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1、実は転生者だったようです

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 どうやら自分は前世持ちな上に、異世界転生者だったみたいだ。

 
 思い出すきっかけとなった出来事については今はムカつきすぎて詳しいことは言いたくないけど、簡単に言うといじめのせいで頭を強く打ち、そのせいで前世を思い出してしまったという感じか。
 よくあるお約束展開って言えばそれまでだけど、まさか自分が当事者になるとは思っていなかった。
 
 まぁビックリしたけど、前世を思い出したからって「ふーん」って感じだ。
 
 なにせ生まれ変わって既に七年も経っている。
 過去の自分を思い出したとはいえ、映画を見るように流れ込んできた情報は、自分であって自分という感覚がしない。

 何ていうか……、他人の人生をフィルムを通して『知った』という感覚に近いのかも。
 おかげ実感が湧きにくい。
 ただ慣れ親しんだこの世界とは、常識も生活習慣も全く違うという点にだけは驚いてるけど。
 うん、だから記憶については別にどうでもいい。
 
 
 それよりも──……
 
 
「やっと目覚めたね、沖田真由」
 
 
 俺の前世の名前を呼んでくる、人間とは一線を画すような厳かな気配を醸し出している眼の前の美貌の主こそ、到底現実として受け止めきれない。
 光を纏うように輝く姿も、頭に直接響いてくるような美声も、異世界とはいえこんな存在を俺は今まで目にしたことがなかったんだ。
 目を見開いたまま呆然と固まる俺の姿を見て、目の前の主が笑う。
 

 
「ああ、私の事が気になってるな。そうだな──君にも理解できる言葉で呼ぶなら『神』と言えば分かるか?」

 
 俺の頭の中を覗く事が出来るのか、神がそう言ってきた。
 
 神──こういう展開ではお約束のような存在になるんだろうけど、まさか自分が本の主人公みたいな展開に巻き込まれるなんて想像もしていなかった。
 
 だってこの世界では、常に脇役。
 いじめられっ子ポジションが似合うような、ちっぽけな存在でしかなかったんだから。

 そんな情けない俺でも、もしかしたら物語の主人公みたいに、何かしらの使命を帯びて生きていく事になるんだろうか?

 ドキドキしながら見上げる俺に対して、神様は頷いてくれるどころか困ったような笑いを返してくる。

 
「うーん……ちょっと違うね。君はもう使命を終えているし、この世界も救っているよ」
 
 
 ??


「だから何もしなくていいし、特に使命もないんだ」
 
 
 意味がわからない。
 使命どころか何かした記憶さえ無いまま、すでに出涸らし状態になっているらしい。


 えっ? 

 
 本当にどういう事!?
 なら何で神様は、俺の前に現れたりしたの!?
 
 
 混乱する俺を宥めるように、神様が額に手を翳してきた。
 それだけで散らばった思考が落ち着くように鎮まる。

 
「落ち着いたな。君には知る権利があるし、礼をしなければいけない。これから順を追って説明していくからそのまま聞いてほしい」
 
 
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