ポンコツ能力は使いよう!?~戦術で最強を凌駕する~

シロクロ

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2 見つけた仲間は

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 森から抜けた二人。森を抜けるとすぐ見えてくる大きな国のようなもの。外壁に囲まれたその様子はさしずめ王国の風格。
 森から抜けると舗装された道がありそこを通ることになる。
 そして現在森を抜けた途端、鬱陶しいほどに晴れ、歩くには暑い気温に見舞われていたがその天気は一転。雨がいきなり降ってきてはどしゃ降りになり、せっかく森を抜けたが逆戻りしてきたのは懸命な判断だっただろうとわかる。
 木を雨宿りに使い、すぐに向かえるよう、森のすぐ出口の場所で待機していた。
 「おい、つくづくついてねーな」
 雨に打たれる葉をみながらアサギは悪態をついた。
 雲の厚さはかなりある。止むまでは時間がかかりそうだ。
 「はぁー、そうですね」
 この現状にはさすがにため息が募る。服は濡れ、やっと帰れるというところでこの雨。笑えないほどついてない。
 暇、かつ気分転換にアサギに話をふった。
 「あの、アサギはガーディアンの中でどれくらい強いですか?」
 気になる質問。山ほど兼拍にはあるがまずはこれからと決めていた。
 散々強い所を見たのだ。そのアサギはどれくらいなのか。
 「今は真ん中ぐらい、かな」
 あまり確信はないらしく微妙な反応を見せる。その後もいやでもなー、とか一人で言っているのを兼拍は見て、
 「真ん中、ですか。相当強いんですね」
 ひとり言のようにボソッと呟く。雨の音でアサギには聞こえなかったが、その表情から読み取った。
 「なんか目的とかあんの?」
 フイッと首だけ動かし兼拍の表情を見ていたアサギはジッと目見ていた。
 その視線に遅れて気付き、びくりと体を震わせ驚く。
 いつも大人っぽいような雰囲気と表情をしていたが、今はどこか子供が困ったような表情をしていてた。そんな風に見られているとはいざ知らず、アサギの真剣な目に答えざるを得なくなった。
 「目的、よりは夢に近いですね」
 「まぁー何でもいいけどさ」
 話してみろよというアサギの圧に押され結局話すことになった。
 「夢はある人に会うこと、です。それと魔法を沢山覚えてほぼマスターすること、ですかね。まぁ、どちらも叶いそうに無いですけど」
 徐々に小さくなる声。自信も希望もない望みのようだ。だから夢。叶うことのない、目的ではなく。
 「………ふーん。まぁ叶えたくないならいいけどさ。それはさすがに俺のチームメイトなら許さん。叶えたいなら叶えればいい」
 慰めて、同情訳でもなく、かといって諦めるなとか努力しろなど無責任なことを言う事もなく、ただただ仲間ならしっかりしろと。
 チームメイトである以上、見逃さねーからなと目で語るアサギ。
 「………そう、ですか。ではアサギも手伝って下さいね?」
 思い付いたように言う。その表情はまるでイタズラを仕掛ける子供のようだった。
 しかしそれにも動じずやれやれとため息をついたアサギ。
 「どうせそうなるけどな」
 巻き込まれるのは承知済みなようで嫌な素振りは見せない。
 どこかホッとした兼拍。仲間として見てくれていることと叶えられそうにないことですら馬鹿にする訳ではなく、やるならやれと。そう言ってくれるのは兼拍にとっては数少ない人であるため嬉しさもあった。
 「では、お願いしますね?」
 「ハイハイ、任せろ。そうするにはまずガーディアンに行かなくちゃな」
 いつの間にか上がっていた雨。日が徐々にさし込み明るさが戻ってくる。
 都市は目とはなの先なのですぐにつくだろう。
 「さぁ、急ぎましょう」
 慌てている様子はないが急かす兼拍。横向きに箒に乗る。向かうはガーディアン。そこでは新たな出会いと困難がアサギを待ち構えていた。



 ものの数分とかからずついたその都市はちょっとした外壁とお堀のような水路に囲まれた大規模な都市で、人口はこの国でも多く特に中心辺りではかなり集中する。
 町並みは現代風な家とアスファルトの地面。そして街灯や信号もあり日本の都市内と全く変わらない外見だった。ただし、その中でも異様な存在感と外見を醸し出す建物がひとつ。
 都市中心部に建つそれはガーディアン。黒い外見のビル状に上に伸びた形が特徴。ビルよりは高くないがその色と大きさからこの都市の代表のような建物となっていた。
 「………やっと着きましたね。近いはずなのに随分と時間がかかってしまいました」
 堂々と建つガーディアンの入り口前で見上げる兼拍。その兼拍を置いて早々と自動ドアの前に行き入ろうとするアサギ。
 「置いてくぞ?」
 アサギと兼拍、この二人が入ろうとしているこのドデカイ建物・ガーディアンとは文字通りそこらかしこに蔓延るモンスター、敵国からの侵略など守ることに徹した組織。多くの人が所属しており、今では支部や師団などわけられている所もある。
 そんな組織の中、一階は特に何もなく正面に大きなモニター、その側にソファとカウンターがあるのみ。
 そんな質素な一階を通過し、二階部分へ。階段、エスカレーターもあるが楽なのでエレベーターへ直行するアサギ。
 二階部分
 エレベーターのドアが開くとそこは一階とは全く異なるフロアとなっていた。
 数多くの椅子と机。その周りを取り囲むようにあるフードコート。
 「俺腹へったから何か食っていい?」
 昼間も過ぎるころ人も多く空いている椅子が少ない。その空いている椅子を見つけるべくキョロキョロとする。
 「……はぁ…………構いませんが」
 やっとついたらまずご飯ですか、と呆れた様子。
 何を食べるのかは知らないがどこかのフードコートに行ってしまったので丁度空いた席へ座る。目線の先は映し出されたモニター。
 モニターが映しているのは戦闘風景。人と人が戦う風景だ。
 このフロアともう一階上の三階にある戦闘専用部屋にての戦闘風景。個室のような部屋が立ち並びそこに入ればそこに入ったひとなら誰とでも戦える部屋であとは自動的に戦闘フィールドへ飛ばされる。
 戦闘方向と仕様は仮想世界の自分の体を現実世界へと持ってきて仮想世界で戦うという一般人には全くわからない機能を開発し、誰にでも安全に戦うことができるという仕組み。
 気軽に戦うことが出来るためここの空気は極めて明るい。
 勝っては負けて、負けては勝って。そんなあまり見所のない試合わいくつか見ていた頃、アサギが戻ってくる。
 アサギが手にしていたのは蕎麦。それは何とも美味しそうなザル蕎麦だった。
 兼拍の対面の席に座り一人蕎麦を目の前におき美味しそうに頬張る。
 「……………」
 よく人の前で堂々と、と多少イラッとするが自分も買えばいいだけのこと。相手にしまいとそっぽを向いた。
 そんな兼拍の心情を無視してアサギは食べるのを一度止め、一枚の紙を机に出した。
 「…………何です?」
 引っ込める気配が内のでチラッと見るとそこにはよくわからないことが書いてあった。
 「見てもわからんだろうがこれからちと用事がある。十分くらいで戻って来るけどその間に仲間募集頼むわ」
 紙に書いてあるのは依頼らしい。内容まではわからないが重要そうなので兼拍は探ろうとせずその次の話に待ったをする。
 「なぜ私が?私は知っての通り厄魔族。チームメイトになってくれる人などいませんよ?」
 目を見れば一目瞭然の証拠と元々そんな苦労をしなければアサギと組むことは無かったと思われる。
 「だろうな」
 当たり前だろ?アホか?と兼拍の言っていることは承知の上。更にはばかにする始末。
 その言葉にはさすがに兼拍でも額に青筋を浮かべご立腹。腹減りも重なり怒りはアサギへ百パーセント向いた。
 「で?ダメ元で探せと?」
 返答次第では、とアサギの蕎麦に目をつける。絶対ひっくり返されると悟ったアサギは蕎麦を守りながら待て待てと話を続ける。
 「部分的には合ってるけど違う。お前が厄魔族だからこそだよ。」
 「………はあ?なぜです?」
 取り敢えずアサギの言う通りに待つ。アサギの蕎麦に狙いを定めて。
 「………目が怖いんだが。まぁいいや。なぜって厄魔族であるお前が誘わないと意味無いだろ?俺が誘った所でお前の存在を知ったらどうなる?」
 兼拍の存在を知ったら、そんなのは決まっている。白い目を向けられ「やっぱりなし」と早々に立ち去ってしまうだろう。なのでアサギが誘ったところで無理がある。なら最初から兼拍自身が呼び掛け誘うしかないのである。
 その事を理解した兼拍は「なるほど」と納得し、アサギの蕎麦から狙いを定めるのを止める。
 「しかし、上手く行くでしょうか」
の、問いに対し
 「いや、いかなきゃ困るんだが?上手く魔法も使えないポンコツを支えてくれる優秀な仲間がほしい」
と、無茶苦茶な返答。
 いつの間にか蕎麦へと食事に戻っていたアサギのことを睨む。
 「そーですね。見つかるといいですね」
 完全に拗ねてしまったご様子の兼拍を見て笑いながら「じゃ、頼んだよー」と適当に言いながら食べ終えた食器を持ち立ち去ってしまった。

 
 完全な無茶ぶりをどうにかしなければと思いどうすれば上手く見つかるか考えた。声をかけて探すのはもっての他なので来る人を待つ方針で探す。
 その方法が一番適している。そう思い、とある所へ急ぐ。
 席を立ち、目指した場所はすぐ近くのカウンター。その隣にあるリクエストボードという看板のような形をした掲示板。
 この板には最近の情報、パーティー募集、協力願いなど様々なことが紙にかかれそれを貼り付け閲覧者が見ることが出来るものだ。その隣には似たようなボードがもう一枚あり、そっちには主なクエスト、依頼などが貼られている。
 極力ガーディアンはすぐに動くが些細なことや事件性の少ない案件はここに記される。それでお金を稼ぐことも可能。
 今回はクエストではなく、掲示板の方。つまりそれを使って仲間、パーティーの募集をするわけだ。
 紙は適当なものを使用し、なければすぐ横におかれた紙を自由に使ってもいい。ある人はこの紙で、ある人は家から持ってきたのか和紙、また最悪と言えるのがなんとフードコートでもらったレシートでかかれていた。このように何でもいいわけだ。
 何も持ってない兼拍は紙をもらい、すらすらーと適当に書き掲示板の隅の方に画びょうでぶっ刺した。
 少なくともこれで誰かしらの目には止まるはずなので後は待つだけ。
 来てくれることを期待し、机に戻り突っ伏した。
 周りを見ると喋りあったり、トレーニングに励んだり、遊んだりと楽しそうにする仲間が小さい時から羨ましかった。
 待つこと数分。募集者より先にアサギが戻ってきた。
 「どう?誰かいた?」
 無責任な言い方にこの人は何してたんだよと見るがアサギの後ろにはお客がいた。
 「まだですね。それと後ろの方は?」
 アサギより大きく、ヤクザのように首を斜めにして威嚇する顔。オールバックの髪で装備は片手剣三本背負った男性。見るからに強そうでアサギにその視線は向いていた。
 「あーこいつ?なんか戦ってほしいって言うからさ。ちょっと遊んでくんね」
 「遊ぶぅぅぅ?おいてめぇコラ。きょーこそはぶちのめしてやっかんな。久々によ?」
 完全にヤクザ口調。わからないのはなぜ剣を三本も背負っているか。
 「はあ、構いませんが。ちゃんと戻って来てくださいね?」
 あんなヤクザに喧嘩を売られる相手が非力そうな少年のアサギ。無事で帰ってこれるとは想像がつかなかった。しかし話しからアサギの方が上手のようなのでそこまで心配ではないが。
 「て、ことで」
と、アサギ。
 「悪いな、嬢ちゃん。これくれてやるから今日は勘弁してな?」
 以外と優しいヤクザ。その彼から渡させたのは揚げたてのホクホクポテト。フードコートでは人気のポテトだ。
 「ありがとう、ございます」
 礼をいい、早速頬張る。アサギとはえらい対応の違いに少し感動する。そのままアサギたちは行ってしまったので募集者待ちを続ける。
 いただいたポテトにより空腹も満たされてきたためか眠気が襲う。しかし寝てはいけないとグッとこらえて来ることを願い待つ。
 このままでは寝てしまうと気分転換にモニターを見ると早速アサギとヤクザの人が戦っていた。ヤクザの人はどうやら葛西かさいと言うらしく三本の剣の正体はすぐにわかった。
 剣を口に咥え三刀流とかやってくれるのを期待したがさすがにそれはなかった。ただ異色ではあった。
 三本のうちの一本を投げ、二本で斬り裂く。その戦闘スタイルはアサギを追い詰めていた。
 しかしアサギはケタケタと笑いいなしては逃げあるところでは反撃。ちょこまか動き剣に当たる様子はない。
 ボーとそんなアサギの様子を見ていた。そんな時だった。
 「あ、あのー、募集しているのはあなたですか?掲示板見てきたんですけど……」
 兼拍の後ろから聞こえる声。びっくりしてばっと振り返るとそこには女子二人。
 声をかけたのが手前の女の子で長めの髪は紺と紫が混ざった色でポニーテール。和服?のようなものを着こなしたアサギぐらいの身長と年齢。もうは眼鏡に短めの髪は茶色でこれまたポニーテール。こちらはラフな服装。アサギより身長は高くお姉さんのような人。
 そんな二人が立っていた。
 もしかして、と兼拍は思ったがそのもしかしてだ。
 「えっと、希望ですか?」
 「はい!!!」
 兼拍の質問にその人はニコリと笑い元気よく答える。
 (いい人、そうですね)
 さりげなく目を合わせてみるが反応はない。
 この段階では大丈夫そうなので適していなくはないだろうが話してみないことにはわからない。仮の面接を始めることにした。
 「では、向かい側に座ってください」
 「わかりました」
 ここまで素直に聞いてくれることにホッとする。兼拍が相手の場合、冷やかしや中傷など多いので一回目からここまで上手くいくと逆に怖かったりするがアサギが作ってくれたこの機会を逃すことはできないと自分に言い聞かせた。
 「私は兼拍 柊かねはく ひいらぎです、お二人のお名前は?………」
 最初は和服っぽい服をきている人から。
 「私は宮越 花織みやこし かおりです。」
 続けてその隣に座った人。
 「私は茅世弥 淡ちよや あわい。この子とは友人よ」
 隣の宮越に視線を向け、互いに紹介が済んだので次に行く。
 「宮越さんと茅世弥さんですね?では二人はなんの魔法が得意ですか?」
 私は出来ませんが、と思いながら聞く。はっきり言ってこれ以上聞く必要はないが何となく興味本意で。結局最後はアサギが決めるであろうから兼拍はそれまでの繋ぎやく。
 そんな事など知りはしないので相変わらず二人は素直に答える。
 「私は回復系の魔法と多少の炎系の魔法かな。多分想像しずらいかも知れないですけど」
 頬をかきながら自身なさそうに言う宮越。
 「私はほとんどの魔法使えるけど、あまり他人に言えるほど力はないわ」
 茅世弥も自身なさそうだが、どちらにしても二人は兼拍にとって憧れというより嫉妬の対象だった。自身がないと言えど魔法が使えるのは何より羨ましかった。
 それはさておきと周りを見渡すがアサギが戻ってくる気配がないので適当な話題を振って会話をつなぐことにした。


 数十分ほどでアサギと葛西が戻ってきた。
 アサギは兼拍と話している二人を見て「おお!」と声を出したのに気がついた。
 アサギが葛西の方に顔を向けると「ち、てめぇ覚えとけよ。おごりはまた今度な」とヤクザ口調にしてはやはり優しさのある言葉を最後に空気を読んで去っていく。
 「じゃなー」と気の抜けた挨拶で済ませるアサギはすぐに兼拍から事情を聞いた。
 
 「んーなるほど。いんじゃね?」
 特になにも聞くことなく承諾するアサギ。その対応に少々驚く三人。
 「え、いいんですか?」
 「うーん、じゃあ少し話聞かせてもらおうかな」
 さすがにこれはまずいかぁと呑気なことを呟きながらことを進める。
 席を代わりアサギがつく。名前当は兼拍から聞き、アサギが気になることだけを聞くことになった。
 何を聞かれるのかと緊張が走る二人。ものの数十分程度話しただけでちょっとした友情が芽生えた三人。兼拍は心の中で応援していた。
 「さて、質問は三つ。それぞれ一人ずつ答えてくれ」
 コクりと頷く二人。
 「まず、1つ目。こいつの事どー思った?」
 隣に立っていた兼拍の事を指差した。
 兼拍にはその意図がわかったがこれは会った時点で知る事なので大丈夫だろうと信じる兼拍。
 それと人を指差さないでください、と小声でぼそりと呟いた。
 「………えっと、正直に?」
 言葉を詰まらせた後、目を反らした二人。
 まさか、と兼拍は思うが初対面で表情に出さなかっただけいい人だなぁと思い直す。
 (私の種族は嫌われない訳はない)
 わかってはいたが少しショックを受ける。
 「………別にどっちでもいいけど」
 嘘ついても解るからなと言っているアサギの目。
 「えっと、その…………か、可愛いなぁ、って思ってました」
 白状したかのように小さくなる声は震えていて顔は真っ赤だった。
 言われた本人の兼拍も驚愕の事実に顔を耳まで真っ赤にし、帽子のつばで表情を隠す。隠せていないが。
 「へ、へーそーなんだ」
 完全な棒読み。しかし嘘ではないのと兼拍の種族をどうこうってのはないようなのでもう一人。
 「で、そちらは?」
 「わ、私は…………友達になりたいなって……」
 こちらも思ってもいない返答。茅世弥もオドオドと目を泳がせ目の行き場を失う。当の本人はさらに赤くし、今にも湯気が出てきそうだった。
 「あー…………そうですか、そんなんはどうでもいいや」
 どうでもいいとキッパリ捨てるアサギに「「「ええ?」」」と三人から悲痛の叫び。恥ずかしながらも言ったのにこの始末ではそうなるのは道理。
 友達から好きな人は誰ですか?と聞かれたのに対しあっそう?と言われるような空しさだ。
 「次な。どんな魔法が使える?詳しく教えてほしい。入れるとしたら今後にも繋がるからな」
 本当に次行くんだ、と悲しい表情の二人。気をとりなおし宮越から。
 「回復系の魔法です。それと炎系。」
 「ふーん?回復はどこまでいける?」
 思ってもいない質問に躊躇う。先ほどの質問は流した癖にと兼拍からの視線がアサギの頭部に刺さる。
 「血液とかは生成出来ないけど、精神的から大怪我くらいまでなら。自身をもってできます」
 「おおぅ!他は?」
 「できません」
 「え?」
 予想どころか有望株を期待していたアサギにそんな答えは望んではいなかった。耳が受け付けない。
 「使えません、が正しいかな」
 「………………炎系の魔法は?」
 受け付けない耳を破り聞こえてくる期待外れの答え。望みの炎の魔法はと言うと、
 「回復系の魔法になっちゃうんです。熱くないし、痛くない。むしろ回復するんです」
 「………………へーそう。そうなんだ」
 棒読みどころか完全に魂が抜けたようなトーン。
 (え、何使えないって?ポンコツやん?兼拍コイツと代わらねーじゃん!?)
 いや、まて、と自分の思考を落ち着かせる。不満は多いが回復というのは重要だと自己暗示をかけるアサギ。
 (次に期待したい)
 「で、そちらは?」
 自身なさげに茅世弥の方に目を向ける。
 「私は全ての魔法は使えるわ」
 こちらも自身ありげに。
 「へぇー!全魔法を………ん?ちと待て。一応って何?」
 本能が告げる。アカンやつだと。
 もう完全に嫌な予感しかしなかった。
 「そのー、私を中心に半径五十センチ以内じゃないと使えなくて。過ぎると勝手に消えちゃうの、よね」
 「ほーーー。なるほどなるほど。………おい兼拍、相談タイムだ。」
 席を立ち二人を置いて兼拍を連行。

 少し離れた所にて、
 「おい、どういう事だあれ。どー考えてもダメだろ?」
 「何を言うんです?私に任せたくせに」
 「いや、ポンコツは読んでねーよ。てか、お前を支えるために集めてるのに更に支える側の負担増やしてどーすんだよ」
 少し離れた所でやり取りする二人。残された側の二人は互いにどうなるか予想しあっていた。
 「どう、なるかな?」
 「花織的にはどう思ってるの?」
 「うーん………」
 何とも言えないのが現状。兼拍は兎も角アサギの反応では判断しかねる。つまりはそんな所が二人の意見。
 「でも、これでもダメだったらもう望みはないわね?」
 「そうだね、淡ちゃん。死んでもここにいれてもらわないと」
 アサギを完全に殺しにくる事を誓う二人。

 「嫌です。嫌ですよ」
 こちらでは兼拍が駄々を捏ねているような展開になっていた。
 互いが互い先言うことはわかってはいるがどちらも譲れない事のために言い合っていた。
 「やだやだうるせー。さすがに三人とか無理だろ。」
 段々と言い合いになりつつある、二人の会話。収集がつかなくなる。互いにその事は理解しているが譲れない。
 そんな事をしていると第三者が現れる。
 「おお、アサギじゃん。ここにいるなんて久々だよな?何してんだ?」
 現れたのはアサギの知り合いらしい人物。これといった特徴はないが強者の風格を感じていた兼拍。
 「おお?楠原くすはらか?いいところに」
 どうにかしてくれと泣きつくアサギ。楠原は笑いながら、どうした?と優しくなだめるが話がわからないのでなにもできない。
 「実はさ、……………………」

と、説明する事数分。楠原の理解力は早い。
 「なるほどなぁ」
 「このポンコツどもをどうにかしてくれると助かる」
 しかめっ面で頼むアサギ。それを笑いながら
 「どうにかしろといわれてもね。アサギはどうしたいの?」
 「コイツだけなら兎も角、二人増えるってのはキツイ。カバーしきれない。てかめんどくさい」
 散々の言いように兼拍が突っかかる。
 「確かにそうかもですが私たちだって頑張ります」
 「頑張ってどうこうできることじゃ……」
 「ハイハイ、また言い合いになってるよ。じぁアサギはどうしたい?」
 ひとまず話が進まないのでアサギと兼拍を引き剥がす。そしてまずはアサギの話から聞く。
 「三人抱えるのはごめんだ」
 単刀直入に。めんどくさいと。実際そうなるであろう事が予測されるし、楠原としてもアサギの言い分には同意。
 自分だけ苦労するのはごめんだと。
 「なるほどな。で、彼女はどう思ってるのだい?」
 「私はチームにいれてくれる人が限られているので出来るだけ一緒にいてくれる人は見捨てたくないです」
 アサギには申し訳ないという心からかしゅんと項垂れる。
 「んーわかった。じゃあまずはアサギ。お前はなぜこの子を仲間に?」
 「気分」
 「言うと思ったー」
 ソッコーで返ってきた言葉には予想済みのようで、額に手を当てた。
 「それさぁ、自分が悪いんじゃない?」
 「…………………」
 何も言い返せないアサギ。
 「で、君なんだけどアサギに固執する理由は何かな?」
 「……私を嫌わなかった、からです」
 「これ完全アサギ悪くない?」
 全くもってごもっともなのだがアサギは素直に首肯くことができない。アサギ自身よくわからないが本能が警告してくるのだ。良くない、と。
 「アサギ、
 何かの暗示だろうか。それともただの励ましや説得だろうか。アサギ意外には伝わらない言葉にアサギの心が動いた。
 「………はぁ、やれやれ。仕方ない、ポンコツたちで切り抜けてやりますか」
 ため息の後に現れるアサギの意思。殺意に近いそれは兼拍の神経に波を立てる。
 「あいつら待たせてるし、行きますか」
 ため息は相変わらずついているがどこか少し吹っ切れたのか迷いなく戻っていく。
 「あの、ありがとうございます」
 「え、ああ。別になにもしてないよ。でも謝るのはこっちかな?」
 「どういう…………」
 兼拍が意味を聞く前に楠原は答えた。
 「余計なことしちまったかな。アサギあいつがあの笑いを浮かべたときは何か企んでる時だからな」
 苦笑いをして見せる。しかしそこには恐れかどこか不安さが滲み出ていた。
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