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102.2度目のオークション

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母さんに聞いてた通り町は随分落ち着きを取り戻していた
レティと一緒に歩いてても余計な女は寄ってこない
もっとも陰で悔しそうな顔をしながら見てくる奴はいるみたいだけど、その辺は気付かないふりしてスルー

『くだものー』
八百屋でリトスがいつものように果物に手を伸ばす
その途端エマリアさんとヨハンさんは固まった
「シア、今…」
ヨハンさんがリトスを指さして口をパクパクしていた
「はは…リトスが進化して意思疎通のスキルを覚えたんだ」
「意思疎通…」
「じゃ、じゃぁ今聞こえた声はやっぱり…」
『これがいー』
リトスはそんな2人を前にマイペースに選んでいたらしい

「リ、リトス?それがいいのか?」
『うん!』
リトスは嬉しそうに頷いてヨハンさんを見た
「…シア、リトス家にくれ」
「無理」
「そう言わずに!」
「色々理由があって無理」
断固拒否するとヨハンさんは項垂れた
「時々顔出すからそれで勘弁な」
そう言っても項垂れてるヨハンさんに笑えて来る

「レティは?」
「私はこれとこれ」
リンゴとブドウを指さした
「了解。じゃぁ今のとリトスの選んだやつ、あと…」
「シアついでにこれも~」
「あ、僕これね」
シャノンとルーク迄選んでくる
「お前ら…」
まぁいいけどさ
「…今の全部まとめてこれで」
俺はギルドカードをエマリアさんに渡す
手際よく処理してカードを返してくれたものの、そのままリトスにサクランボを指し出した
「これもお食べ」
『わーい ありがとー』
リトスはご機嫌で受け取り早速かじりつく
『おいしー』
「そうかい。それは良かった。またおいでねー?」
『うん』
同じくご機嫌のエマリアさんに少し驚きながらも俺達は八百屋を後にした

「シア!あなた達待ってたわ」
ギルドに足を踏み入れた途端キアナさんがそう言った
「そのまま倉庫の方にお願い」
「分かった。もう集まってんの?」
「そうなのよ。お昼の鐘が開始の合図って案内したのに…」
キアナさんがうなだれる
今はまだ朝の鐘が鳴ったところ
時間にして9時くらい
時間を示す鐘は30分おきに1回教会が鳴らす
ただし大きな区切りになる時だけ3回連続で鐘がなる
それが9時の「朝の鐘」、12時の「昼の鐘」、18時の「夜の鐘」だ

「おかげでもううるさくって」
「了解。すぐ倉庫で出すよ」
俺達は急かされるまま倉庫に向かう
「おう、待ってたぞ」
倉庫には20人の大柄な男がスタンバっていた
「…多くね?」
「解体職人こんなにいたんだ…」
「違うってシャノン。一部は鑑定の人だ」
2人の呑気な会話を聞きながら苦笑する
「お前さん達の持ち込む量は半端じゃないからな。ほれ、どこからでもかかってこい」
どーんと構えて言ってくれるのはいいが俺達はただ出すだけなんだよな

「4人って聞いてたから4グループ用意してる。それぞれの列で出して行ってくれ」
「了解。じゃぁ私は一番端っこね」
シャノンはウキウキしながら一番奥の列に行く
そして…

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