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3・王宮にて
*3-9・満ちていく熱
しおりを挟む殿下が容赦なく俺を追い上げる。俺は容易く追い上げられる。
とぷり、と、俺は欲を吐き出していた。だって耐えられない。体が熱くて、熱くて。頭がぼやぼやする。俺の中にはまだ、殿下の指がいた。
その指がくいとひっかくようにして、存在感を残しながら俺から出ていく。
「あっ」
達したばかりで敏感な体には、そんな刺激だって過ぎたもの。
くす、殿下の笑う声が耳に届いた。もやがかかったような視界でそちらを見ると、俺の出した白濁をわざわざ指で掬い取った殿下が、それを口に含んだところだった。
赤い舌に、ドロッとした少量の白が絡んで。俺はそれから、目が離せない。
「ん……流石に、魔力は薄いね」
殿下がどこか残念そうに言う。
当然だった。俺は今、刺激だけで達したのだ。そこに俺の意思は含まれていない。明確な意思なくして、魔力など乗らない。体液に魔力を込めるには、自らの意思が必要不可欠なのだから。
まぁいいか。
呟いた殿下が、改めて俺に向き直る。その眼差しはいまだギラギラとして、欲を湛えたまま。鼓動が早まる。熱が上がる。
熱い。
殿下の指が、また、伸ばされた。さっきまでそれを含まされていた俺の中に、増やされた指がもう一度潜り込んでくる。
ぬちゃ、と濡れた音。さっき言っていた魔術の所為だろう。あるいは俺の体自体、何か、操作されているのか。何もわからなかった。
ただ、やはり、痛みはない。
その代わり、熱くて。
殿下は、一度見つけた其処を、今度は、はじめから刺激してきた。
「ぁっ、ぁっ、ぁあっ、んっ」
声を耐えられない。鮮明にならないままの視界の中で殿下の笑みが、頭に焼き付く。心底楽しそうな顔をして。なのに同時に、まだ足りないと求める欲。
「ティアリィ」
殿下の、唇は俺の肌の上、耳朶を滑って、首筋に吸い付き、鎖骨を舐った。
俺を呼ぶ声が、甘い。ずっと。ずっと。甘くて、仕方なくて。かき回される腹が疼く。殿下の指を、今、いったいどれだけ含まされているのだろう。わからない。でも、気持ちいい。
感じているのは間違いなく悦楽だ。
殿下、殿下、殿下。
頭の中に、それだけが満ちていく。
もう、何もわからない。今わかるのは殿下の熱だけだ。俺を、求めている劣情。それがどうしてこんなに心地いいのか。
「でん、かぁ……」
俺からこぼれる声もまた、甘くて。剰え、求めるようでさえあって。
殿下の笑みが深まって、まるで応えるかのように俺の腹に埋められていた殿下の指が、全てぬちゅりと抜き取られた。
足を、抱え上げられる。
俺はソファに押し倒されていて、殿下は俺の足の間にいて、狙いを定めるように腰が、押し付けられて。熱く、硬い殿下のそれが、たった今まで殿下の指を孕んでいた俺の其処へと、押し付けられて。
次の瞬間、ぬぐぅ、とんでもない圧迫感が、俺を襲った。
「ぁっ、ぁぁああああああっ……!!」
俺の喉から迸った喘ぎには。痛みなど、少しも含まれてはいなかった。
ああ。
満ちていく。
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