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55・番
しおりを挟む「皆、出来るだけ近くっ! こっちへ! 上がるぞっ!」
強風に煽られるかのよう、体がバラバラになりそうな感覚がした。
それに必死に逆らって、フォルの声が大きく響く。
「ホセっ、神人殿を離すなよっ! しっかり抱えていろっ!」
ぎゅ、力強い腕が僕を包む。なのに。
「うっ……くそっ!」
体を丸めた僕から、ホセの腕が何か大きな力によって引き離される。
「っ! デュニナっ……!」
伸ばされたホセの手は、どうしようもなく、僕には届かなかった。
「っ、神人殿っ!」
「デュニナっ!」
フォルやシズの声がする。ネアも。
だけど僕には何も出来ない。
ただぎゅっと、この子だけは守らなければと体を丸めて。
ただじっと。
「ぐっ……ぅっ、」
体がバラバラになりそうな衝撃に耐える、耐える、耐える。
ああ、だけど、もう……耐えられないっ!
そう、限界を感じた瞬間、ふわと、辺りの全てが治まった。
『デュニナ』
まるで大きな何かに包み込まれるかのように。
ああ。
僕は唐突に理解する。
ああ、僕の……僕の、番。
こんな所にいたんだね。
そうか、僕の番は、いつも……――。
僕は体中の力を抜いた。
「っデュニナぁーーーっ!!」
絶叫のような全てを震わせるホセの声は。
僕にはもう、届かなかった。
そして。
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