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3 力と戦術
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やっと戻ってきたアサギ。そして兼拍、の後ろには念のためとついてきた楠原。
先についたアサギ。その後ついた二人。今起こっていた光景を目の当たりにした。
「ホントにないわー。そいつ絶対どうかしてるって(笑)」
見知らぬ男が二人。いかにもチンピラそうとしか言えなかった。
「だよねぇ?こんな雑魚とチーム?笑いもんだわ」
言いたい放題いった後ゲラゲラと笑う二人。周りは見ていたが知っている。可哀想と思っても助ける者などいはしない。
「こんな使えない力じゃあ捨て駒が関の山だろ?」
「いやいや、どうせ見捨てられるって」
何も言い返せない宮越と茅世弥はただグッと堪えて聞かないふりをしていた。
「てか、あれだろ?そのチーム組もうってやつがさ、あの何もできない厄魔族なんだろ、たかが知れてるって」
誘ってくれた相手である兼拍の事すら馬鹿にされ、見ている事しか、聞くことしかできない二人の目元には涙が浮かぶ。
兼拍も限界だったようで一歩踏み込んだ。がそれより先に動いたアサギ。
「なぁ、何でお前ら俺の仲間馬鹿にしてんの?」
優しい口調。しかし目には明らかな殺意。開かれた瞳孔には怒りが感じる。
これほどにもないぐらいに怒りをあらわにしたアサギを見るのは兼拍を含め楠原ですら初めてだった。
「ああん?何でって、馬鹿にしなきゃ逆におかしいだろ?雑魚だし、使えないし、何より勝てないだろ?」
笑いを止めない二人。アサギ介入により宮越と茅世弥はポカンとしているが兼拍は怒りで震えていた。
「なるほど、勝てないか。お前らはこの三人より強いのか?」
三人とは、指差された兼拍、宮越、茅世弥のこと。
「はあ?当たり前だろ?」
「むしろ負ける方が難しいっての」
完全に舐めている、よりかはもう通り越し眼中にないというほどだった。
「んなら勝負しよーぜ俺らとあんたらでさ」
大胆不敵な宣戦布告。三人は驚愕。二人は半笑いでやれやれと余裕を見せる。
「構わないぜ?で、お前たちが負けたら?」
「命かけるよ」
誰もが驚きの表情。
「なに言って……」
兼拍が止めようとしたがすでに遅い。
「オッケー、で万が一でもそっちが勝ったらどうしてほしい?」
「こいつらに謝れ。全神経、精神込めてな」
「いーぜ。やってやるよ」
勝手に進む話。アサギを抜いて誰もが置き去りの出来事。
試合は二対四になったが到底戦えたものではないと周りにいた野次馬含め誰もが思ったこと。
足早に対戦ルームへと行くアサギに楠原が問う。
「おい、アサギ。勝算はあるのか?」
その問に対し
「愚問だな。楠原、俺は勝てない戦いを無駄に挑んだことはあったか?」
と、回答。振り向くこともなく速攻で返す。
三人はいそいそとアサギについていくが今なお理解が追い付かない。
戦闘ルームへついた四人。既に二人はついていて試合開始のボタンひとつでもう始めることができること、試合フィールドはこちらが決めていいこと。入ってきて早々にそれを理解した。
「あ、あの、どうするんですか?無謀過ぎますよ」
アサギが挑発に乗り、始まった戦い、負け確実の戦いにかりたてたれ不安一杯の三人。
「あの、ごめんなさい」
「え?謝んなくていいよ。遅かれ速かれこうなってただろうし」
いつも通りの口調で話すが先ほどの威嚇した様子のアサギを見ればその矛先が自分じゃなくても躊躇うのは無理もない。そしてそれが自分たちを守ってくれたものとしても。
「確認するけど戦ったことは?」
「戦闘経験はあります」
「私もよ」
宮越と茅世弥はあり。
「私は………」
兼拍はくびを横に降る。つまりなし。申し訳無さそうにうつむき、自分が足を引っ張っているのはあの二人に言われなくともわかっていた。が………
「互いの魔法の欠点は知ってるな?」
それはアサギがくる前に散々自分たちの無力さを語り合った。そこを含めての友情が芽生えたのだ。
誰一人疑う事なく首肯く。
「さて、戦い方だけど俺が指示だしてその指示にしたがってくれ。出来るだけ分かりやすく説明、指示するから」
「はい」
「わかりました」
「ええ」
いい返事だけど同時だと全くわかんないなぁと緊張感のないことを思いながら開始のボタンを押した。
選ばれたフィールドは普通ごく一般的に使用されるフィールド、市街地。大小様々な建物と道がある仮想空間へ飛ばされる。
「さて、」
開始早々にアサギの手にレーダーが展開される。
このレーダーはガーディアン隊員の標準装備で魔力があるものなら誰でも使える。
半透明なレーダーは魔力を持つものを映す。
隊員のなかでは単に「レーダー」や「魔力レーダー」と呼ばれる。
何の設定もいじっていないためチーム纏まって転送されたようだ。
すぐ横に三人。そして離れたところに二人の魔力をレーダーがキャッチする。
写し出された二人は迷わずこっちへ向かってくる。
(レベルは低いだろうと思ったがレーダーぐらいは知ってるか、さて)
三人も遅れてレーダーを確認する。向かってきている三人を見てアサギの指示を待つ。
焦りの表情、不安、恐怖などいろいろあるが怯えているのは一致。早々に指示が必要だ。
(考えろ。自分の手札は?強みは?)
目を閉じ、リラックスして思考を巡らせる。
どんどん近づく二人。
(相手はこっちの力を知っているこちらは情報なし。一発本番が有効か
相手は油断している
人数の有利
一番警戒されてるのは俺か…………………)
アサギの脳内で整理されていく思考。それがやがて作戦になる。
目を開けるアサギ。心配そうに除き混む三人。
「作戦を伝える」
変わって二人の立ち位置。活発にしゃべりアサギの喧嘩を買ったのが川崎 大賀、そしてちょくちょく口を挟む中城 悠人。その二人はどちらも剣持ち。勝つ自身しかない二人堂々と突っ込んで行く。
「お?動きあり。一人ステルス」
レーダーを随時確認していたのは中城。
ステルスとはレーダーなど探知を無効にするガーディアン標準装備のひとつ。ただし使用中は魔法が使えないデメリットがある。
それをレーダーから消えたことで探知した中城。川崎にしっかり伝える。
「了解。恐らくあのアサギってやつか」
恐らくアサギがメイン、攻撃役でくることは絶対だと二人である程度作戦は立てていた。ステルスを使うことにより逆にアサギの位置がわかったというわけだ。
「無視して最初は雑魚だ」
止まる素振りもなく二人は進行を続ける。
そんななか近づいてきたところでまた動きを見せた。レーダーを見れば簡単だった。
「おいおい、待ち伏せているつもりか?」
映ったのは道を真っ直ぐ行ったところのある路地に二人がそれぞれ対面的に入り待ち伏せ。そしてもう少し後ろの方では一人がこれまた路地に入り気を伺っていた。
「正気かよ?」
「はぁーあ、終わりだな」
勝利を確信した。それを証拠として終わそうとしてかその道にたどり着いた。
道から見ると誰もいないように見えるが三人隠れていることはレーダーで確かだ。
「奴らは魔法がロクに使えない。近づけばすぐにボロがでる」
どんどん近づいていく二人。距離にして約五メートルのところまで来た。
そこでもまた気がついた。
一番後ろの奴が膨大な魔力をためている。レーダーを見なくとも可視化するほどの魔力が集まっていた。その招待は直ぐに察しがついた。
「あれは厄魔族の魔力だ、量的にな」
「つまり囮だな」
兼拍が魔法を扱うことができず、量もまた膨大なのを知っている。戦えない奴をあえて目立たせる作戦だと見破る。
「さて、そろそろ終わりの時間だな?」
剣を抜き、突撃。
するはずだった。
ヒュンッヒヒュンッ
風をきる音ともに放たれたのは弓。それも魔力性の物だ。それが足元に着弾。
剣を抜く動作がなければ確実に刺さっていた。
しかしそれよりも、だ。
「な、なぜそこにアサギが?」
魔法で作られた弓。魔法がロクに使えるのはアサギだけ。つまり二人から見て右側から放たれた弓、その放った人はアサギ。
「おい、アサギは裏取りじゃなかったのかよ?」
自分たちの作戦が外れ、動揺が動きに現れた。
その証拠に足が止まっていた。
再度構えられる弓。ギリギリと玄が引っ張られ弓が構えられるのを音で感じる。
「くそっ、弓ぐらい剣で………」
弾いてやる、とでも言おうとしたのだろうか?しかし裏切る現実。放たれたのは奥からの魔法弾だった。属性は岩。
「ぐあああ、くっ」
「くそっ!」
シールドを構えていればまた違ったかもしれない。
「魔法だと?アサギは手前右じゃないのか?」
焦り、惑わす四人の動き。どう考えても初心者、ポンコツたちの動きではない。
追撃が続く。
二人からみて左側の路地からは何も見えないが手だけが見えた。何かしている。しかし二人には何をしているかはわかならなかった。
そして突如現れる爆発。
ドゴゴゴゴーーーッ
「うわあぁー」
「何が起こってやがる?」
その爆発は二人に直撃するわけではなく、二人の足元を抉った。
足場を奪われよろける体。いきなりのことに脳がついていかない。
まるでどっきりにはまったかのような軽いハプニング状態だった。
その隙が命取りになった。
後ろから迫る影。正体など見破る隙もなく中城の首がとんだ。
仮想世界かので死んだわけではないがこの状態がらでは急速な恐怖となるには充分だった。
「うわぁぁぁー」
無様にスッ転びながらも剣を無理に振りまくった。たまたまその後ろから斬った人の腕と足にかすらせる。
反射で後ろに飛び退いた正体は 茅世弥だった。
後ろはアサギではなかったか。が、好都合まずはこいつから。
中城とあては外したがポンコツ一人でいるのは格好の的だった。
しかしそううまくはさせてはくれない。
再度、魔法が飛弾。その飛んできた方、つまり奥の人物からは膨大な魔力はなくなっていた。
陽動の陽動。
もう、後ろ意外の正体意外、どれも川崎からはアサギにしか見えなかった。隅の路地の二人は魔法の弓と爆発、そして奥からは魔法の弾丸、魔法を使えるのはアサギただ一人のはずなのに全員が使う。
見分けなどつかない。
そんな川崎の余裕がさらになくなる。
飛んでくる矢。何かしらの魔力が籠っている。
(くそっ、どうする?)
「………避けちまえばいいんだよっ」
ひらりとかわした川崎。バランスが崩れた状態でかわすのだからそこは誉められたところ。
かわす矢は茅世弥の方へ。逃げられる角度ではなかった。
しめた、と思ったが絶望に変わった。
避ける必要などなかったのだ。何だってそれは回復の魔法がかかった矢だったのだから。
直撃。茅世弥は傷を一瞬で癒した。
しかしそれにより宮越の場所も把握。あとは二択。
そう悟らせないためかアサギが奥から飛び出した。が、それに反応していた川崎。
「馬鹿が、速まったな!」
構えられた手。アサギに向けられた手のひらからは魔法が放たれた。
炎の初級魔法。『炎の弾丸』。威力は弱いが辺りどころによれば致命傷。即退場させることもできる魔法だ。
突発的に突っ込んだためアサギはシールドを展開。
シールドもガーディアン隊員の標準装備。だいたいの魔力的攻撃を防ぐが威力が強かったりシールドを広く使ったりすると割れる。
そのシールドを頭を中心に展開。何とか頭は守れたが土手腹に数発被弾。
「これで戦闘経験の薄いポンコツどもなら怯むはず!」
が、ここまできて予想は上回る。
兼拍の持っていたナイフが川崎の首もとを、後ろから茅世弥のナイフが川崎の腹を、切り裂いた。
やはり川崎の最後の読みは兼拍が余った左の路地で正解だったが、これまで全て気付くのが遅すぎた。
川崎は声をあげることもなくパリィィィィンと音とともに砕け、仮想世界から消えた。
敵の全滅。それは勝利の意味を表していた。
戦闘終了
込み上げてくる喜び。三人は大いに喜んだ。
その間に元の戦闘ルームへと戻された。が、喜びは増す一方。
ふぅ、とアサギがため息をついたがそれに構わず女子三人によるワイワイムードに潰される。
「すごい、すごいです。アサギの作戦。全て的中してしまうとは」
「やった、やったよ。初めて勝てたね、淡ちゃん」
「ええ、やったわね花織」
などなどなど。これが数分続く。
やっと出られたのはアサギが
「うるせー」
と、けっこうがちトーンで怒鳴ってからだ。そこで冷静さをようやく取り戻した三人は静かにルームからでた。
するとそこには楠原が待っていた。
「見事だったなぁ?アサギ。鈍ってなくて何よりだよ」
楠原もどこか嬉しそうに言う。
「まぁね。こればっかはね。専売特許だし」
誉められても淡々と返すアサギ。
この人は?と宮越と茅世弥が聞くので紹介すると楠原は誉めた。それによりまたドンチャン騒ぎのムードになりそうだったので睨みつける。楠原も含めて。
こんなにも喜んでいるのは初勝利というのがデカイが、それまでに導いたアサギの作戦にだろう。
遡ること、戦闘前。
アサギが目を開けたあと、 すぐに作戦の内容が伝わった。
内容は
まず、注意しているのはアサギだけであること。
相手は完全にポンコツということからなめていること。またそのポンコツが故に魔法=アサギであると決めつけるであろう。
と、三人に伝えた。
次に魔法を使っているように見せるための細工。
宮越にあらかじめアサギが魔法により作成した弓と矢を渡す。
茅世弥には同じようにナイフを。
兼拍にも渡す。
そして配置と仕掛け
爆発の原因はワイヤーで斬った衝撃で爆発するように仕掛けた簡易的な罠。そのきる役が兼拍、敵から左側に見える位置に、
宮越を反対側で弓の待機。
茅世弥を裏取り役として配置。
アサギ自分自身は一番遠い、敵が一番警戒するアサギをわざと遠くへ。
そして作戦の流れ。
裏通り役。一番派手に動かす人物はアサギであると予想することを予測したアサギは茅世弥に行かせ、放置してもらう。
来た二人を宮越の魔法と見せかけた弓で足止め。
アサギの魔力解放し、兼拍に見させる。
兼拍は気を伺い、ワイヤーの切断。
足場を失う二人。警戒が薄れた茅世弥の不意討ち。
アサギの魔法弾が被弾。
傷ついた茅世弥を癒すため回復の矢を放つ。
最後の最後で念願のアサギの登場。わざと遠くから。狙わせて二人のマークが消えた瞬間に背後からの奇襲。
アサギを囮に使った方法で終了。
ここまでが全てアサギの口から話された。これを聞いた時は不安でしかたがなかった三人もアサギのアドバイス、ぶれない作戦により三人は迷いなく動くことができたのだ。
アサギは最初からこれを狙っていた、そう誰もが最後に気づかされた。
周りで野次馬していた人たちはアサギのその技量に圧巻。言葉もなくすほどだった。
そして最後の最後まで自分は囮だった。結局戦ったのは実質ポンコツと呼ばれた、戦うことのできないと言われ、見捨てられ続けた三人。
そんなポンコツたちでも戦術だけで一回り二回りも強い人に勝ってしまったのだ。
最後にアサギは群衆たち、三人にも含めて言った。
「どんなショボい奴でも負け確定なんてのはない。工夫すれば勝てる。つまり〝ポンコツ能力は使いよう〟だ」
その言葉は誰の耳にも残りこれから戦いに大きな変化をもたらすのであった。
先についたアサギ。その後ついた二人。今起こっていた光景を目の当たりにした。
「ホントにないわー。そいつ絶対どうかしてるって(笑)」
見知らぬ男が二人。いかにもチンピラそうとしか言えなかった。
「だよねぇ?こんな雑魚とチーム?笑いもんだわ」
言いたい放題いった後ゲラゲラと笑う二人。周りは見ていたが知っている。可哀想と思っても助ける者などいはしない。
「こんな使えない力じゃあ捨て駒が関の山だろ?」
「いやいや、どうせ見捨てられるって」
何も言い返せない宮越と茅世弥はただグッと堪えて聞かないふりをしていた。
「てか、あれだろ?そのチーム組もうってやつがさ、あの何もできない厄魔族なんだろ、たかが知れてるって」
誘ってくれた相手である兼拍の事すら馬鹿にされ、見ている事しか、聞くことしかできない二人の目元には涙が浮かぶ。
兼拍も限界だったようで一歩踏み込んだ。がそれより先に動いたアサギ。
「なぁ、何でお前ら俺の仲間馬鹿にしてんの?」
優しい口調。しかし目には明らかな殺意。開かれた瞳孔には怒りが感じる。
これほどにもないぐらいに怒りをあらわにしたアサギを見るのは兼拍を含め楠原ですら初めてだった。
「ああん?何でって、馬鹿にしなきゃ逆におかしいだろ?雑魚だし、使えないし、何より勝てないだろ?」
笑いを止めない二人。アサギ介入により宮越と茅世弥はポカンとしているが兼拍は怒りで震えていた。
「なるほど、勝てないか。お前らはこの三人より強いのか?」
三人とは、指差された兼拍、宮越、茅世弥のこと。
「はあ?当たり前だろ?」
「むしろ負ける方が難しいっての」
完全に舐めている、よりかはもう通り越し眼中にないというほどだった。
「んなら勝負しよーぜ俺らとあんたらでさ」
大胆不敵な宣戦布告。三人は驚愕。二人は半笑いでやれやれと余裕を見せる。
「構わないぜ?で、お前たちが負けたら?」
「命かけるよ」
誰もが驚きの表情。
「なに言って……」
兼拍が止めようとしたがすでに遅い。
「オッケー、で万が一でもそっちが勝ったらどうしてほしい?」
「こいつらに謝れ。全神経、精神込めてな」
「いーぜ。やってやるよ」
勝手に進む話。アサギを抜いて誰もが置き去りの出来事。
試合は二対四になったが到底戦えたものではないと周りにいた野次馬含め誰もが思ったこと。
足早に対戦ルームへと行くアサギに楠原が問う。
「おい、アサギ。勝算はあるのか?」
その問に対し
「愚問だな。楠原、俺は勝てない戦いを無駄に挑んだことはあったか?」
と、回答。振り向くこともなく速攻で返す。
三人はいそいそとアサギについていくが今なお理解が追い付かない。
戦闘ルームへついた四人。既に二人はついていて試合開始のボタンひとつでもう始めることができること、試合フィールドはこちらが決めていいこと。入ってきて早々にそれを理解した。
「あ、あの、どうするんですか?無謀過ぎますよ」
アサギが挑発に乗り、始まった戦い、負け確実の戦いにかりたてたれ不安一杯の三人。
「あの、ごめんなさい」
「え?謝んなくていいよ。遅かれ速かれこうなってただろうし」
いつも通りの口調で話すが先ほどの威嚇した様子のアサギを見ればその矛先が自分じゃなくても躊躇うのは無理もない。そしてそれが自分たちを守ってくれたものとしても。
「確認するけど戦ったことは?」
「戦闘経験はあります」
「私もよ」
宮越と茅世弥はあり。
「私は………」
兼拍はくびを横に降る。つまりなし。申し訳無さそうにうつむき、自分が足を引っ張っているのはあの二人に言われなくともわかっていた。が………
「互いの魔法の欠点は知ってるな?」
それはアサギがくる前に散々自分たちの無力さを語り合った。そこを含めての友情が芽生えたのだ。
誰一人疑う事なく首肯く。
「さて、戦い方だけど俺が指示だしてその指示にしたがってくれ。出来るだけ分かりやすく説明、指示するから」
「はい」
「わかりました」
「ええ」
いい返事だけど同時だと全くわかんないなぁと緊張感のないことを思いながら開始のボタンを押した。
選ばれたフィールドは普通ごく一般的に使用されるフィールド、市街地。大小様々な建物と道がある仮想空間へ飛ばされる。
「さて、」
開始早々にアサギの手にレーダーが展開される。
このレーダーはガーディアン隊員の標準装備で魔力があるものなら誰でも使える。
半透明なレーダーは魔力を持つものを映す。
隊員のなかでは単に「レーダー」や「魔力レーダー」と呼ばれる。
何の設定もいじっていないためチーム纏まって転送されたようだ。
すぐ横に三人。そして離れたところに二人の魔力をレーダーがキャッチする。
写し出された二人は迷わずこっちへ向かってくる。
(レベルは低いだろうと思ったがレーダーぐらいは知ってるか、さて)
三人も遅れてレーダーを確認する。向かってきている三人を見てアサギの指示を待つ。
焦りの表情、不安、恐怖などいろいろあるが怯えているのは一致。早々に指示が必要だ。
(考えろ。自分の手札は?強みは?)
目を閉じ、リラックスして思考を巡らせる。
どんどん近づく二人。
(相手はこっちの力を知っているこちらは情報なし。一発本番が有効か
相手は油断している
人数の有利
一番警戒されてるのは俺か…………………)
アサギの脳内で整理されていく思考。それがやがて作戦になる。
目を開けるアサギ。心配そうに除き混む三人。
「作戦を伝える」
変わって二人の立ち位置。活発にしゃべりアサギの喧嘩を買ったのが川崎 大賀、そしてちょくちょく口を挟む中城 悠人。その二人はどちらも剣持ち。勝つ自身しかない二人堂々と突っ込んで行く。
「お?動きあり。一人ステルス」
レーダーを随時確認していたのは中城。
ステルスとはレーダーなど探知を無効にするガーディアン標準装備のひとつ。ただし使用中は魔法が使えないデメリットがある。
それをレーダーから消えたことで探知した中城。川崎にしっかり伝える。
「了解。恐らくあのアサギってやつか」
恐らくアサギがメイン、攻撃役でくることは絶対だと二人である程度作戦は立てていた。ステルスを使うことにより逆にアサギの位置がわかったというわけだ。
「無視して最初は雑魚だ」
止まる素振りもなく二人は進行を続ける。
そんななか近づいてきたところでまた動きを見せた。レーダーを見れば簡単だった。
「おいおい、待ち伏せているつもりか?」
映ったのは道を真っ直ぐ行ったところのある路地に二人がそれぞれ対面的に入り待ち伏せ。そしてもう少し後ろの方では一人がこれまた路地に入り気を伺っていた。
「正気かよ?」
「はぁーあ、終わりだな」
勝利を確信した。それを証拠として終わそうとしてかその道にたどり着いた。
道から見ると誰もいないように見えるが三人隠れていることはレーダーで確かだ。
「奴らは魔法がロクに使えない。近づけばすぐにボロがでる」
どんどん近づいていく二人。距離にして約五メートルのところまで来た。
そこでもまた気がついた。
一番後ろの奴が膨大な魔力をためている。レーダーを見なくとも可視化するほどの魔力が集まっていた。その招待は直ぐに察しがついた。
「あれは厄魔族の魔力だ、量的にな」
「つまり囮だな」
兼拍が魔法を扱うことができず、量もまた膨大なのを知っている。戦えない奴をあえて目立たせる作戦だと見破る。
「さて、そろそろ終わりの時間だな?」
剣を抜き、突撃。
するはずだった。
ヒュンッヒヒュンッ
風をきる音ともに放たれたのは弓。それも魔力性の物だ。それが足元に着弾。
剣を抜く動作がなければ確実に刺さっていた。
しかしそれよりも、だ。
「な、なぜそこにアサギが?」
魔法で作られた弓。魔法がロクに使えるのはアサギだけ。つまり二人から見て右側から放たれた弓、その放った人はアサギ。
「おい、アサギは裏取りじゃなかったのかよ?」
自分たちの作戦が外れ、動揺が動きに現れた。
その証拠に足が止まっていた。
再度構えられる弓。ギリギリと玄が引っ張られ弓が構えられるのを音で感じる。
「くそっ、弓ぐらい剣で………」
弾いてやる、とでも言おうとしたのだろうか?しかし裏切る現実。放たれたのは奥からの魔法弾だった。属性は岩。
「ぐあああ、くっ」
「くそっ!」
シールドを構えていればまた違ったかもしれない。
「魔法だと?アサギは手前右じゃないのか?」
焦り、惑わす四人の動き。どう考えても初心者、ポンコツたちの動きではない。
追撃が続く。
二人からみて左側の路地からは何も見えないが手だけが見えた。何かしている。しかし二人には何をしているかはわかならなかった。
そして突如現れる爆発。
ドゴゴゴゴーーーッ
「うわあぁー」
「何が起こってやがる?」
その爆発は二人に直撃するわけではなく、二人の足元を抉った。
足場を奪われよろける体。いきなりのことに脳がついていかない。
まるでどっきりにはまったかのような軽いハプニング状態だった。
その隙が命取りになった。
後ろから迫る影。正体など見破る隙もなく中城の首がとんだ。
仮想世界かので死んだわけではないがこの状態がらでは急速な恐怖となるには充分だった。
「うわぁぁぁー」
無様にスッ転びながらも剣を無理に振りまくった。たまたまその後ろから斬った人の腕と足にかすらせる。
反射で後ろに飛び退いた正体は 茅世弥だった。
後ろはアサギではなかったか。が、好都合まずはこいつから。
中城とあては外したがポンコツ一人でいるのは格好の的だった。
しかしそううまくはさせてはくれない。
再度、魔法が飛弾。その飛んできた方、つまり奥の人物からは膨大な魔力はなくなっていた。
陽動の陽動。
もう、後ろ意外の正体意外、どれも川崎からはアサギにしか見えなかった。隅の路地の二人は魔法の弓と爆発、そして奥からは魔法の弾丸、魔法を使えるのはアサギただ一人のはずなのに全員が使う。
見分けなどつかない。
そんな川崎の余裕がさらになくなる。
飛んでくる矢。何かしらの魔力が籠っている。
(くそっ、どうする?)
「………避けちまえばいいんだよっ」
ひらりとかわした川崎。バランスが崩れた状態でかわすのだからそこは誉められたところ。
かわす矢は茅世弥の方へ。逃げられる角度ではなかった。
しめた、と思ったが絶望に変わった。
避ける必要などなかったのだ。何だってそれは回復の魔法がかかった矢だったのだから。
直撃。茅世弥は傷を一瞬で癒した。
しかしそれにより宮越の場所も把握。あとは二択。
そう悟らせないためかアサギが奥から飛び出した。が、それに反応していた川崎。
「馬鹿が、速まったな!」
構えられた手。アサギに向けられた手のひらからは魔法が放たれた。
炎の初級魔法。『炎の弾丸』。威力は弱いが辺りどころによれば致命傷。即退場させることもできる魔法だ。
突発的に突っ込んだためアサギはシールドを展開。
シールドもガーディアン隊員の標準装備。だいたいの魔力的攻撃を防ぐが威力が強かったりシールドを広く使ったりすると割れる。
そのシールドを頭を中心に展開。何とか頭は守れたが土手腹に数発被弾。
「これで戦闘経験の薄いポンコツどもなら怯むはず!」
が、ここまできて予想は上回る。
兼拍の持っていたナイフが川崎の首もとを、後ろから茅世弥のナイフが川崎の腹を、切り裂いた。
やはり川崎の最後の読みは兼拍が余った左の路地で正解だったが、これまで全て気付くのが遅すぎた。
川崎は声をあげることもなくパリィィィィンと音とともに砕け、仮想世界から消えた。
敵の全滅。それは勝利の意味を表していた。
戦闘終了
込み上げてくる喜び。三人は大いに喜んだ。
その間に元の戦闘ルームへと戻された。が、喜びは増す一方。
ふぅ、とアサギがため息をついたがそれに構わず女子三人によるワイワイムードに潰される。
「すごい、すごいです。アサギの作戦。全て的中してしまうとは」
「やった、やったよ。初めて勝てたね、淡ちゃん」
「ええ、やったわね花織」
などなどなど。これが数分続く。
やっと出られたのはアサギが
「うるせー」
と、けっこうがちトーンで怒鳴ってからだ。そこで冷静さをようやく取り戻した三人は静かにルームからでた。
するとそこには楠原が待っていた。
「見事だったなぁ?アサギ。鈍ってなくて何よりだよ」
楠原もどこか嬉しそうに言う。
「まぁね。こればっかはね。専売特許だし」
誉められても淡々と返すアサギ。
この人は?と宮越と茅世弥が聞くので紹介すると楠原は誉めた。それによりまたドンチャン騒ぎのムードになりそうだったので睨みつける。楠原も含めて。
こんなにも喜んでいるのは初勝利というのがデカイが、それまでに導いたアサギの作戦にだろう。
遡ること、戦闘前。
アサギが目を開けたあと、 すぐに作戦の内容が伝わった。
内容は
まず、注意しているのはアサギだけであること。
相手は完全にポンコツということからなめていること。またそのポンコツが故に魔法=アサギであると決めつけるであろう。
と、三人に伝えた。
次に魔法を使っているように見せるための細工。
宮越にあらかじめアサギが魔法により作成した弓と矢を渡す。
茅世弥には同じようにナイフを。
兼拍にも渡す。
そして配置と仕掛け
爆発の原因はワイヤーで斬った衝撃で爆発するように仕掛けた簡易的な罠。そのきる役が兼拍、敵から左側に見える位置に、
宮越を反対側で弓の待機。
茅世弥を裏取り役として配置。
アサギ自分自身は一番遠い、敵が一番警戒するアサギをわざと遠くへ。
そして作戦の流れ。
裏通り役。一番派手に動かす人物はアサギであると予想することを予測したアサギは茅世弥に行かせ、放置してもらう。
来た二人を宮越の魔法と見せかけた弓で足止め。
アサギの魔力解放し、兼拍に見させる。
兼拍は気を伺い、ワイヤーの切断。
足場を失う二人。警戒が薄れた茅世弥の不意討ち。
アサギの魔法弾が被弾。
傷ついた茅世弥を癒すため回復の矢を放つ。
最後の最後で念願のアサギの登場。わざと遠くから。狙わせて二人のマークが消えた瞬間に背後からの奇襲。
アサギを囮に使った方法で終了。
ここまでが全てアサギの口から話された。これを聞いた時は不安でしかたがなかった三人もアサギのアドバイス、ぶれない作戦により三人は迷いなく動くことができたのだ。
アサギは最初からこれを狙っていた、そう誰もが最後に気づかされた。
周りで野次馬していた人たちはアサギのその技量に圧巻。言葉もなくすほどだった。
そして最後の最後まで自分は囮だった。結局戦ったのは実質ポンコツと呼ばれた、戦うことのできないと言われ、見捨てられ続けた三人。
そんなポンコツたちでも戦術だけで一回り二回りも強い人に勝ってしまったのだ。
最後にアサギは群衆たち、三人にも含めて言った。
「どんなショボい奴でも負け確定なんてのはない。工夫すれば勝てる。つまり〝ポンコツ能力は使いよう〟だ」
その言葉は誰の耳にも残りこれから戦いに大きな変化をもたらすのであった。
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