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草食系王太子に『真の姿をさらけ出す薬』を飲ませたら肉食系になりました
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【まえがき】
※この作品は『すなもり共通プロット企画』参加作品であり、提供されたプロットで創作した作品です※
~~共通プロット~~
許嫁同士の王子と姫。
しかし二人の仲はなかなか進展しない。
王子の本当の気持ちを知りたいと願う姫は、ある日、「真の姿をさらけ出す薬」を入手する。これをこっそり王子に飲ませたところ。
王子はなんと???に変身。
姫は王子に***されちゃう。
翌朝、元に戻った王子は……。
共通プロットのためネタは被ってもいいという主催者様の有難い言葉により被り前提で考えました。
半分くらいがRシーンです!!
===============================
フィオリーナ・ペトラはこのセラジャ王国第一王子のクロヴィスの婚約者である。
生まれる前から決められたような婚約であったけれど、お互い波長があったのか、この十八年間、大きな喧嘩をすることなく婚約者としての仲を深めていった。この十八年間で何が変わったかというと、第一王子であったクロヴィスが立太子して王太子となったことくらい。それに伴い、フィオリーナは王太子妃教育を受けるために、毎日のように王城を訪れるようになった、ということくらい。
そんな二人はクロヴィスの二十歳の誕生日に盛大な結婚式を執り行う予定だった。
また、王族に嫁ぐ者には処女性を求められるものなのだが、婚約期間が長ければ一線を越えたとしても咎められるものでもなかった。ただ、婚約が解消された場合、嫁ぐはずであった女性が離縁した女性と同じように扱われてしまうだけ。
だからこそ、フィオリーナには少しだけ不満があった。
このクロヴィス、婚約してから十八年間というもの、唇にキスすらしてくれないのだ。
手の甲へのキス。これはあいさつ代わりのようなキス。
額にキス。これはフィオリーナの誕生日のときのお祝いのキス。
頬にキス。してくれたことがない。
唇にキス。もちろん、ない。
「あぁ、もうっ」
王太子妃教育のために王城を訪れていたフィオリーナ。婚約期間が長いこと、来年は結婚式を控えていること、ということで既に王太子妃のための部屋をあてがわれていた。もちろん、この部屋は隣のクロヴィスの部屋と室内の扉で繋がっているのだが、今は固く閉ざされているその扉。
フィオリーナはこの王城で行われる舞踏会のために、この部屋で三泊する予定だった。ペトラ公爵も夫人も、ニコニコと笑顔で送り出してくれた。
そしてフィオリーナは今、明日の舞踏会の打ち合わせを終え、与えられた部屋へと戻ってきたところ。
「マリアナ。クロヴィス様は、本当にわたくしのことが好きなのかしら? 十八年間、この唇にキスさえされたことがないのよ。いいところ、額にキスよ。子供じゃあるまいし」
マリアナとはフィオリーナ付きの侍女。彼女の身の回りの世話を一手に引き受けている信頼できる侍女。今は、ソファでくつろぎ始めたフィオリーナのために、お茶を淹れているところ。
「そうですね。クロヴィス様がフィオリーナ様を好いているのは、誰がどう見ても明らかなのですが。どうやらクロヴィス様は奥手でいらっしゃる様子」
「奥手?」
フィオリーナが聞き返せば、そうです、とマリアナが大きく頷く。
「まあ成長が遅いという意味ではありますが。そこから派生して恋愛に関して消極的な方を指します。まあ、いわゆる草食系と呼ばれるものですね」
「クロヴィス様は、草食系なのね」
クロヴィスの見た目は肉食系だと思っているフィオリーナ。
何より彼の金色の髪、金色の瞳はどこか肉食動物を思わせていた。身体付きも小柄なフィオリーナをすっぽりと抱き締めてしまうほど大きく、そして逞しい。
「肉食なのか草食なのか、はっきりさせてもらわなきゃ」
「それ。重要ですか?」
長年の付き合いの為か、つい、マリアナもツッコミを入れてしまった。ときどき軌道修正をしてあげないと、このフィオリーナという娘は暴走してしまうのだ。
「重要でしょ? 草食ならわたくしがリードしてあげなければならないけれど。肉食であったら、ばりばりと食べられたいわ」
「ばりばりとって。骨の髄までしゃぶってやるぜ、ではないのですから。もう少し表現に気をつけてくださいませ」
マリアナにぴしゃりと注意されてしまうフィオリーナ。だけど、その注意の仕方もどうなのよ、と思う。
「はぁ。せっかく、お父さまとお母さまの許しも得ての公認お泊りだというのに……。ねえ、マリアナ。クロヴィス様はあの扉を開けて、わたくしの寝台にまで来て下さるかしら?」
「無理ですね」
「即答? そこはもう少し、そうですねぇとか、溜めてから答えるものでしょ?」
「無理ですね。あのへたれに、そこまでの度胸はありません」
「あなた、二回も言ったわね」
「大事なことですから」
あ、とそこでマリアナはポンと手を叩いた。
「明日の舞踏会ですが、どうやらあのデュナン国から王宮薬師も来られるそうなのですよ」
「え、デュナン国の王宮薬師?」
「はい。異文化交流を目的としている舞踏会であるため、様々な国の様々な方を招待しているわけですが、デュナン国から王宮薬師が来られるのは初めてとのことでして」
「デュナン国の薬はこの国でも重宝されているわね。避妊薬や滋養強壮剤とかはデュナン国のものが一般的よね」
「はい。ですから、お嬢様。デュナン国のこんな噂を聞いたことはありませんか?」
「どんな噂?」
そこでマリアナはフィオリーナの耳元に唇を寄せた。
「『真の姿をさらけ出す薬』そう呼ばれる薬があるそうですよ」
フィオリーナはごくりと喉を鳴らした。真の姿をさらけ出す薬。それをクロヴィスに飲ませたら、彼は本心を見せてくれるのだろうか。
テーブルの上の紅茶が、静かに波打っていた。
※この作品は『すなもり共通プロット企画』参加作品であり、提供されたプロットで創作した作品です※
~~共通プロット~~
許嫁同士の王子と姫。
しかし二人の仲はなかなか進展しない。
王子の本当の気持ちを知りたいと願う姫は、ある日、「真の姿をさらけ出す薬」を入手する。これをこっそり王子に飲ませたところ。
王子はなんと???に変身。
姫は王子に***されちゃう。
翌朝、元に戻った王子は……。
共通プロットのためネタは被ってもいいという主催者様の有難い言葉により被り前提で考えました。
半分くらいがRシーンです!!
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フィオリーナ・ペトラはこのセラジャ王国第一王子のクロヴィスの婚約者である。
生まれる前から決められたような婚約であったけれど、お互い波長があったのか、この十八年間、大きな喧嘩をすることなく婚約者としての仲を深めていった。この十八年間で何が変わったかというと、第一王子であったクロヴィスが立太子して王太子となったことくらい。それに伴い、フィオリーナは王太子妃教育を受けるために、毎日のように王城を訪れるようになった、ということくらい。
そんな二人はクロヴィスの二十歳の誕生日に盛大な結婚式を執り行う予定だった。
また、王族に嫁ぐ者には処女性を求められるものなのだが、婚約期間が長ければ一線を越えたとしても咎められるものでもなかった。ただ、婚約が解消された場合、嫁ぐはずであった女性が離縁した女性と同じように扱われてしまうだけ。
だからこそ、フィオリーナには少しだけ不満があった。
このクロヴィス、婚約してから十八年間というもの、唇にキスすらしてくれないのだ。
手の甲へのキス。これはあいさつ代わりのようなキス。
額にキス。これはフィオリーナの誕生日のときのお祝いのキス。
頬にキス。してくれたことがない。
唇にキス。もちろん、ない。
「あぁ、もうっ」
王太子妃教育のために王城を訪れていたフィオリーナ。婚約期間が長いこと、来年は結婚式を控えていること、ということで既に王太子妃のための部屋をあてがわれていた。もちろん、この部屋は隣のクロヴィスの部屋と室内の扉で繋がっているのだが、今は固く閉ざされているその扉。
フィオリーナはこの王城で行われる舞踏会のために、この部屋で三泊する予定だった。ペトラ公爵も夫人も、ニコニコと笑顔で送り出してくれた。
そしてフィオリーナは今、明日の舞踏会の打ち合わせを終え、与えられた部屋へと戻ってきたところ。
「マリアナ。クロヴィス様は、本当にわたくしのことが好きなのかしら? 十八年間、この唇にキスさえされたことがないのよ。いいところ、額にキスよ。子供じゃあるまいし」
マリアナとはフィオリーナ付きの侍女。彼女の身の回りの世話を一手に引き受けている信頼できる侍女。今は、ソファでくつろぎ始めたフィオリーナのために、お茶を淹れているところ。
「そうですね。クロヴィス様がフィオリーナ様を好いているのは、誰がどう見ても明らかなのですが。どうやらクロヴィス様は奥手でいらっしゃる様子」
「奥手?」
フィオリーナが聞き返せば、そうです、とマリアナが大きく頷く。
「まあ成長が遅いという意味ではありますが。そこから派生して恋愛に関して消極的な方を指します。まあ、いわゆる草食系と呼ばれるものですね」
「クロヴィス様は、草食系なのね」
クロヴィスの見た目は肉食系だと思っているフィオリーナ。
何より彼の金色の髪、金色の瞳はどこか肉食動物を思わせていた。身体付きも小柄なフィオリーナをすっぽりと抱き締めてしまうほど大きく、そして逞しい。
「肉食なのか草食なのか、はっきりさせてもらわなきゃ」
「それ。重要ですか?」
長年の付き合いの為か、つい、マリアナもツッコミを入れてしまった。ときどき軌道修正をしてあげないと、このフィオリーナという娘は暴走してしまうのだ。
「重要でしょ? 草食ならわたくしがリードしてあげなければならないけれど。肉食であったら、ばりばりと食べられたいわ」
「ばりばりとって。骨の髄までしゃぶってやるぜ、ではないのですから。もう少し表現に気をつけてくださいませ」
マリアナにぴしゃりと注意されてしまうフィオリーナ。だけど、その注意の仕方もどうなのよ、と思う。
「はぁ。せっかく、お父さまとお母さまの許しも得ての公認お泊りだというのに……。ねえ、マリアナ。クロヴィス様はあの扉を開けて、わたくしの寝台にまで来て下さるかしら?」
「無理ですね」
「即答? そこはもう少し、そうですねぇとか、溜めてから答えるものでしょ?」
「無理ですね。あのへたれに、そこまでの度胸はありません」
「あなた、二回も言ったわね」
「大事なことですから」
あ、とそこでマリアナはポンと手を叩いた。
「明日の舞踏会ですが、どうやらあのデュナン国から王宮薬師も来られるそうなのですよ」
「え、デュナン国の王宮薬師?」
「はい。異文化交流を目的としている舞踏会であるため、様々な国の様々な方を招待しているわけですが、デュナン国から王宮薬師が来られるのは初めてとのことでして」
「デュナン国の薬はこの国でも重宝されているわね。避妊薬や滋養強壮剤とかはデュナン国のものが一般的よね」
「はい。ですから、お嬢様。デュナン国のこんな噂を聞いたことはありませんか?」
「どんな噂?」
そこでマリアナはフィオリーナの耳元に唇を寄せた。
「『真の姿をさらけ出す薬』そう呼ばれる薬があるそうですよ」
フィオリーナはごくりと喉を鳴らした。真の姿をさらけ出す薬。それをクロヴィスに飲ませたら、彼は本心を見せてくれるのだろうか。
テーブルの上の紅茶が、静かに波打っていた。
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