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最終決戦その3

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 カチカチ
 「一応警告するわ。この力は今の貴方じゃ一度しか使えない。それどころかこのタイムスリップが終わったら魔力が尽きて魔力欠乏症になるかもしれない。それでもどうか、シルクロードに勝ってね
 カチン
 「リーリエ!行くよ......って、えっ⁉︎なんで入れ替わってるの⁉︎」
 パキーン
 「ゲボゲボ」
 「リーリエ⁉︎リーリエ大丈夫なの?」
 「へ、平気」
 キーン
 「ゔっ!」
 「ほ、本当に大丈夫なの?」
 「大丈夫って言っているじゃない」
 今此処で倒れたらもうシルクロードに勝てない。勝たなきゃいけないの‼︎
 「ぐふふふ。まさかタイムスリップを使えるとはなぁ......少し驚いたぞ」
 「タイムスリップ⁉︎」
 「リーリエが禁断の魔術を二つも......」
 「違うわ。私は使ってない。使いこなせない」
 「じゃあ誰が......」
 「リセット前のリーリエが使ったの。もう一度やり直すチャンスをくれたの」
 「......」
 「いくらやっても同じことだ。さっさと諦めて死ね」
 「諦める?諦めないって決めたの。ううん。私が諦めきれないの!」
 「ロケットランチャーにバズーカが数え切れないほどあるぞ」
 「す、すごい」
 ズキッ
 「ぐっ!」
 「これ以上魔法を使えばお前は死ぬぞ」
 「......っ⁉︎」
 「リーリエ。お前はもう魔力欠乏症なのか?」
 コクッ
 「だったらやめろ!無理して使えばマジで死ぬぞ!」
 「貴方達こそなにをしているの?」
 「え?」
 「目の前に敵が居るのなら倒す。町の人々の平和を脅かす敵が居るなら殺してでも止めるものでしょ?今までなにを学んだの?今貴方達が心配するのは私じゃなくて町の人々でしょ⁇」
 「......」
 じわっ
 「リーリエ......め、目から血が出てる」
 ダッ
 「お、おい‼︎無防備に突っ込んだら......」
 シルクロードのバリアを壊すには距離を詰めるしかない。今は精霊化できない。今すれば気を失う。変えるって決めたの。このバッドエンドを変えたい。誰も苦しくない幸せな世界に変えるんだから!
 「この距離なら!」
 ドーン
 「愚かな。そんな攻撃で俺のバリアは壊れな......」
 ピキッ
 「は?今ヒビが入ったのか⁇」
 そんな馬鹿な。何百年もかけて作ったバリアだぞ⁉︎それなのにたった一撃でヒビが割れたのか?
 「バリアにヒビが入ってる⁉︎」
 ドサッ
 「リーリエ⁉︎」
 「はぁはぁ......」
 やっぱり精霊化しなきゃ倒せない。あれだけの短距離だったのにバリアを破壊できなかった。精霊化なら破壊できたかもしれないのに......。
 「一度だけ。精霊化の影響を無くしてあげるわ」
 「......」
 またこの声。一体誰が喋っているの?
 「まだ負けない。負けていられない!」
 「この状況で精霊化⁇」
 「目から血を流している。かなり限界だ。いや限界なんてもうとっくに超えているのに......まだ精霊化する力が残っているのか?」
 「リーリエ......」
 「皆んな。リーリエをサポートするぞ。今此処を離れたら町の皆んなが危うい。此処で守株するぞ‼︎」
 「うん」
 「おお!」
 「ああ」
 「......リーリエ」
 あまり無理をさせたくない。リーリエの気持ちを尊重するならこのまま戦わせるべきなのはわかっている。でも妹が傷付く姿は見たくないしなんだか置いて行かれるようなそんな気がする。
 「だから言ったじゃない。貴方じゃリーリエを守れない。守りきれない。私が守ってあげるわ。貴方は引っ込んでなさい」
 「......」
 心に暗い影を落とすのはリーリエだけじゃなかった。もっと早く気付いてあげられたらよかったのに。
 今でもこのことは後悔するほどだ。そう思わずにいられなかったのであった。
 
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