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19・故国の行く末
しおりを挟む「あの国は昨日、国の名前を変えたそうですよ」
それからほどなく。
たった数ヶ月のうちに、私の祖国は国としての形態を変えるに至ってしまったらしかった。
実質的に滅亡したということだ。
子爵位とはいえ、父が爵位を頂いて、領地や屋敷を整えて。
ようやく落ち着いてほどなく。
私の元へと訪ねてきてくれていたリコスに教えられたそれに、私は静かにまぶたを伏せた。
「そうですか」
ただ、呟くようにそうとだけ返す。
肯定と言えるようなことですらない。わかり切っていたことだったからだ。
あの国は持たない。
それは疾うに誰の目にも明らかで、例えばあのまま、私や父が国にいたままであったとしても、いずれはそうなっていたことだろう。
つまりは遅いか早いかだけの違い。
国主でも何でもない私達だけで、国を支え続けるには限界がある。
ただでさえ実質国を動かしておられた王妃様にそのような気概がおありにならなかったのだ。
ご実家の侯爵家の方々も、国を支えられるほど優秀な方々ではなかった。
むしろ父の話では彼らは、自分たちの利益のことしか考えず、国民を顧みる様子などが一切ありはしなかったのだとか。
聞けば彼らは父がいなくなって、早急に税を上げることとしたのだそうだ。
もちろんそれらの税が、国民に還元されることなどない。
国民があちこちでそれに反発するようになるのは、本当にすぐのことだったのだという。
その勢いは、元より人員の減っていた、国に仕える兵たちに抑えられるようなものではなく。
そのまま王宮ごと、無残にも民衆によって落とされてしまったのだとか。
最期まで王宮に残っていたという王妃様やシュネス殿下の行く末など、口に出されるまでもない。
幸いなのかなんなのか、国王陛下は長く国を空けていて、その時に滞在していた国へと亡命したのだという。
民は毒にも薬にもならず、国を顧みることすらなかった陛下を、追うようなことはしなかったのだそうだ。
おそらくはそのような余裕がなく、また陛下が国に戻るようなことはないと判断したのだろう。
もし万が一国に戻ってしまうとどうなるかはわからないが、とにかく陛下は国外にいて存命で、しかし反して王妃様やシュネス殿下はそうではないという話。
民を……むしろ先導していたのではないかと見られているニディアは、しかしすでに事実上の妃であったとして、シュネス殿下に殉じたのだという。
予ねてからわかっていたこととはいえ、私は何とも言えない気持ちを、噛みしめることしか出来なかった。
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