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キオクノカケラ
第3話
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つぎの日から李砂は周りの人間に色々聞きまわるようになった
俊の言った『小3』という言葉が引っかかってならなかったのだ
「写真・・・」
何か忘れているのかもしれないと小さい頃からのアルバムを引っ張り出す
「・・・え?」
生まれた頃からの写真をめくっていくとあるページを境にして明らかに写真が抜き取られたとわかる部分が出てくる
「何?」
つい最近まで写真が存在していたのがわかるそのアルバムに胸が高鳴る
「お母さん!」
李砂はアルバムを持って台所に駆け込む
「どうしたの?そんなに慌てて」
「これ、私の写真抜いた?」
「え・・・?」
明らかに戸惑いの色がうかぶ
「どう見ても写真があったって感じでしょ?しかも小3から最近の分までかなりの量・・・」
「・・・何か思い出したの?」
その言葉に母を見る
動揺しているのか目が泳いでいる
「・・・どういうこと?」
そうたずねながらいつもの映像を思い出す
「あ・・・な・・・何でもないのよ。もうご飯だから片付けてらっしゃい」
「お母さん?!」
明らかにおかしな母の態度に怒りさえ覚えた
自分は何か大切なことを忘れているのかもしれない
母の態度を見て初めて李砂はそう感じていた
夕飯を食べてから中学のクラスメートに電話してみても示し合わせたかのようにわからないの一点張りだった
「俊君」
昼休みに拓弥の親友である俊に声をかける
「あぁどうした?」
「・・・ちょっといいかな?」
「おう」
俊は頷いて教室を出ると屋上に続く階段を上がる
「・・・で?」
「うん・・・拓弥君の事なんだけど」
「あぁ」
特に驚いた様子もなく頷く
「この前拓弥君は小3の頃から・・・って言ってたでしょ?」
「・・・あぁ」
「どれだけ考えても心当たりがないんだよね。私は高校で会ったって思ってたし・・・」
「・・・ずっと一緒だったさ。俺もお前も・・・それに・・・」
「え?」
「小3でお前が転向してきてから中学卒業前にあの事件が起きるまでは・・・」
「事件・・・?」
その言葉に心臓を鷲づかみにされたような気がした
「頼むから思い出してくれよ。俺今の拓弥見てんの限界だ・・・」
「俊君?わかんないよ・・・事件って何?私本当に知らない」
「知らなくていいんだよ」
突然投げかけられた声に振り向くと拓弥が立っていた
「余計な事言うな俊」
「けどお前・・・」
「いいから。二人にしてくれ」
「・・・わかった」
俊はため息混じりに言うと戻っていった
「変だよ2人とも。2人だけじゃない両親も友達もみんな変・・・」
「李砂・・・」
「アルバム見たら写真がごっそり抜けてるし友達に聞いてもはぐらかされるし・・・両親も何か隠してる・・・ねぇ私に何かあったの?」
「・・・」
「あったのなら教えてよ!私一人何もわからなくて・・・なのに腫れ物に触るみたいにされて・・・もう沢山だよ・・・」
李砂の目から涙がこぼれる
どうしようもない不安が心の中で渦巻いていた
「・・・ったら・・・」
「?」
「だったら思い出せよ!」
「・・・た・・・くやく・・・?」
壁を殴りつけた拓弥に一種の殺気を感じた
『・・・え?』
突然何かの映像が頭の中を流れた
4人の女の子に囲まれてる女の子はおびえていた
その女の子の体中から血が流れている
「な・・・に・・・?」
割れるような痛みに頭を抱え込む
「李砂?」
「・・・痛・・・」
意識が薄れる
「おい!李砂!」
崩れ落ちた李砂を拓弥が抱きあげた
『あれは亜紀達・・・』
李砂はこの時忘れてしまっていた全ての記憶を思い出した
何度も現れた映像は過去の出来事
自分で忘れてしまいたくて封じ込めていた記憶だった
「私・・・」
かすれるように発せられた言葉とともに李砂の意識は無くなった
拓弥はすぐに病院まで運ぶと李砂のウチに連絡を入れた
「拓弥君!」
李砂の両親はすぐに病院へやってきた
その少し後に俊も駆けつけてきた
「李砂は?」
「・・・分かりません。意識を失って・・・」
拓弥はこぶしを握り締めていた
「どうしてこんな事に・・・」
「あの子変だったのよ。突然アルバムなんて引っ張り出して・・・」
母が泣き崩れる
「・・・俺がつい口走ったから・・・」
俊がかすれる声で言った
「俺拓弥は小3の頃から李砂しか見てないって・・・だからあいつ・・・」
「俊・・・」
「何も思い出さずにこのままいた方が幸せなのかもしれない。それはわかってるけど俺今のお前も以前の明るさ失った李砂も見てられなくて・・・」
俊は壁を殴りつけた
「思い出さない方がいいんだ。どんな理由にしろ親友だった亜紀が暴走して4人がかりで自分を痛めつけた事なんて思い出さない方が・・・」
「拓弥君・・・」
「けどそれじゃお前の気持ちは?ずっとあいつの事だけ思って来てあの日だってお前がいなきゃあいつは死んでたかもしれないのに・・・」
4人はそのまま沈黙してしまった
「・・・俺帰ります」
「拓弥君?」
「よく考えたらあの事件だってそもそもの発端は俺だったんですよね。だったら俺はもう李砂のそばにいる資格なんて・・・」
「何を言うの?あなたは何も悪くないわ。それに一番辛い思いをしてるのは拓弥君、あなたなのよ・・・」
「おばさん・・・」
「ごめんなさいね。本当に・・・全てあなたに背負わせてしまったみたいで・・・」
拓弥はそういって涙を流す李砂の母を見ている事ができずに病院を飛び出して行った
「お嬢さんの意識が戻りました」
扉が開いて看護婦がそう告げたのは拓弥の姿が見えなくなってすぐの事だった
俊の言った『小3』という言葉が引っかかってならなかったのだ
「写真・・・」
何か忘れているのかもしれないと小さい頃からのアルバムを引っ張り出す
「・・・え?」
生まれた頃からの写真をめくっていくとあるページを境にして明らかに写真が抜き取られたとわかる部分が出てくる
「何?」
つい最近まで写真が存在していたのがわかるそのアルバムに胸が高鳴る
「お母さん!」
李砂はアルバムを持って台所に駆け込む
「どうしたの?そんなに慌てて」
「これ、私の写真抜いた?」
「え・・・?」
明らかに戸惑いの色がうかぶ
「どう見ても写真があったって感じでしょ?しかも小3から最近の分までかなりの量・・・」
「・・・何か思い出したの?」
その言葉に母を見る
動揺しているのか目が泳いでいる
「・・・どういうこと?」
そうたずねながらいつもの映像を思い出す
「あ・・・な・・・何でもないのよ。もうご飯だから片付けてらっしゃい」
「お母さん?!」
明らかにおかしな母の態度に怒りさえ覚えた
自分は何か大切なことを忘れているのかもしれない
母の態度を見て初めて李砂はそう感じていた
夕飯を食べてから中学のクラスメートに電話してみても示し合わせたかのようにわからないの一点張りだった
「俊君」
昼休みに拓弥の親友である俊に声をかける
「あぁどうした?」
「・・・ちょっといいかな?」
「おう」
俊は頷いて教室を出ると屋上に続く階段を上がる
「・・・で?」
「うん・・・拓弥君の事なんだけど」
「あぁ」
特に驚いた様子もなく頷く
「この前拓弥君は小3の頃から・・・って言ってたでしょ?」
「・・・あぁ」
「どれだけ考えても心当たりがないんだよね。私は高校で会ったって思ってたし・・・」
「・・・ずっと一緒だったさ。俺もお前も・・・それに・・・」
「え?」
「小3でお前が転向してきてから中学卒業前にあの事件が起きるまでは・・・」
「事件・・・?」
その言葉に心臓を鷲づかみにされたような気がした
「頼むから思い出してくれよ。俺今の拓弥見てんの限界だ・・・」
「俊君?わかんないよ・・・事件って何?私本当に知らない」
「知らなくていいんだよ」
突然投げかけられた声に振り向くと拓弥が立っていた
「余計な事言うな俊」
「けどお前・・・」
「いいから。二人にしてくれ」
「・・・わかった」
俊はため息混じりに言うと戻っていった
「変だよ2人とも。2人だけじゃない両親も友達もみんな変・・・」
「李砂・・・」
「アルバム見たら写真がごっそり抜けてるし友達に聞いてもはぐらかされるし・・・両親も何か隠してる・・・ねぇ私に何かあったの?」
「・・・」
「あったのなら教えてよ!私一人何もわからなくて・・・なのに腫れ物に触るみたいにされて・・・もう沢山だよ・・・」
李砂の目から涙がこぼれる
どうしようもない不安が心の中で渦巻いていた
「・・・ったら・・・」
「?」
「だったら思い出せよ!」
「・・・た・・・くやく・・・?」
壁を殴りつけた拓弥に一種の殺気を感じた
『・・・え?』
突然何かの映像が頭の中を流れた
4人の女の子に囲まれてる女の子はおびえていた
その女の子の体中から血が流れている
「な・・・に・・・?」
割れるような痛みに頭を抱え込む
「李砂?」
「・・・痛・・・」
意識が薄れる
「おい!李砂!」
崩れ落ちた李砂を拓弥が抱きあげた
『あれは亜紀達・・・』
李砂はこの時忘れてしまっていた全ての記憶を思い出した
何度も現れた映像は過去の出来事
自分で忘れてしまいたくて封じ込めていた記憶だった
「私・・・」
かすれるように発せられた言葉とともに李砂の意識は無くなった
拓弥はすぐに病院まで運ぶと李砂のウチに連絡を入れた
「拓弥君!」
李砂の両親はすぐに病院へやってきた
その少し後に俊も駆けつけてきた
「李砂は?」
「・・・分かりません。意識を失って・・・」
拓弥はこぶしを握り締めていた
「どうしてこんな事に・・・」
「あの子変だったのよ。突然アルバムなんて引っ張り出して・・・」
母が泣き崩れる
「・・・俺がつい口走ったから・・・」
俊がかすれる声で言った
「俺拓弥は小3の頃から李砂しか見てないって・・・だからあいつ・・・」
「俊・・・」
「何も思い出さずにこのままいた方が幸せなのかもしれない。それはわかってるけど俺今のお前も以前の明るさ失った李砂も見てられなくて・・・」
俊は壁を殴りつけた
「思い出さない方がいいんだ。どんな理由にしろ親友だった亜紀が暴走して4人がかりで自分を痛めつけた事なんて思い出さない方が・・・」
「拓弥君・・・」
「けどそれじゃお前の気持ちは?ずっとあいつの事だけ思って来てあの日だってお前がいなきゃあいつは死んでたかもしれないのに・・・」
4人はそのまま沈黙してしまった
「・・・俺帰ります」
「拓弥君?」
「よく考えたらあの事件だってそもそもの発端は俺だったんですよね。だったら俺はもう李砂のそばにいる資格なんて・・・」
「何を言うの?あなたは何も悪くないわ。それに一番辛い思いをしてるのは拓弥君、あなたなのよ・・・」
「おばさん・・・」
「ごめんなさいね。本当に・・・全てあなたに背負わせてしまったみたいで・・・」
拓弥はそういって涙を流す李砂の母を見ている事ができずに病院を飛び出して行った
「お嬢さんの意識が戻りました」
扉が開いて看護婦がそう告げたのは拓弥の姿が見えなくなってすぐの事だった
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