小さく頷くと、唄を歌おうと口を開けた。
だが、掠れた吐息が漏れるだけで、その声は歌にはならなかった。
ごめんね、と、彼は口を動かした。
黙って彼を見下ろしていた少女は、徐に黒いドレスの袖を捲ると、その白い腕に噛み付いた。
「飲め」
そう言って、少女は傷口から流れる朱紅い雫を、ぽたぽたと彼の口へ垂らした。
だが、雫は唇から頬を伝い、流れ落ちるのみだ。
ちからなく唇を動かす彼を見下ろしていた少女は、先の腕の傷を口に含むと、彼の上に屈み込んだ。
少女の唇が少年の唇を覆い、喉の奥に朱紅い液体が流れ込んだ。
「お主を死なせはせん」
少女はそう言って口元を拭うと、 夜の闇に紛れて消えた。
夜が明け、第二王子は目を覚ました。
それまでの病床の日々が嘘のように、身体が軽かった。
そうして彼は、死の淵から再び蘇ったのだ。
だが、この話はそこで終わらない。
竜の血は万病を治し、永遠の命を与える。
それは呪いでもある。
以後、第二王子は人でなくなるその日まで、竜の呪いに苦しめられることになる。
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