【完結】僕は番を探してる。〜放浪妊夫は愛に惑う〜

愛早さくら

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45・川上を目指して

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 そう促して、川に沿って歩き始めた。
 歩く速度は非常にゆっくりで僕を気遣ってくれているのがわかる。
 ホセも僕に寄り添って支えてくれていて、僕はただ彼らに導かれるまま、のろのろと足を動かすだけでよかった。
 向かう先はどうやら川上で、そしてもう森の中深くへは入らないらしい。
 少し先を歩くシズは、後に続く僕が歩きやすいよう、さりげなく地面を鳴らしながら歩いてくれている。
 疲れた、などと思う前に、度々立ち止まっては休憩を挟んだ。
 幸い川に沿って進んでいるので水には困らない。
 川沿いは石が集まっている所もあれば、土がむき出しになっている所もあり、かと思えば樹々が生い茂ったりもしていた。
 歩きやすさを重視しているのか、時折、川から逸れ、だけど離れず、ずっと、川に沿って歩いていく。
 あまり流れの速い川ではないようなのだが、もちろん場所によってはそうとも限らず、そういった場合はシズもホセも、僕を川に近づけようとはしなかった。
 多分、川に落ちたりなどすることを警戒しているのだろう、僕も自ら近づいたりせず、さてどれだけ歩き続けたことだろうか。
 ちょうど太陽が真上に来る頃、シズが立ち止まり辺りを整え始めた。
 これまで度々取っていた休憩ともどうやら違うようだ。

「昼食、というほどのものも用意できないが、少し休もう。目指している場所へももうすぐ着く」

 そう言われ、抗う理由もなく頷いた。ただ、

「目指している場所、というのは?」

 それだけを訊ねておく。
 やはりシズには何処か明確に目指している所があったようだ。

「この川の上流。もう少し言った先に、界の揺らぎ・・・があるんだ。おそらくそこにより近いところの方が、あの二人も見つけやすいのだろうから」

 界の揺らぎ・・・だとか、僕にはよくわからなかったが頷いた。
 シズにはわかる何かがあるのだろう。あるいはホセにもわかるのかもしれない。
 昼食代わりにと差し出されたのはどうやら保存食か何かのようで、硬い、肉なのかクッキーなのか判別しずらいものだった。
 とは言え、物凄くまずいということもなく食べれないこともない。
 美味しいとも言い難かったが、僕はありがたくそれを咀嚼し、そのまましばらく座り込んで休憩した。
 すかさずホセが背中を支えてくれていて、そのまま微睡みそうになる。

「少し眠っていてもいいぞ。急いでいるわけでもない」

 気付いたシズの掛けてくれた声に甘え、僕はそのまま目を閉じた。
 辺りに立ち込めるつがいのいい匂いと、絶え間ない川のせせらぎに包まれて。ほんの少しだけ、自分に言い聞かせて眠る間際、

「……、――……やはり、普段より眠気が、……、……――」

 シズが小さく何かを呟いているのが聞こえたが、それらをはっきりと捕らえきることはできなかった。
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