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閑話3 窮地(side:ルーク)

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「シャノン!ルーク!お前らすぐにここから離れろ!」
「え?」
シアの声に理解が追い付かない

「何で?」
シャノンも同じらしく固まった

「多分…このブレスに毒が混じってる…!いいから行け!」
シアは叫びながら腕を切り落とす
確かにさっきブレスを放ったように見えた
でもシアの動きは変わらない

毒が混じってるようには僕には見えない
離れるよりもとっとと片付ける方がいい
そう思いながら倒す方法を考える

「何よこれ!」
その思考を遮ったのはシャノンの声だった

「どうした?」
「見えない壁が…魔法が跳ね返された!」
よく見れば空間が隔離されているのが分かる

「おい!シア!」
空間の切れ目を殴りながらシアに呼びかけてもその声が届かない
中からの音も声も聞こえてこない

「シアはブレスに毒が混じってるって言ったよな?」
「言ってた…」
だとしたらこの中の空間は…

「シア!コレ解除しろ!」
「シア!」
僕の脳裏に首を切り落として返り血を浴びた時の苦しみがよみがえる
空気中の毒を皮膚から取り込めば僕が取り込んだ量とは比べものにならない

「シアの顔色が…」
シャノンがその場にへたり込んで泣きだした

壊れない壁
その中に明らかに弱っていくシアがいるのに僕には何もできない

物心ついたころから僕にとっての絶対強者の兄だった
疲労で倒れるまで弱った姿を見たことは無かった
何があっても、どんな時でも必ず道を示してくれた
そのシアが何とか立ってるだけの状態で、僕たちを守ってるということだけが分かる

「くそっ…!」
悔しさに飲み込まれそうで
でも目を反らすことだけは出来なかった
シアは目の前で何かを口に入れた
多分あれは母さんに持たされた薬だろう

「シャノン」
「な…に?」
「念のため貰った毒消し飲んでおこう」
「わか…た」
シャノンは頷いて薬を取り出して飲んだ
僕も同じように口に入れたとき、ポイズンベアの体が地面に倒れ込んだ
そしてシアの体も倒れていく

「シア!!リトス!」
敵はもう身動きを取れないのに壁が消えない
シアの身に何かあればリトスも生きていられないのを思い出した
どちらも僕たちにとって大切な存在だ
殴っても魔法を放っても、スキルを使って切りつけてもダメだった
土を掘り返しても無駄だった

「なんでよぉ…!シア!…お兄ちゃん!!」
ピクリとも動かないシアを目にしながら僕たちは壁を叩き続けていた

「あ…」
跳ね返され続けた手が先に延びたのは辺りが暗くなり始めてからだった

「「シア!」」
シアに駆け寄り呼吸を確かめる

「…生きて…る…」
確かに感じる鼻からの空気の流れに涙が溢れてきた

「良かった…」
シアがどうやって倒したかは分からない
でもポイズンベアは死んでシアが生き残ったことだけは分かる

「リトスは?」
ポーチに触れるともぞもぞと動く気配がする

『キュ』
鳴きながら顔を出したリトスをシャノンが抱き上げた

「リトス…!」
「お前も無事だったんだな。良かった…」
シアもリトスも無事だった
それが何よりうれしかった
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