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2・学園でのこと

2-11・卒業に向けて

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 陰口をたたかれる、面と向かって糾弾される、必要以上にきつい注意、仲間はずれからの孤立、連絡事項の不伝達、私物を隠される、所持物を破壊される、そして……――池に突き落とされる。

 これら全てが、ルーファが俺に、アルフェスに及んでいる嫌がらせ・・・・・として、詰りに来た事柄だ。細かく言えばキリがないほど、他にも大量にあるのだが、主だったものとしてはそれぐらいだろう。
 ルーファが中等部の2年に進級して、俺や殿下が高等部1年に上がって、半年ほど経った頃から、俺の卒業までの2年半に及び、訴えられ続けたそれらは、アツコ曰くゲーム内では、ルーファ自身が俺、もしくは俺に忖度した他の生徒から受けた被害なのだそうだ。
 色々とおかしな食い違いが起こっているが、それはともかく。その2年半で、俺はすっかりルーファを扱いきれなくなっていた。何せルーファは俺の話を受け入れられないようになっていっていたので、扱うも何もなく。
 それでも俺は可能な限り、ルーファに色々なことを説いたし、他へのフォローにも駆けずり回った。
 だが、ルーファが一番構いに行っていた・・・・・・・・のはアルフェスで、アルフェスもまた、ルーファによく頼るようになっているように俺には見えた。
 勿論、俺へのストーキングもどきな行動も変わりはしない。それにすげなく返す俺の態度も。
 卒業を控え、こじれ切った人間関係はさて、学園外へと持ち越しかと、溜め息を吐く。
 6年間通った学園は、しかし半分以上はルーファ関連の対応に塗りつぶされたな、と思うとなんだか感慨深い。
 残る部分と、あるいはルーファと一部重なるようにして殿下にも振り回されたが。
 殿下は面白いことが大好きで、時にはた迷惑な、しかし、大きな問題にはならない程度の騒ぎを起こしては、生徒たちの反応を見て、笑っているような所があった。それも、大小合わせると結構な頻度で。おかげで、被害の大きくない突飛な騒動が起こる度、もしや殿下の仕業では? と、毎回疑われるまでになっていたが、殿下的に、そこに問題はないらしい。
 実際に殿下の企みであった場合、後処理に駆り出されるのは必ず俺だったので、俺としては問題だらけだったのだが。
 そんな、何処か慌ただしい6年間だった。
 卒業後、俺は殿下の補佐役として、王宮への出仕が決まっている。所謂、側近というやつだ。アツコ曰くの秘書のようなもので、卒業後、必然的に増えるだろう皇太子としての仕事が、円滑に回るよう全般的にサポートするのが俺の役目だ。
 これは、実はかなり前から決まっていたことで、俺自身にも別に否やはない。それこそ、遊び相手として、王宮に上がっている以上、そんな感じの仕事に将来就くのだろうなというのは、想像に難くなかったことだろう。
 その上、俺の仕事は他にもある。
 まだ1年、あるいは2年卒業しないアルフェスやルーファとの関係の改善は、もしかしたら長い目で見なければ解決しないのかもしれないとも思った。いずれにせよ、俺にはどうしようもない話。
 卒業式は、何事もなく終了した。殿下も、流石にこういった式典で何か仕組んだりはせず、粛々と進んだ式は、なんだか特有の寂寥感を俺に与えた。
 この帝立学園は、卒業式とは別に、卒業記念パーティが開催される。
 そのパーティーは、卒業式とは少し日が離れていて、なんでも、準備などの関係があるらしく、慣例として、入学式や、卒業後の職場への初出勤の、実に数日前に設定されていた。
 加えて、貴族や、一部の富裕層にとっては、社交界デビューの役割も担う。今後、参加せざるを得なくなる他のパーティなどの練習のような位置づけだ。
 そういった催しとは今後あまり関わらなくなるだろう一般市民出身の生徒たちにとっては、一生に一度の貴重な経験となる。
 必須科目であったダンスの授業の、唯一の成果発表の場とも言えるだろうか。
 卒業生全員と、在校生の一部が一堂に会するパーティなど、これしか存在せず。学校行事としては、随分と大規模なものだった。
 誕生日が新年度の頭の辺りにある俺や殿下は、パーティの直後には19になる。と、いうか、実は初出仕予定の日が、俺の誕生日だ。殿下はその二日前。パーティーはその更に数日前という状態。
 今後の練習も兼ねている関係上、制服での参加も認められてはいるが、実質的にドレスコードは必須で、着飾った同級生たちの姿を初めて見る場でもあって、俺はそういった意味でも少し楽しみにしていた。
 殿下も、

「楽しみにしているといいよ」

 なんて言っていたし。
 まさかそれが何かを仕込んでいるが故の物だっただなんて、思うはずがないだろう?
 卒業式が何事もなく終わったのもあって、俺は少し油断していたのだ。
 まさか、あんな騒動が起こるだなんて、予想だにしていなかった。





「お兄様!どうぞ婚約破棄をお受け入れ下さいませ!」

 そして物語は冒頭に至る。
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