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悪役令嬢への誘い(2)
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地下書庫は壁際に沿ってずらっと書棚が並び、真ん中にも行儀よく書棚が列になって並んでいる。その列と列の間には、ささやかなソファとテーブルが置いてあり、自由に本を閲覧することができる。
最近のリスティアは古代史に興味を持っていたため、古代史の書物が並ぶ棚の近くにあるソファに座っているのが多かった。
その隣の書棚であれば、そこは天文学や薬草学の書物がある場所だ。
「まあ、そうだったのですね。てっきり、ここにはわたくし一人だと思っておりました」
「うん、そうだな」
「では、こちらの本は……」
「ゆっくり読んでいい。どうせ君は、毎日ここに来ているのだろう? 僕も毎日来ている。読み終わったタイミングで僕に返してくれれば、それでいいから」
「ありがとうございます。ほかの方から、こうやって本を薦めていただいたのは初めてですので、とても嬉しいです」
リスティアはラズベリーのような瞳を柔らかく細めた。
「そうか。僕も、君の初めてになれて、嬉しいよ」
「ウォルグ様は、お上手ですわね」
変な女認定されているリスティアを褒めるような人物はいない。それは自覚がある。
「リスティア嬢は、今日も本を読んでいくのかい?」
「はい。今は古代史を読んでおりまして、ちょうどマキノン時代まで読み終えたところなのです」
「へぇ、マキノン時代ね。何か興味のあることがあったのかい?」
ウォルグの茶色の瞳が、楽しそうに揺らめいた。
「そうですね。マキノン時代は、人の埋葬の仕方に特徴がありますね。大事なものを守るような姿勢で埋葬されるそうです」
マキノン時代の人々は、死んでからも何か大事なものを守ろうとしているにちがいない。現代の人々も、それには何かしら気がついているはずだ。彼らが守ろうとしていたのはなんなのか。今でもその研究は続けられていると古代史の本には書いてあり、リスティアが興味を示す内容としては充分だった。
そこからリスティアは饒舌になった。大好きな古代史で気になるものがあったからだ。誰かに相談したいと思っていた。もしかしたら、その相談相手としてウォルグは相応しいのかもしれない。
だが、しばらくしゃべり続けてから、はっとする。
「申し訳ございません。このようなお話、つまらなかったですよね」
「いや、とても興味深く聞かせてもらった。君は、勉強熱心なんだな。目のつけ所が違う。僕は歴史が苦手なんだけど、君がそうやって教えてくれるなら、興味が持てそうだ」
「それはよかったです。興味を持ってもらえるのが、一番嬉しいです」
リスティアは微かに笑んだ。
「僕としては、リスティア嬢に興味があるんだけどね」
ウォルグのそのつぶやきは、リスティアの耳には届かない程、小さなものだった。
最近のリスティアは古代史に興味を持っていたため、古代史の書物が並ぶ棚の近くにあるソファに座っているのが多かった。
その隣の書棚であれば、そこは天文学や薬草学の書物がある場所だ。
「まあ、そうだったのですね。てっきり、ここにはわたくし一人だと思っておりました」
「うん、そうだな」
「では、こちらの本は……」
「ゆっくり読んでいい。どうせ君は、毎日ここに来ているのだろう? 僕も毎日来ている。読み終わったタイミングで僕に返してくれれば、それでいいから」
「ありがとうございます。ほかの方から、こうやって本を薦めていただいたのは初めてですので、とても嬉しいです」
リスティアはラズベリーのような瞳を柔らかく細めた。
「そうか。僕も、君の初めてになれて、嬉しいよ」
「ウォルグ様は、お上手ですわね」
変な女認定されているリスティアを褒めるような人物はいない。それは自覚がある。
「リスティア嬢は、今日も本を読んでいくのかい?」
「はい。今は古代史を読んでおりまして、ちょうどマキノン時代まで読み終えたところなのです」
「へぇ、マキノン時代ね。何か興味のあることがあったのかい?」
ウォルグの茶色の瞳が、楽しそうに揺らめいた。
「そうですね。マキノン時代は、人の埋葬の仕方に特徴がありますね。大事なものを守るような姿勢で埋葬されるそうです」
マキノン時代の人々は、死んでからも何か大事なものを守ろうとしているにちがいない。現代の人々も、それには何かしら気がついているはずだ。彼らが守ろうとしていたのはなんなのか。今でもその研究は続けられていると古代史の本には書いてあり、リスティアが興味を示す内容としては充分だった。
そこからリスティアは饒舌になった。大好きな古代史で気になるものがあったからだ。誰かに相談したいと思っていた。もしかしたら、その相談相手としてウォルグは相応しいのかもしれない。
だが、しばらくしゃべり続けてから、はっとする。
「申し訳ございません。このようなお話、つまらなかったですよね」
「いや、とても興味深く聞かせてもらった。君は、勉強熱心なんだな。目のつけ所が違う。僕は歴史が苦手なんだけど、君がそうやって教えてくれるなら、興味が持てそうだ」
「それはよかったです。興味を持ってもらえるのが、一番嬉しいです」
リスティアは微かに笑んだ。
「僕としては、リスティア嬢に興味があるんだけどね」
ウォルグのそのつぶやきは、リスティアの耳には届かない程、小さなものだった。
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