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2話 魔法使い
後編
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「鎧に臭いつたりしないでしょうね」
「そっか、服と誓って鎧じゃ洗濯できませんもんね」
「水でもぶっ掛けりゃいいんですけど、その後乾かしたり錆止めで磨いたりが手間なんですよね」
軽い世間話のようなことを話しながら、騎士のバルトロスとメイドのイルマは王子リンドブルムのいる屋敷の厨房へと向かう。
「王子、少しは落ち着きましたか?」
「二人共どこへ行っていたのだ。」
魔法使いヴィルヘルミーネを前に、怒りの形相で立っていた。
「王子様、まだ怒ってます、よね?」
「これでも言いたいことは言って、少しは落ち着いたぞ」
竜は荒い鼻息を放つ。
「まあ、吼えてないだけ落ち着いてはいるでしょう。で、何かわかったことはありましたか?」
「無い!」
「本当に申し訳ございませんです!」
土下座をするヴィルヘルミーネ。
「王子様を人に変える方法はそちらの娘さんにお教えした、生まれ変わりの魔法だけなのです。ですからここでこうして、他に方法がないか研究していた次第でございますです」
何度も申し訳ございませんと土下座を繰り返す姿は、哀れや滑稽を通り越し、そろそろ鬱陶しいに片足をかけていた。
「もう良い、同じ言葉は聞き飽きた。バルトロスよ、この者をギルドへ連れて行き引き渡すぞ」
「お、王子様、ワタシ、どうなるん、ですか?」
「国の管理する建屋に不法侵入したのだ、王国法で裁かれるに決まっているであろう」
体が振るえ始めるヴィルヘルミーネ。
「勿論、我が母である妃殿下及び私に対して呪いをかけた件に関しても裁判にかける。覚悟はしておくのだな」
魔法使いの顔色がどんどん青くなっていく。
「どど、ど、どうか。どうかご恩赦を! ワタシ、ワタシ必ず王子様を人の姿にいたしますので!」
「それは一体、後何年先の話しだ? あの拷問まがいの方法ですら、見つけるのに私がこの歳になるまでかかったのであろう」
バルトロスが溜め息を一つ吐く。
「このままじゃ話しが終わりそうにありませんね。とりあえず、ヴィルヘルミーネさんを一度ギルドへ連れて行って、身分を預けておきません」
「バルトロスの言うとおりであるな。ヴィルヘルミーネよ、もし自分のやったことを少しでも償う気があるのであれば、大人しく私達についくるのだ」
「はいぃ! 逆らいませんし大人しくいたします。ですから、ですからどうか、どうかご恩赦を!」
土下座を繰り返すヴィルヘルミーネに、流石にリンドブルムも呆れ始めていた。感情を怒りにませているより、法で裁いた方が楽だと判断したからだ。
「では、一度冒険者ギルドへ行くぞ」
「縛らなくてもよろしいんですか?」
「これだけ頭を下げて逃げるようなら、いくらご婦人とて私も容赦はせん。それは本人が一番感じておるだろう」
悲鳴に近い声で肯定の言葉を繰り返す魔法使いを見て、確かに、とバルトロスは納得する。
二人がヴィルヘルミーネの事を話している間、イルマの視点は一箇所に注がれていた。
「ところで王子様、バルトロス卿」
「どうしたイルマよ」
「あのお鍋の中、溢れてきてません?」
「あ、火消すの忘れてた」
全員の視線が竈門で煮られている鍋に集まる。
確かにイルマの言うように、鍋の中から濁った黄色の液体が少しずつ、こぼれ、溢れ出していた。
「まず聞くが、あれは何なのだ?」
「王子様を人に戻すために、体を溶かして元に戻すスライムが作れないか実験していました。」
「そうか、あれはスライムか……待て、ワタシをあれに溶かさせると言ったか?」
土下座と謝罪を繰り返すヴィルヘルミーネ。
「王子! 今はそんなことより、あれをどうするか考えましょう!」
バルトロスが剣を抜きリンドブルムの横に並ぶ。
リンドブルムはヴィルヘルミーネの腕を引いて立たせると、自分の後ろに回らせ、剣を構える。
「イルマ、その者が逃げぬよう見張っていてくれ」
前に立つ二人は互いに目配せし、鍋から溢れ続けるスライムとの距離を測る。
「スライムなどいても百害あって一利なし、ここで討伐するぞバルトロスっ!」
「了解です! スライムなら核を破壊すれば自壊しますから、巨大になる前にやれば剣でも倒せます」
「その核なんですけど」
二人の後ろから恐る恐るといった様子でヴィルヘルミーネが発言する。
「多分そのスライムの核、お鍋の中です」
二人がスライムを見る。溢れ出た黄色の粘液は竈門を覆い、火を消し、さらに大きさを増やしていた。その中心で鍋が浮いている。
「なんだとぉぉっ!」
「あれじゃあ、俺の剣じゃ斬れそうにないですね」
竈門を覆ったスライムの体が触手のように粘液を伸ばし、王子と騎士を捕食しようとしてくる。
その動き自体は緩慢としたものであるため、二人は難なく切り払って行くが、竈門を包む粘液は体積を増し、扉近くにまで迫ってくる。
「仕方ない、外に撤退する。バルトロス、彼女達を連れて行けっ!」
「了解です! さあ、お二人ともこちらです。」
イルマと逃げずにいたヴィルヘルミーネを連れ、バルトロスが屋敷の外へ連れ出して行く。
それを確認するとリンドブルムも厨房から飛び出し、外を目指して屋敷の中を走る。
後ろを振り返ると、部屋の中から濁った黄色の粘液が溢れ出てくるのが見えた。移動が早いのではない、膨張するのが早いのだ。
屋敷の外に飛び出ると三人の前に立ち剣を収め、両手を屋敷に向けて突き出す。
「バルトロス、あの屋敷諸共スライムを吹き飛ばすっ! 二人のことは頼むっ!」
「二人共俺の後ろに回って、目を閉じてください! イルマさん、杖を使う準備を。私が合図したら杖を使ってください!」
突き出したリンドブルムの両手が発光し、雷光を纏っていく。両手の間を雷が走る。
「撃つぞっ!」
「イルマさん杖を!」
「守護の光よ!」
イルマが杖を地につけると、杖を中心に三人を淡い光の壁が包み込む。
それと同時に轟音とともに強い光を発し、リンドブルムの両手から幾筋もの雷撃が放たれた。
何かが爆散する音。残骸が降り注ぐ音。視界を塞ぎ舞う埃。
「ひいいぃぃ!」
しばらくして視界がひらけた時、最初に出たのはヴィルヘルミーネの悲鳴であった。
イルマは口を閉じることを忘れたかのように、目の前を見ている。
「王子、お怪我はありませんか?」
「大事ない。少々埃をかぶった程度だ」
大事ない、その言葉通りに振る舞う二人に目の前の光景が見えていないのかと、メイドと魔法使いは思った。
屋敷のスライムがいたであろう辺りは吹き飛び、建物が傾いている。
「スライムの核がどうなったか確認するぞ」
「屋敷があの状態じゃ、いつ崩れるかわかりません。俺が行きます。王子はお待ち下さい」
目の前のことなど何事も無いかのように、バルトロスは傾いた屋敷へと向かっていく。
「二人共、怪我はしておらぬか?」
「は、い。だいじょう、ぶです」
「ヴィルヘルミーネ、あのスライム以外に危険なものはないであろうな」
「はい、はいいっ! 今はあのスライム以外研究してはおりません!」
ならば良い、と屋敷の中を調べるバルトロスを見守る。
「王子様、今のは何なんですか?」
「ハッハッハ、雷を撃ち出したのだ。これが色々と使えて便利でな」
目の前の惨状を見て呆気にとられているイルマへ、笑い声混じりにリンドブルムは答える。
「他にも後二つばかり似たようなことは出来るのだが、まあそちらは機会があれば見せよう」
建物を吹き飛ばすような芸当は見たくない、そうは思っても口には出さないイルマであった。
その後ろではヴィルヘルミーネが震え、静かに涙を流していた。
「おおぅっ! 何故泣いておるのだ?!」
「あれが、ワタシの未来の姿なんですね。王子様の雷で裁かれて、灰になるんですね」
「な、なる訳がなかろう。そなたの処遇は裁判官達の判決に従う。私自らが私情で手を下すことはないと知れ」
「そうですよ。王子様、一度だって暴力は振るわれてなかったじゃないですか。怒ってたから怒鳴りはしましたけど、乱暴なことはしなかったじゃないですか。」
「じゃあワタシは許していただ」
「それとこれとは話が別だ」
項垂れるヴィルヘルミーネ。
そんなやり取りをしていると、真っ黒に焦げた鍋を持ってバルトロスがやってくる。
「ヴィルヘルミーネさん、使っていたのはこの鍋で間違いないですか?」
「ひっ、た、たぶん。い、いえ、間違いありません!」
焦げた鍋をリンドブルムが覗き込む。
「その鍋で間違いないのか、バルトロス」
「恐らく。焦げちゃいますが、あの嫌な匂いがかすかに残ってます。ヴィルヘルミーネさん、あの屋敷に他に鍋のたぐいはありましたか」
「いいえ、私が持ち込んだその鍋だけでございますです」
リンドブルムとバルトロスは顔を見合わせ、頷き合う。
「であれば、この件はヴィルヘルミーネをギルドに引き渡して終わりだな」
「ヴィルヘルミーネさん、大人しく来てくれますね」
立ち上がり、黙って頷く魔法使い。
「ではギルドへ戻るぞ」
まだ太陽は高い位置に輝いてきた。
-それからしばらくして-
王宮内、リンドブルムは自身の執務机で大量の本と書類に囲まれていた。
すでに冷たく冷めた茶を喉に流し込み、手元の書類に赤いインクで何かを書き込み、未決と書かれた書類入れに入れる。
空になったティーカップにイルマが次の茶を注ぎ、砂糖を二杯入れた物を王子の手の届く場所に置く。
入れられたばかりの温かい茶を一口飲み次の書類を手に取った時、扉をノックする音が聞こえた。
「入れ」
「失礼いたします。殿下、魔法省より提案書と苦情の陳述書が来ております」
書類の束を持ったバルトロスが部屋に入ってくる。
「ま、た、かぁぁあっ! 街道整備計画関連で忙しいというのに、今度は何をしでかしたのだっ!」
「魔法省から相変わらずの異臭の苦情、魔法薬生成に関する材料の過剰使用及び再予算申請、大きいところでは研究施設の建設計画申請……いつもどおりですね」
頭を抱えるリンドブルム。
「ヴィルヘルミーネさん、相変わらずなんですね」
「相変わらずどころか魔法省の官僚達も、そろそろ我慢の限界に来ています。もう一度王国裁判所の最高裁判官、法務省大臣、魔法省大臣を招集いたしますか」
一口茶を飲み、溜め息を吐く。
「そうしたいところではあるが、すでに裁判で出た判決を私が覆す訳にもいかん」
「実質的な恩赦でしたからね」
「すいません、わたし裁判の結果しか知らないんですけど、結局どういうことだったんですか?」
二人が大きな溜め息を吐く。
「本来は投獄の予定だったんです。ですが、妃殿下の言葉がありまして」
「私の愛する子、リンドブルムを授かるきっかけとなったのは確かです。その者へは我が子リンドブルムを人の姿へ戻す為に、その知識と時間を捧げることを贖罪とすることを判決として希望します、と仰られてな。陛下もその言葉に賛同されたのだ。そうなっては裁判官も下す判決は決まってしまおうよ」
リンドブルムは頭を抱えるが、すぐに頭を起こす。
「バルトロス、この臭いは」
「ええ、来ますね」
顔をしかめるリンドブルムとバルトロス。イルマには何のことかわからなかったが、少し間をおいて二人の顔をしかめさせた原因が部屋をノックする。
「王子様、王子様! お時間よろしいでしょうか」
扉を何度もノックする音が響く。
「あの声ヴィルヘルミーネさん、ですよね?」
「イルマさん、部屋中の窓を開けます。手伝ってください」
部屋の主人が入室許可を出す前に、二人の従者は部屋の窓を開けて回る。
「入って構わぬ」
「失礼いたします」
大小何本もの瓶を入れたバスケットを手に、ヴィルヘルミーネが部屋に入ってくる。
「王子様、王子様を人の姿に戻す薬をいくつか作りましたので、早速お試しいただければと」
「試すどうこうの前に、その異臭は何だ。人が口にするものの臭いではないだろう!」
「王子様、遠い国には良薬口に苦しという言葉があるそうです。ですからこれも」
「苦い以前に臭すぎるっ! せめて飲む気が湧く薬を作ってくれっ! 後、何かで試したのだろうなっ!」
どこか熱っぽい視線でリンドブルムに異臭を放つ瓶を渡そうとするが、当の王子は目を白黒させて椅子に座ったまま後ずさる。
「確かに実験はしていませんが、理論上はどの薬も王子様を人の姿に戻せるはずです」
「はず、で毒かもわからぬものを人に飲ませようとするではない!」
「そのようなことを仰らず、一口、いいえ一舐めで構いません。試していただけませんか?」
「断る! せめて臭いを我慢できるものを作ってから持って来ぬか」
鼻を塞ぎ、押し出される瓶を押し返す。
「ヴィルヘルミーネさん、なんだか熱心ですよね」
「陛下と妃殿下からの直接のご命令ですからね。立場的にも在野の魔法使いから魔法省の官僚への出世、気合いの一つもいれて頂かないと困ります」
ヴィルヘルミーネから王子へ向けられる視線を注視するイルマ。仕事とは違う何かが含まれていることを感じずにはいられない。
「ええい、いいから研究所へ戻れ!」
「そんな王子様、せめてどれか一つ試すだけでも」
バルトロスに袖を引かれ、ヴィルヘルミーネが部屋の外へ連れ出されて行く。
その様子を見たイルマは、リンドブルムへ一礼するとバルトロスと入れ違いで部屋の外へ飛び出して行った。
「わたし、確認してきます!」
「イルマそなたどこへ」
イルマはリンドブルムの執務室を飛び出し、ヴィルヘルミーネの後を追う。
「あの、ヴィルヘルミーネさん」
「あら、何が用かしら? メイドさん」
首を傾げ、イルマを見るヴィルヘルミーネ。
「ちょっと、いいでしょうか」
「ごめんなさいね。ワタシ、王子様を人に戻す薬を作るのに忙しいの」
「その事というか、それに近いことで聞きたいことがあるんです」
「はあ、何? ワタシはアナタと特に話しはないのだけど」
自分の髪を弄りながら、息を一つ吐くヴィルヘルミーネ。
「ズバリで聞いちゃいますけど、ヴィルヘルミーネさん、王子様のこと好きですか?」
一瞬ポカンと目を開けるが、ヴィルヘルミーネの目は熱を持ち、頬が僅かに赤く染まる。
「好きというか、王子様の人の顔が見たいの。だって王様も王妃様も、もうお年だというのにあんなにお美しい顔立ちなんだもの。きっと王子様も、人の姿になればお美しいお顔のはず。ワタシ、それが見たくて見たくて」
「顔、ですか。王子様の」
夢を見ているような、熱に浮かされているような表情で口を開く。
「ワタシ、綺麗な顔の男性を見るのが大好きなの。王子様がどんなお綺麗なお顔か想像するだけで、胸が高鳴ってしょうがないの!」
「あ、そうですか」
「バルトロス、今すぐヴィルヘルミーネを追い出す方法があると思うか」
「陛下と妃殿下がお決めになられたことですからね、難しいと思います」
男二人、壁に耳をつけ向こうにいる二人の会話を聞いていた。
「まあでも、良かったじゃないですか。どうあれご婦人から好意を持たれているんですから」
「良くない! 父上と母上の顔を見て人の顔を勝手に想像しているだけの、ただの面食いではないか」
その場にしゃがみ、声にならない声を漏らすリンドブルム。
「私がご婦人に求めているものは、そなたも知っているであろう」
「王子を愛してくれること、ですよね」
「そうだ、私のこの竜の姿を見ても愛してくれる人を求めているのだ。容姿の良し悪しで判断するような者は求めていないし、私にだってその程度の選択権はあっても良いだろう」
そんなリンドブルムを見て、バルトロスは顎に手を当て考える。
「恋愛に関しては双方の感情あってのものですから、王子のその考えを否定するつもりはありません。けれど、それ以上に思うところがありまして」
バルトロスがしゃがみ、リンドブルムに視線を合わせる。
「ヴィルヘルミーネさん、いまおいくつだと思います?」
「へ? ……あ」
「王子がお産まれになる前に、妃殿下にお会いになられているんです。しかも王立魔法学園卒業名簿に、王子が生まれる前の年に同名の卒業生がいました」
「それは卒業時の年令によっては、母上より年上ということにならんか?」
「なるんです。なのにあの見た目、どういうことなんでしょうね」
沈黙が重くリンドブルムにのしかかる。
「……まず魔法省の案件を片付ける。担当者を呼んでくれ」
「畏まりました」
今は仕事のことだけ考えて、面倒になりそうなことは考えるのをやめた。
「そっか、服と誓って鎧じゃ洗濯できませんもんね」
「水でもぶっ掛けりゃいいんですけど、その後乾かしたり錆止めで磨いたりが手間なんですよね」
軽い世間話のようなことを話しながら、騎士のバルトロスとメイドのイルマは王子リンドブルムのいる屋敷の厨房へと向かう。
「王子、少しは落ち着きましたか?」
「二人共どこへ行っていたのだ。」
魔法使いヴィルヘルミーネを前に、怒りの形相で立っていた。
「王子様、まだ怒ってます、よね?」
「これでも言いたいことは言って、少しは落ち着いたぞ」
竜は荒い鼻息を放つ。
「まあ、吼えてないだけ落ち着いてはいるでしょう。で、何かわかったことはありましたか?」
「無い!」
「本当に申し訳ございませんです!」
土下座をするヴィルヘルミーネ。
「王子様を人に変える方法はそちらの娘さんにお教えした、生まれ変わりの魔法だけなのです。ですからここでこうして、他に方法がないか研究していた次第でございますです」
何度も申し訳ございませんと土下座を繰り返す姿は、哀れや滑稽を通り越し、そろそろ鬱陶しいに片足をかけていた。
「もう良い、同じ言葉は聞き飽きた。バルトロスよ、この者をギルドへ連れて行き引き渡すぞ」
「お、王子様、ワタシ、どうなるん、ですか?」
「国の管理する建屋に不法侵入したのだ、王国法で裁かれるに決まっているであろう」
体が振るえ始めるヴィルヘルミーネ。
「勿論、我が母である妃殿下及び私に対して呪いをかけた件に関しても裁判にかける。覚悟はしておくのだな」
魔法使いの顔色がどんどん青くなっていく。
「どど、ど、どうか。どうかご恩赦を! ワタシ、ワタシ必ず王子様を人の姿にいたしますので!」
「それは一体、後何年先の話しだ? あの拷問まがいの方法ですら、見つけるのに私がこの歳になるまでかかったのであろう」
バルトロスが溜め息を一つ吐く。
「このままじゃ話しが終わりそうにありませんね。とりあえず、ヴィルヘルミーネさんを一度ギルドへ連れて行って、身分を預けておきません」
「バルトロスの言うとおりであるな。ヴィルヘルミーネよ、もし自分のやったことを少しでも償う気があるのであれば、大人しく私達についくるのだ」
「はいぃ! 逆らいませんし大人しくいたします。ですから、ですからどうか、どうかご恩赦を!」
土下座を繰り返すヴィルヘルミーネに、流石にリンドブルムも呆れ始めていた。感情を怒りにませているより、法で裁いた方が楽だと判断したからだ。
「では、一度冒険者ギルドへ行くぞ」
「縛らなくてもよろしいんですか?」
「これだけ頭を下げて逃げるようなら、いくらご婦人とて私も容赦はせん。それは本人が一番感じておるだろう」
悲鳴に近い声で肯定の言葉を繰り返す魔法使いを見て、確かに、とバルトロスは納得する。
二人がヴィルヘルミーネの事を話している間、イルマの視点は一箇所に注がれていた。
「ところで王子様、バルトロス卿」
「どうしたイルマよ」
「あのお鍋の中、溢れてきてません?」
「あ、火消すの忘れてた」
全員の視線が竈門で煮られている鍋に集まる。
確かにイルマの言うように、鍋の中から濁った黄色の液体が少しずつ、こぼれ、溢れ出していた。
「まず聞くが、あれは何なのだ?」
「王子様を人に戻すために、体を溶かして元に戻すスライムが作れないか実験していました。」
「そうか、あれはスライムか……待て、ワタシをあれに溶かさせると言ったか?」
土下座と謝罪を繰り返すヴィルヘルミーネ。
「王子! 今はそんなことより、あれをどうするか考えましょう!」
バルトロスが剣を抜きリンドブルムの横に並ぶ。
リンドブルムはヴィルヘルミーネの腕を引いて立たせると、自分の後ろに回らせ、剣を構える。
「イルマ、その者が逃げぬよう見張っていてくれ」
前に立つ二人は互いに目配せし、鍋から溢れ続けるスライムとの距離を測る。
「スライムなどいても百害あって一利なし、ここで討伐するぞバルトロスっ!」
「了解です! スライムなら核を破壊すれば自壊しますから、巨大になる前にやれば剣でも倒せます」
「その核なんですけど」
二人の後ろから恐る恐るといった様子でヴィルヘルミーネが発言する。
「多分そのスライムの核、お鍋の中です」
二人がスライムを見る。溢れ出た黄色の粘液は竈門を覆い、火を消し、さらに大きさを増やしていた。その中心で鍋が浮いている。
「なんだとぉぉっ!」
「あれじゃあ、俺の剣じゃ斬れそうにないですね」
竈門を覆ったスライムの体が触手のように粘液を伸ばし、王子と騎士を捕食しようとしてくる。
その動き自体は緩慢としたものであるため、二人は難なく切り払って行くが、竈門を包む粘液は体積を増し、扉近くにまで迫ってくる。
「仕方ない、外に撤退する。バルトロス、彼女達を連れて行けっ!」
「了解です! さあ、お二人ともこちらです。」
イルマと逃げずにいたヴィルヘルミーネを連れ、バルトロスが屋敷の外へ連れ出して行く。
それを確認するとリンドブルムも厨房から飛び出し、外を目指して屋敷の中を走る。
後ろを振り返ると、部屋の中から濁った黄色の粘液が溢れ出てくるのが見えた。移動が早いのではない、膨張するのが早いのだ。
屋敷の外に飛び出ると三人の前に立ち剣を収め、両手を屋敷に向けて突き出す。
「バルトロス、あの屋敷諸共スライムを吹き飛ばすっ! 二人のことは頼むっ!」
「二人共俺の後ろに回って、目を閉じてください! イルマさん、杖を使う準備を。私が合図したら杖を使ってください!」
突き出したリンドブルムの両手が発光し、雷光を纏っていく。両手の間を雷が走る。
「撃つぞっ!」
「イルマさん杖を!」
「守護の光よ!」
イルマが杖を地につけると、杖を中心に三人を淡い光の壁が包み込む。
それと同時に轟音とともに強い光を発し、リンドブルムの両手から幾筋もの雷撃が放たれた。
何かが爆散する音。残骸が降り注ぐ音。視界を塞ぎ舞う埃。
「ひいいぃぃ!」
しばらくして視界がひらけた時、最初に出たのはヴィルヘルミーネの悲鳴であった。
イルマは口を閉じることを忘れたかのように、目の前を見ている。
「王子、お怪我はありませんか?」
「大事ない。少々埃をかぶった程度だ」
大事ない、その言葉通りに振る舞う二人に目の前の光景が見えていないのかと、メイドと魔法使いは思った。
屋敷のスライムがいたであろう辺りは吹き飛び、建物が傾いている。
「スライムの核がどうなったか確認するぞ」
「屋敷があの状態じゃ、いつ崩れるかわかりません。俺が行きます。王子はお待ち下さい」
目の前のことなど何事も無いかのように、バルトロスは傾いた屋敷へと向かっていく。
「二人共、怪我はしておらぬか?」
「は、い。だいじょう、ぶです」
「ヴィルヘルミーネ、あのスライム以外に危険なものはないであろうな」
「はい、はいいっ! 今はあのスライム以外研究してはおりません!」
ならば良い、と屋敷の中を調べるバルトロスを見守る。
「王子様、今のは何なんですか?」
「ハッハッハ、雷を撃ち出したのだ。これが色々と使えて便利でな」
目の前の惨状を見て呆気にとられているイルマへ、笑い声混じりにリンドブルムは答える。
「他にも後二つばかり似たようなことは出来るのだが、まあそちらは機会があれば見せよう」
建物を吹き飛ばすような芸当は見たくない、そうは思っても口には出さないイルマであった。
その後ろではヴィルヘルミーネが震え、静かに涙を流していた。
「おおぅっ! 何故泣いておるのだ?!」
「あれが、ワタシの未来の姿なんですね。王子様の雷で裁かれて、灰になるんですね」
「な、なる訳がなかろう。そなたの処遇は裁判官達の判決に従う。私自らが私情で手を下すことはないと知れ」
「そうですよ。王子様、一度だって暴力は振るわれてなかったじゃないですか。怒ってたから怒鳴りはしましたけど、乱暴なことはしなかったじゃないですか。」
「じゃあワタシは許していただ」
「それとこれとは話が別だ」
項垂れるヴィルヘルミーネ。
そんなやり取りをしていると、真っ黒に焦げた鍋を持ってバルトロスがやってくる。
「ヴィルヘルミーネさん、使っていたのはこの鍋で間違いないですか?」
「ひっ、た、たぶん。い、いえ、間違いありません!」
焦げた鍋をリンドブルムが覗き込む。
「その鍋で間違いないのか、バルトロス」
「恐らく。焦げちゃいますが、あの嫌な匂いがかすかに残ってます。ヴィルヘルミーネさん、あの屋敷に他に鍋のたぐいはありましたか」
「いいえ、私が持ち込んだその鍋だけでございますです」
リンドブルムとバルトロスは顔を見合わせ、頷き合う。
「であれば、この件はヴィルヘルミーネをギルドに引き渡して終わりだな」
「ヴィルヘルミーネさん、大人しく来てくれますね」
立ち上がり、黙って頷く魔法使い。
「ではギルドへ戻るぞ」
まだ太陽は高い位置に輝いてきた。
-それからしばらくして-
王宮内、リンドブルムは自身の執務机で大量の本と書類に囲まれていた。
すでに冷たく冷めた茶を喉に流し込み、手元の書類に赤いインクで何かを書き込み、未決と書かれた書類入れに入れる。
空になったティーカップにイルマが次の茶を注ぎ、砂糖を二杯入れた物を王子の手の届く場所に置く。
入れられたばかりの温かい茶を一口飲み次の書類を手に取った時、扉をノックする音が聞こえた。
「入れ」
「失礼いたします。殿下、魔法省より提案書と苦情の陳述書が来ております」
書類の束を持ったバルトロスが部屋に入ってくる。
「ま、た、かぁぁあっ! 街道整備計画関連で忙しいというのに、今度は何をしでかしたのだっ!」
「魔法省から相変わらずの異臭の苦情、魔法薬生成に関する材料の過剰使用及び再予算申請、大きいところでは研究施設の建設計画申請……いつもどおりですね」
頭を抱えるリンドブルム。
「ヴィルヘルミーネさん、相変わらずなんですね」
「相変わらずどころか魔法省の官僚達も、そろそろ我慢の限界に来ています。もう一度王国裁判所の最高裁判官、法務省大臣、魔法省大臣を招集いたしますか」
一口茶を飲み、溜め息を吐く。
「そうしたいところではあるが、すでに裁判で出た判決を私が覆す訳にもいかん」
「実質的な恩赦でしたからね」
「すいません、わたし裁判の結果しか知らないんですけど、結局どういうことだったんですか?」
二人が大きな溜め息を吐く。
「本来は投獄の予定だったんです。ですが、妃殿下の言葉がありまして」
「私の愛する子、リンドブルムを授かるきっかけとなったのは確かです。その者へは我が子リンドブルムを人の姿へ戻す為に、その知識と時間を捧げることを贖罪とすることを判決として希望します、と仰られてな。陛下もその言葉に賛同されたのだ。そうなっては裁判官も下す判決は決まってしまおうよ」
リンドブルムは頭を抱えるが、すぐに頭を起こす。
「バルトロス、この臭いは」
「ええ、来ますね」
顔をしかめるリンドブルムとバルトロス。イルマには何のことかわからなかったが、少し間をおいて二人の顔をしかめさせた原因が部屋をノックする。
「王子様、王子様! お時間よろしいでしょうか」
扉を何度もノックする音が響く。
「あの声ヴィルヘルミーネさん、ですよね?」
「イルマさん、部屋中の窓を開けます。手伝ってください」
部屋の主人が入室許可を出す前に、二人の従者は部屋の窓を開けて回る。
「入って構わぬ」
「失礼いたします」
大小何本もの瓶を入れたバスケットを手に、ヴィルヘルミーネが部屋に入ってくる。
「王子様、王子様を人の姿に戻す薬をいくつか作りましたので、早速お試しいただければと」
「試すどうこうの前に、その異臭は何だ。人が口にするものの臭いではないだろう!」
「王子様、遠い国には良薬口に苦しという言葉があるそうです。ですからこれも」
「苦い以前に臭すぎるっ! せめて飲む気が湧く薬を作ってくれっ! 後、何かで試したのだろうなっ!」
どこか熱っぽい視線でリンドブルムに異臭を放つ瓶を渡そうとするが、当の王子は目を白黒させて椅子に座ったまま後ずさる。
「確かに実験はしていませんが、理論上はどの薬も王子様を人の姿に戻せるはずです」
「はず、で毒かもわからぬものを人に飲ませようとするではない!」
「そのようなことを仰らず、一口、いいえ一舐めで構いません。試していただけませんか?」
「断る! せめて臭いを我慢できるものを作ってから持って来ぬか」
鼻を塞ぎ、押し出される瓶を押し返す。
「ヴィルヘルミーネさん、なんだか熱心ですよね」
「陛下と妃殿下からの直接のご命令ですからね。立場的にも在野の魔法使いから魔法省の官僚への出世、気合いの一つもいれて頂かないと困ります」
ヴィルヘルミーネから王子へ向けられる視線を注視するイルマ。仕事とは違う何かが含まれていることを感じずにはいられない。
「ええい、いいから研究所へ戻れ!」
「そんな王子様、せめてどれか一つ試すだけでも」
バルトロスに袖を引かれ、ヴィルヘルミーネが部屋の外へ連れ出されて行く。
その様子を見たイルマは、リンドブルムへ一礼するとバルトロスと入れ違いで部屋の外へ飛び出して行った。
「わたし、確認してきます!」
「イルマそなたどこへ」
イルマはリンドブルムの執務室を飛び出し、ヴィルヘルミーネの後を追う。
「あの、ヴィルヘルミーネさん」
「あら、何が用かしら? メイドさん」
首を傾げ、イルマを見るヴィルヘルミーネ。
「ちょっと、いいでしょうか」
「ごめんなさいね。ワタシ、王子様を人に戻す薬を作るのに忙しいの」
「その事というか、それに近いことで聞きたいことがあるんです」
「はあ、何? ワタシはアナタと特に話しはないのだけど」
自分の髪を弄りながら、息を一つ吐くヴィルヘルミーネ。
「ズバリで聞いちゃいますけど、ヴィルヘルミーネさん、王子様のこと好きですか?」
一瞬ポカンと目を開けるが、ヴィルヘルミーネの目は熱を持ち、頬が僅かに赤く染まる。
「好きというか、王子様の人の顔が見たいの。だって王様も王妃様も、もうお年だというのにあんなにお美しい顔立ちなんだもの。きっと王子様も、人の姿になればお美しいお顔のはず。ワタシ、それが見たくて見たくて」
「顔、ですか。王子様の」
夢を見ているような、熱に浮かされているような表情で口を開く。
「ワタシ、綺麗な顔の男性を見るのが大好きなの。王子様がどんなお綺麗なお顔か想像するだけで、胸が高鳴ってしょうがないの!」
「あ、そうですか」
「バルトロス、今すぐヴィルヘルミーネを追い出す方法があると思うか」
「陛下と妃殿下がお決めになられたことですからね、難しいと思います」
男二人、壁に耳をつけ向こうにいる二人の会話を聞いていた。
「まあでも、良かったじゃないですか。どうあれご婦人から好意を持たれているんですから」
「良くない! 父上と母上の顔を見て人の顔を勝手に想像しているだけの、ただの面食いではないか」
その場にしゃがみ、声にならない声を漏らすリンドブルム。
「私がご婦人に求めているものは、そなたも知っているであろう」
「王子を愛してくれること、ですよね」
「そうだ、私のこの竜の姿を見ても愛してくれる人を求めているのだ。容姿の良し悪しで判断するような者は求めていないし、私にだってその程度の選択権はあっても良いだろう」
そんなリンドブルムを見て、バルトロスは顎に手を当て考える。
「恋愛に関しては双方の感情あってのものですから、王子のその考えを否定するつもりはありません。けれど、それ以上に思うところがありまして」
バルトロスがしゃがみ、リンドブルムに視線を合わせる。
「ヴィルヘルミーネさん、いまおいくつだと思います?」
「へ? ……あ」
「王子がお産まれになる前に、妃殿下にお会いになられているんです。しかも王立魔法学園卒業名簿に、王子が生まれる前の年に同名の卒業生がいました」
「それは卒業時の年令によっては、母上より年上ということにならんか?」
「なるんです。なのにあの見た目、どういうことなんでしょうね」
沈黙が重くリンドブルムにのしかかる。
「……まず魔法省の案件を片付ける。担当者を呼んでくれ」
「畏まりました」
今は仕事のことだけ考えて、面倒になりそうなことは考えるのをやめた。
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