「最強令嬢、ついに本気を出す!正体バレ!?偽りの令嬢、もう演じない

lilgrave

文字の大きさ
158 / 657

第158章 かつての夢は「スターになること」

第158章 かつての夢は「スターになること」

姜栩栩(ジャン・シュシュ)はまず方佑南(ファン・ヨウナン)に軽く会釈し、
次に金の腕輪が入った物証袋を持つ警官に向かって言った。
「よければ、その袋を少し貸してもらえますか?」

警官が「手続き上それは――」と言いかけた瞬間、
方佑南はためらいなく袋を受け取り、姜栩栩へ手渡した。
彼女への信頼が見て取れる。

姜栩栩は袋を受け取ると、指先を軽く湿らせて素早く符を描く。
方佑南が眉を上げる間もなく、袋は元どおり返された。
水の跡はすぐに乾き、表面に痕跡はない。
――だが、確かに何か“術”を施した気配があった。
証拠品が消えるのを防ぐためだろうか。

番組の収録中でもあり、彼は余計な詮索はせず、
「この前は……助かった」とだけ礼を言った。
あの事故から守ってくれたことへの感謝だった。

姜栩栩は微笑み、さらりと言う。
「裏で仕掛けた人物を警察が特定したら、
 担当部署の人が引き継ぎに来ます。」

その言葉で方佑南は、前回遺骨を引き取った
国家特殊安全部の職員を思い出す。
――やはりそういう筋か。

警官として、知り過ぎぬ方がいい。
方佑南は静かにうなずき、帰り際に連絡先を尋ねた。
姜栩栩はスマホを番組側に預けていたため、紙に番号を書き渡す。

彼が署に戻り、骨灰の年代と死亡記録から容疑者を割り出した頃、
例の特殊部門の二人が再び現れた。

彼らは金の腕輪を受け取り、わずかに驚いたように呟く。
「また霊力の残留……」
「この袋、誰か触った? 専門の玄師を雇ったのか?」

方佑南は心の中で姜栩栩を思い浮かべつつ、
「番組スタッフ以外は触っていない」とだけ答える。
二人は惜しそうにしつつ、番組を確認してみると言った。

調べは早かった。
骨灰の日付と死亡者リストを照合し、
容疑者は亡くなった女性の夫と判明。

二人は同じ孤児院で育ち、若くして事業を起こしたが、
妻は癌を患い、一週間前に亡くなっていた。
深い愛情を知る周囲の証言も、彼が
“陰の術”を用いた疑いを裏付けていた。

高級マンションで対面した男は、三十歳にも満たぬはずが
四十代のように老け込み、全身が弱々しい。
方佑南は姜栩栩が語った「反噬(はんし)」――
術が術者に跳ね返る現象を思い出す。

その後の捜査で、妻の死後に男が動いた足取りも追ったが、
男は番組配信を見て失敗を悟り、
術を自ら断ち、証拠も徹底的に消していた。
死者も出ておらず、直接的な罪には問えない。

だが特殊部門の職員は笑みを浮かべて言う。
「反噬を受けた体は隠せない。証拠がなくても分かる。」
方佑南は、姜栩栩が最初から
この展開を読んでいたことを理解した。

――
やがて分かった真相はこうだ。
男は愛する妻の命を救うため、
まず寿命を延ばす“借命”を試したが成功せず、
妻の苦痛だけが増した。

最後に選んだのが“借身”――
他人の身体を媒介に魂を移す術。
妻が生きているうちに、男は条件に合う女性を探し、
妻自身が選んだのが阮小濛(ルアン・シャオモン)だった。

理由は一つ。
かつて妻の夢は、スターになることだった。
阮小濛の身体を得れば、美貌もファンも名声も
一度に手に入る。

男はまず“ファンを装った贈り物”で試したが反応はなく、
阮の「幸運キャラ」に目を付け、
彼女が拾いたくなるよう仕掛けて腕輪を受け取らせた。

すべて順調に思えたが、
予想外にも一つのバラエティ番組が計画を崩す。
姜栩栩が現れ、術を暴き、
男は自ら術を断つしかなくなった。

それでも彼は、
「成功するなら捕まってもいい」と覚悟していた。
しかし計画が破綻した今、
せめて自分だけは守り、
いつか姜栩栩に妻の無念を晴らさせる――
そう心に誓った。

だが姜栩栩は最初から、
彼が逃げ切れぬ未来まで見抜いていたのだった。
感想 10

あなたにおすすめの小説

【完結】遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
【残り数話を持ちまして3月29日完結!!】 夫にも子どもにも、私は選ばれなかった。 長年の裏切りを抱え、離縁状を置いて家を出た――。 待っていたのは、凍てつく絶望。 けれど同時に、それは残酷な運命の扉が開く瞬間でもあった。 「夫は愛人と生きればいい。  今さら縋られても、裏切ったあなたを許す力など残っていない」 それでも私は誓う―― 「子どもたちの心だけは、必ず取り戻す」 歪で、完全な幸福――それとも、破滅。 “石”に翻弄された者たちの、狂おしい物語。

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

柚木ゆず
恋愛
 ※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。  我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。  けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。 「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」  そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

【完結】虐げられて自己肯定感を失った令嬢は、周囲からの愛を受け取れない

春風由実
恋愛
事情があって伯爵家で長く虐げられてきたオリヴィアは、公爵家に嫁ぐも、同じく虐げられる日々が続くものだと信じていた。 願わくば、公爵家では邪魔にならず、ひっそりと生かして貰えたら。 そんなオリヴィアの小さな願いを、夫となった公爵レオンは容赦なく打ち砕く。 ※完結まで毎日1話更新します。最終話は2/15の投稿です。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

君といるのは疲れると言われたので、婚約者を追いかけるのはやめてみました

水谷繭
恋愛
メイベル・ホワイトは目立たない平凡な少女で、美人な姉といつも比べられてきた。 求婚者の殺到する姉とは反対に、全く縁談のなかったメイベル。 そんなある日、ブラッドという美少年が婚約を持ちかけてくる。姉より自分を選んでくれたブラッドに感謝したメイベルは、彼のために何でもしようとひたすら努力する。 しかしそんな態度を重いと告げられ、君といると疲れると言われてしまう。 ショックを受けたメイベルは、ブラッドばかりの生活を改め、好きだった魔法に打ち込むために魔術院に入ることを決意するが…… ◆なろうにも掲載しています

『 私、悪役令嬢にはなりません! 』っていう悪役令嬢が主人公の小説の中のヒロインに転生してしまいました。

さらさ
恋愛
これはゲームの中の世界だと気が付き、自分がヒロインを貶め、断罪され落ちぶれる悪役令嬢だと気がついた時、悪役令嬢にならないよう生きていこうと決める悪役令嬢が主人公の物語・・・の中のゲームで言うヒロイン(ギャフンされる側)に転生してしまった女の子のお話し。悪役令嬢とは関わらず平凡に暮らしたいだけなのに、何故か王子様が私を狙っています? ※更新について 不定期となります。 暖かく見守って頂ければ幸いです。

【短編】「中身はいいけど顔がなぁ」と笑った侯爵令息。美人の姉目当てに地味ブスな私を利用したこと、謝られても手遅れです

恋せよ恋
恋愛
「……結局、男の人は、顔しか見ていないのね」 絶世の美女である姉エリザベスを狙う男たちから 「地味ブス」と蔑まれてきた伯爵家の養子アイリス。 そんな彼女に、幼馴染のアレンからの頼み事が。 友人レオナルドの「女嫌い」克服のため 彼と文通を重ね、アイリスは生まれて初めての恋を知る。 しかし、文通で育んだ絆は、すべて彼の「暇つぶし」と 「美貌の姉への足がかり」に過ぎなかった。 「アイリス? 中身はいいけど、顔がなぁ」 「俺、面食いなんだよ。あの子、おしゃれする気ないのかな」 冷めた令嬢と、後悔に悶える貴公子の、すれ違いロマンス! 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

逆行転生、一度目の人生で婚姻を誓い合った王子は私を陥れた双子の妹を選んだので、二度目は最初から妹へ王子を譲りたいと思います。

みゅー
恋愛
アリエルは幼い頃に婚姻の約束をした王太子殿下に舞踏会で会えることを誰よりも待ち望んでいた。 ところが久しぶりに会った王太子殿下はなぜかアリエルを邪険に扱った挙げ句、双子の妹であるアラベルを選んだのだった。 失意のうちに過ごしているアリエルをさらに災難が襲う。思いもよらぬ人物に陥れられ国宝である『ティアドロップ・オブ・ザ・ムーン』の窃盗の罪を着せられアリエルは疑いを晴らすことができずに処刑されてしまうのだった。 ところが、気がつけば自分の部屋のベッドの上にいた。 こうして逆行転生したアリエルは、自身の処刑回避のため王太子殿下との婚約を避けることに決めたのだが、なぜか王太子殿下はアリエルに関心をよせ……。 二人が一度は失った信頼を取り戻し、心を近づけてゆく恋愛ストーリー。

はじまりは初恋の終わりから~

秋吉美寿
ファンタジー
主人公イリューリアは、十二歳の誕生日に大好きだった初恋の人に「わたしに近づくな!おまえなんか、大嫌いだ!」と心無い事を言われ、すっかり自分に自信を無くしてしまう。 心に深い傷を負ったイリューリアはそれ以来、王子の顔もまともに見れなくなってしまった。 生まれながらに王家と公爵家のあいだ、内々に交わされていた婚約もその後のイリューリアの王子に怯える様子に心を痛めた王や公爵は、正式な婚約発表がなされる前に婚約をなかった事とした。 三年後、イリューリアは、見違えるほどに美しく成長し、本人の目立ちたくないという意思とは裏腹に、たちまち社交界の花として名を馳せてしまう。 そして、自分を振ったはずの王子や王弟の将軍がイリューリアを取りあい、イリューリアは戸惑いを隠せない。 「王子殿下は私の事が嫌いな筈なのに…」 「王弟殿下も、私のような冴えない娘にどうして?」 三年もの間、あらゆる努力で自分を磨いてきたにも関わらず自信を持てないイリューリアは自分の想いにすら自信をもてなくて…。