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2・学園でのこと
2-13・見当違いの断罪劇②
しおりを挟むパーティーが始まってしばらく。おもむろに会場の中ほどまで、ルーファが歩み出てきたのに気付いた俺は、正直な所、混乱した。
事前には何も聞いていなかったし、先程、傍を離れる前までの様子だと、特に変わった所はなかった。むしろルーファは機嫌よさそうでさえあったほどで。
なのに今、俺に視線を止め目を細めたルーファの顔は、緊張を孕んでか、少し険しい。
「お兄様」
「ルディルファス」
呼びかけられて、混乱のまま、俺はいつもの愛称ではなく妹の正しい名前を口に乗せていた。
それが耳に届いたのだろう妹がきゅっと不快げに眉根を寄せる。多分、俺が彼女の名を正しく呼ぶ時はいつも、珍しくもルーファを、少しばかりきつめに窘める時ばかりだから、それを連想したのもあるのだろう。あながち間違ってはいない。
だって、こんな公の場で、ルーファに、いったい何をする必要があるというのか。タイミングとしては、ちょっとした余興でも始まろうかという頃合いで、会場中の皆も、当たり前に気になったのだろう、彼らの注目が瞬く間に妹に集まっていく。今やこの場にいる誰もが妹の一挙手一投足を待ち望んででもいるかのようでさえあった。
いったい何をしでかすのかと、内心はらはらし始めた俺の視界の真ん中へと、アルフェスが慌てたように転び出てくる。
二人は一緒にいたはずなのだが、多分、ルーファの行動はアルフェスの想定にさえなかったのだろう、ついていけていないうちに置いていかれたのか。
「ルーファ、本気で……?!」
否、あの様子だと、ルーファの行動はアルフェスにとっても好ましくないのだろう。と、いうことは、ルーファが何をするつもりなのか、ぐらいは、アルフェスは知っているということだろうか。
アルフェスはやめてくれと続けんばかりに男らしく精悍な顔を情けなく歪め、大柄な体を丸めるようにして、ルーファへと、縋る気配で話しかける。
ルーファはそんなアルフェスを宥めるように小さく微笑んで、そっと、その肩へ手を添えた。
「大丈夫ですわ、アルフェス様。わたくしにお任せ下さいませ」
柔い声で話しかけつつ、微かに頷く。
アルフェスはふるりと首を横に振るのだが、ルーファはそれには取り合わず、否、すでにアルフェスのことなど視界から外して、改めて俺の事をきつく睨みつけてきた。
待て、ここで俺を睨むのか。なんなのだ、いったい。
ルーファに睨まれるような何かが、今日、あっただろうか。心当たりは何もない。
確かに、ここ最近は彼女との関係は、あまりよくはなかったけれど。それだってよりにもよって今日、こんな公の場であんな顔をされるほどの悪さでもない。はずだ。
俺も流石に眉を寄せて、可能な限り視線をルーファから外さないまま、周囲を注意深く伺ってみる。
すると、俺のすぐ傍にいる、1人の人物に目が止まった。愉快気に、見慣れた顔で笑っている。俺は理解した。ああ。
殿下。
俺の顔はますます険しくなる。そんな俺に気付いているのかいないのか、あちらもあちらで、ひときわ顔を険しくしたルーファが改めて口を開く。
「お兄様!」
俺に向かって、力強く。そして。
「どうぞ婚約破棄をお受け入れ下さいませ!」
続けられた言葉は突然で、正しく本当に意味不明だった。
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