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第7章 二度目の夏休み、再び帝国へ
第160話 侯爵を説得する
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「この馬鹿者!たいした護衛も付けずに瘴気の森、しかもゴロツキ共が集まっているのがわかっている場所へ行っておっただと。おまえは自分の立場がわかっておるのか、皇太子妃としての自覚が足らんぞ!」
「ううううっ…。叔父様、申し訳ございません…。」
激オコの侯爵にミルトさんは頭が上がらない様子だった。こんなミルトさんは初めて見たよ。
「侯爵様、そんなに怒らないでください。
ミルトさんはわたし達が子供だけで瘴気の森に行こうとしたので心配して付いて来てくれたのです。」
「ん?君は初めて見る顔だな。ミルト、この子たちは何なのだ、何故ここにいる?」
「そういえば叔父様には紹介する機会がございませんでしたね。
この二人は、ティターニアさんとミーナさん、フローラの命の恩人です。
ティターニアさんが我が国に精霊の恩恵を再びもたらしてくれたのですよ。」
「おお、君がティターニア君か、兄上から君の事は色々聞かされている。
我が国は大分君に世話になっているようだね。私からも感謝する。
それで、君たち子供だけで瘴気に森に行こうしたと言うのは穏やかではないね。
どういうことか聞かせてもらえるかい。」
侯爵に促されて、わたしは昨年帝国の宮殿で見た瘴気の森の木で作られた調度品が気になってどこで木を伐っているのかを調べたこと、伐採現場に行き当たって非人道的な行いを目にしたけど帝国の法では裁けないと聞いて悔しい思いをしたことなどを話した。
「その村では若い人を集めて魔獣狩りをさせていたのです。
それで、倒した魔獣から採取された魔晶石は倒した人の物になる仕組みだったので人によってはかなり稼いだようでした。
もちろん、そういう人ばかりでなく、大怪我をしたり亡くなったりする人も多かったようなのですが。
その村で魔獣狩りをしている人を見て思い出したのです、ヴェストエンデに集まってくるゴロツキの話と魔晶石の不正流通の話を。ヴェストエンデから来るゴロツキがこの町で羽振り良く遊んでいくと言う噂も聞いていたものですから。」
「それで君はそれを確認するために瘴気の森まで足を運んだと言うのかい?
おい、ミルト、おまえは精霊様からお預かりした大切な子が危ないことをしようとしているのに何故止めなかった。
ティターニア君もそういうときには大人を頼りなさい、君は大きな力を持っているかもしれないがまだ小さな子供なのだから。
自分達で瘴気の森まで行くなどとんでもないことだ。」
侯爵は凄く思いやりのある方のようだ、優しくわたしを諌めてくれる。
でも、やっぱりわたし達が出て行かなければいけない気がするんだよね。
「侯爵様、お気遣い有り難うございます。
でも、あの場所には瘴気に中てられた人や魔獣に怪我を負わされた人など動けない人がたくさんいると思うのです。
その中には一刻も早く治療しないといけない人もいるでしょう。特に瘴気中毒の人はわたし達じゃないと治せないのです。
あの場所からここまで馬車だと十五日以上かかります、わたしが行けば二日もかからないのです。」
わたしの言葉を黙って聞いていた侯爵が
「なんという慈悲深い考え方なことか、とても十にも届かない幼子の言葉とは思えない。
これも、精霊様の薫陶の賜物か…。
わかりました、不肖ながらこの私がお供しますぞ。」
と言った。いきなり侯爵が一緒に行くって…。
「叔父様、それはいけません。
叔父様はこの町の領主、叔父様が兵を率いてヴェストエンデ領に入れば諍いのもとになります。
あくまで王族である私の命に基づいて兵を出したと言う形でなくてはいけません。
おそらく病人、怪我人の治療のために私とヒカリ、スイの力が必要になるでしょう。
私がターニャちゃん、ミーナちゃんに同行します。」
「さすがに皇太子妃であるミルトを瘴気の森へ行かせるのは好ましくないが、ミルトの言うことも一理ある。
では、私はミルト皇太子妃の命を受けて指揮下で働くために同行するとしましょう。」
足りないのは捕縛したり、物証を確保したり、ゴロツキを退去させたりするため人手であって、指揮する人が増えても困るのだけど…。
結局、侯爵も同行することになったみたい。
今回は荒事になる危険性があるのでハイジさんにもここに残ってもらうことにした。
ハイジさんはあの施設も帝国の商会が関わっているのではないかと疑っているので同行したいようであったが、幹部は必ず捕縛してハイジさんも尋問に参加できるようにするから我慢してと説得したよ。
もちろん、フローラちゃんとハンナちゃんもお留守番だ。
わたし達の魔導車にフローラちゃんの魔導車を加えた四台にノイエシュタット領の騎士を二十人ほど乗せてわたし達は瘴気の森へ引き返すのだった。
**********
夜通し走り続けて翌日の朝、瘴気の森に一番近い村に着くと既に侯爵が前もって派遣してくれた魔導車二台が到着しており魔導通信機で打ち合わせした通りに合流することができた。
侯爵の魔導車二台には二十名ほどの兵士を乗せており、グロウさんに預けた近衛騎士とあわせて五十名ほどの人手を確保することができた。
わたし達はそのまま施設の近くで張り込みをしていたグロウさんのもとへ急いだ。
「ミルト様、こんなに速くお戻りになるとは思いも寄りませんでした。
援軍も多数用意できたようですね。
こちらは今のところ動きは見られません、あれから人の出入りはありませんでした。」
グロウさんの手短な報告を受けたわたし達は早速施設を接収に取り掛かることにした。
「ううううっ…。叔父様、申し訳ございません…。」
激オコの侯爵にミルトさんは頭が上がらない様子だった。こんなミルトさんは初めて見たよ。
「侯爵様、そんなに怒らないでください。
ミルトさんはわたし達が子供だけで瘴気の森に行こうとしたので心配して付いて来てくれたのです。」
「ん?君は初めて見る顔だな。ミルト、この子たちは何なのだ、何故ここにいる?」
「そういえば叔父様には紹介する機会がございませんでしたね。
この二人は、ティターニアさんとミーナさん、フローラの命の恩人です。
ティターニアさんが我が国に精霊の恩恵を再びもたらしてくれたのですよ。」
「おお、君がティターニア君か、兄上から君の事は色々聞かされている。
我が国は大分君に世話になっているようだね。私からも感謝する。
それで、君たち子供だけで瘴気に森に行こうしたと言うのは穏やかではないね。
どういうことか聞かせてもらえるかい。」
侯爵に促されて、わたしは昨年帝国の宮殿で見た瘴気の森の木で作られた調度品が気になってどこで木を伐っているのかを調べたこと、伐採現場に行き当たって非人道的な行いを目にしたけど帝国の法では裁けないと聞いて悔しい思いをしたことなどを話した。
「その村では若い人を集めて魔獣狩りをさせていたのです。
それで、倒した魔獣から採取された魔晶石は倒した人の物になる仕組みだったので人によってはかなり稼いだようでした。
もちろん、そういう人ばかりでなく、大怪我をしたり亡くなったりする人も多かったようなのですが。
その村で魔獣狩りをしている人を見て思い出したのです、ヴェストエンデに集まってくるゴロツキの話と魔晶石の不正流通の話を。ヴェストエンデから来るゴロツキがこの町で羽振り良く遊んでいくと言う噂も聞いていたものですから。」
「それで君はそれを確認するために瘴気の森まで足を運んだと言うのかい?
おい、ミルト、おまえは精霊様からお預かりした大切な子が危ないことをしようとしているのに何故止めなかった。
ティターニア君もそういうときには大人を頼りなさい、君は大きな力を持っているかもしれないがまだ小さな子供なのだから。
自分達で瘴気の森まで行くなどとんでもないことだ。」
侯爵は凄く思いやりのある方のようだ、優しくわたしを諌めてくれる。
でも、やっぱりわたし達が出て行かなければいけない気がするんだよね。
「侯爵様、お気遣い有り難うございます。
でも、あの場所には瘴気に中てられた人や魔獣に怪我を負わされた人など動けない人がたくさんいると思うのです。
その中には一刻も早く治療しないといけない人もいるでしょう。特に瘴気中毒の人はわたし達じゃないと治せないのです。
あの場所からここまで馬車だと十五日以上かかります、わたしが行けば二日もかからないのです。」
わたしの言葉を黙って聞いていた侯爵が
「なんという慈悲深い考え方なことか、とても十にも届かない幼子の言葉とは思えない。
これも、精霊様の薫陶の賜物か…。
わかりました、不肖ながらこの私がお供しますぞ。」
と言った。いきなり侯爵が一緒に行くって…。
「叔父様、それはいけません。
叔父様はこの町の領主、叔父様が兵を率いてヴェストエンデ領に入れば諍いのもとになります。
あくまで王族である私の命に基づいて兵を出したと言う形でなくてはいけません。
おそらく病人、怪我人の治療のために私とヒカリ、スイの力が必要になるでしょう。
私がターニャちゃん、ミーナちゃんに同行します。」
「さすがに皇太子妃であるミルトを瘴気の森へ行かせるのは好ましくないが、ミルトの言うことも一理ある。
では、私はミルト皇太子妃の命を受けて指揮下で働くために同行するとしましょう。」
足りないのは捕縛したり、物証を確保したり、ゴロツキを退去させたりするため人手であって、指揮する人が増えても困るのだけど…。
結局、侯爵も同行することになったみたい。
今回は荒事になる危険性があるのでハイジさんにもここに残ってもらうことにした。
ハイジさんはあの施設も帝国の商会が関わっているのではないかと疑っているので同行したいようであったが、幹部は必ず捕縛してハイジさんも尋問に参加できるようにするから我慢してと説得したよ。
もちろん、フローラちゃんとハンナちゃんもお留守番だ。
わたし達の魔導車にフローラちゃんの魔導車を加えた四台にノイエシュタット領の騎士を二十人ほど乗せてわたし達は瘴気の森へ引き返すのだった。
**********
夜通し走り続けて翌日の朝、瘴気の森に一番近い村に着くと既に侯爵が前もって派遣してくれた魔導車二台が到着しており魔導通信機で打ち合わせした通りに合流することができた。
侯爵の魔導車二台には二十名ほどの兵士を乗せており、グロウさんに預けた近衛騎士とあわせて五十名ほどの人手を確保することができた。
わたし達はそのまま施設の近くで張り込みをしていたグロウさんのもとへ急いだ。
「ミルト様、こんなに速くお戻りになるとは思いも寄りませんでした。
援軍も多数用意できたようですね。
こちらは今のところ動きは見られません、あれから人の出入りはありませんでした。」
グロウさんの手短な報告を受けたわたし達は早速施設を接収に取り掛かることにした。
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