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25・神人②
しおりを挟む世界、とは一体どういうことなのか。
まったく意味が解らない。
「世界……」
呆然と復唱した僕に、フォルはこくり、大きく頷いた。
「そう、世界。世界の化身。あるいは神と言い換えてもいい。人の形を取った神そのもの。神の一族とでも言えばいいのか、我々よりも高次の存在。それが神人。言葉の通り、神であり人であるものだ。当然、厳密に言うなら人ではありえない」
「僕が……人じゃ、ない……?」
何となく自分の手を見た。
どこからどう見ても人の手だ。
ホセやシズ、ネアとフォルときっと同じ。
指は五本で爪もある。関節の数だっておかしくはない。
手だけではなく、他も全て。
人ではないとは、思えなかった。
「神人だよ。君は人ではなく神人なんだ。その証拠に特徴的な白銀の髪に瞳」
「瞳?」
髪は、確かに真っ白くって、ホセは銀だというけれど、僕にはただ白いだけにしか思えなくて、珍しくはあることはわかっていた。
だけど目は。ただの水色だったはずだ。
少しばかり色素が薄いけど、それほどおかしな色でもない。
現にホセの瞳だって、青だか緑だか、似た系統の色だ。なのに。
「そう、瞳なんて一番特徴的だよ。光彩の一部、瞳孔この周りが金色に縁どられている。そんな瞳を持つ者なんて、神人以外に存在しない。伝承の通りだ」
フォルの声はどこか上擦っていて、少しばかり興奮しているようだった。
その勢いが少しだけ怖くなる。
怯えた僕に気付いたフォルは、はっと我に返り小さく咳払いなんかして話を続けた。
「おっと失礼。すまない、つい。それで、そう、神人。君が神人であることは理解出来たかな?」
確かめられ、全くわかりもしなかったり、理解できなかったけれど頷いた。
とりあえず自分の髪と瞳が、フォルの言う通りなのなら、神人と判断されても仕方がない、そう思ったからだった。
「それで、神人というのは世界の現身なんだ。神そのものが人の姿を取った存在。この世界は、神人によって成り立っている。彼らはただそこにあるだけで、世界を保っているんだよ」
つまり世界の要のようなものだとでも言いたいのだろう。
だが、自分がそんな大層な存在だなんて全く思えない。
だけど、僕が僕自身のことをわからないのもまた確かなことで。
フォルの話を否定しきることはできなかった。
何よりフォルが嘘を言っているようにはまったく見えない。
ホセもシズもネアもまた、フォルの言葉を遮ったり訂正したりなんて全くしなかった。
「僕もね、まさか生きている間に君のような純粋な神人を目に出来るだなんて、全く思ってもみなかった。それも子供を宿している、次代がそこにあるんだ、なんて素晴らしいことだろう!」
次代。
大きく膨らんだお腹を見る。愛しい可愛い僕の子供がいるそこ。
番との間に出来た大切な宝物。
「神人はその長い寿命に相応しく、繁殖力が極端に少ない。特に神人同士では子供を作ることなど非常に困難なのだと聞いている。なのに今、君は子供を宿している。それがどれほどに凄いことかっ! たとえその子供が純粋な神人でなかったとしても。神人の血が広がることは、何よりも重要視せねばならないことなんだ。なにせ神人の血が途絶えれば、この世界は滅びるのだから。勿論、神人の血は薄く広がって脈々とこの世界に息づいてはいるけれど、彼らは皆、神人の血を引いているだけで、神人そのものではない。純粋な神人に勝るものなどっ!」
この世界には存在しないのだ。
そう言って目を輝かせるフォルが、僕にはやはり恐ろしかった。
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