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3・王宮にて
*3-10・奥までぜんぶ
しおりを挟むお腹の中が、隙間なく殿下で埋められていた。
本来は受け入れる所ではない、だが、男同士ではそこでしか受け止められないその場所。
排泄器官でしかないはずの其処は、今やただの雌の穴だ。雄を迎え入れる為だけの洞と化し、それは俺にどうしようもない満足感をもたらしている。
「ぁっ、ぁっ、ぁっ、ぁっ、ん、はぁっ……ふぁっ、」
殿下は体を小刻みに揺らしながら、少しずつゆっくりと俺の奥深くへと分け入ってきた。俺はその揺らぎに合わせて声を出し、時折息を詰め、あるいは喘ぎを高くする。そうすると殿下は、俺が反応した部分を、今度は重点的に刺激して。
腹の奥から溶けるかと思った。
圧迫感が凄まじく、ほんの少しの刺激でも、体が痺れた。なのに痛みは欠片もない。ぬちぬちと響く粘着質な水音が、多分摩擦を助けている。
ついさっき、到底入らないとしか思えなかった長大な過ぎるほど逞しい殿下自身が、だけど今、確かに俺の腹へと埋められている。
いったい何をどうしたのか。本当に俺の体を操作したのか。多分、したのだろう。でなくばあんなもの、入るはずがないのだから。こんな、痛みすらなく、快楽だけがもたらされるなんて。
「ティア、リィっ……」
視界が揺れた。ゆらゆらと、揺さぶられるに合わせて揺れる。殿下の声も、濡れて、揺れて。
甘い。
「ぁっ、ぁっ、ぁっ、あ!」
殿下の指で、ぐちゃぐちゃに押し潰されていた前立腺が、今度は殿下自身によって刺激を受ける。その度に俺の頭は白く惚けた。
小さなハレーションが幾度も起こり、目の奥がちかちかして、快楽の波が絶え間なく俺を揺さぶる。殿下に縋る俺の手には、ほとんど力など入ってはいなくて。俺は殿下のなすがまま、ただ、気持ちよさだけを受け止めている。
疼いて、熱くて、其処を、応えるように刺激されて。まるで、永遠のよう。熱が、体全部を支配していた。
「ぁっ、ぁあっ……」
喉を仰け反らせて達する。これは幾度目の絶頂だろうか。俺自身からこぼれる白濁は、もはやおそらく勢いもなく、だらだらと零れるばかりなのだろう。あるいはそれさえも伴わない絶頂なのかもしれない。
追いやられた高みから、ちっとも降りられなくなっている俺には、何もかもが分からなかった。
ただ。
「ティアリィっ……、ぅっ……」
殿下も息を荒げながら、俺の名を呼んでいて。腰を揺らし、俺を苛み、それでも止まず、俺を求め続ける。
「うっ、くっ……」
そのうちに体の中で熱が弾けた。途端に、これまでの比ではない熱い奔流がそこから駆け巡り、俺の体中が、ますますもっと熱くなる。
「ぁっ、ぁああっ……!」
眩む、眩む、溺れてしまう。
達したはずの殿下は、しかしそのまま動きを止めず、腰を揺らし、俺を穿ち続ける。
部屋の中は、お互いのはぁはぁと吐き出される、荒い息で満ちていた。
腰を動かしながら殿下は、更に上体を倒し、俺とますます密着してきて、そして俺の耳朶へと甘い声で囁いた。
「ティア、リィ……ねぇ、ティアリィ」
動きに合わせて揺れる声で、掠れがちに続けられた言葉。
「ねぇっ、ぅっ……最後まで、全部。……いいでしょう?」
一瞬、何を言われているのかわからなかった。否、むしろ一瞬後にでも、意味を理解する頭が残っていたことこそが奇跡だろうか。
全部?
こんなにももう俺の中は殿下でいっぱいなのに、いったい何を。
そうして気付く。
上半身は今や、随分と触れ合っている。俺の足を折り曲げ、捕えるように掴む腕と。だけど。もしや。
そうだ、殿下のそれは、でかかった。太さもさることながら、勿論、長さも。
あの、長さが、俺の中に、今、どれだけ。
押し込められたその場所は、だけど、いまだ、殿下自身とは触れ合えていなかった。
「えっ……? ぁっ! ぇっ、ぅっ……ぁあっ! やぁっ…!」
ぐっと。それまでより更に奥が、開かれる感触がした。もっと、更にと殿下が、腰を揺らしながら押し入ってくる。いったいどこまで。
信じられないほどの奥が、殿下の形に開かれていく。直にごつ、と、信じられない刺激が、俺を苛んだ。
「ぁっ、ぁあっ……!」
奥だ。本当に俺の、一番奥。突き当り。そのはずだ。だけど、殿下の下肢は、まだ、俺と触れ合わず、殿下は。
「ティアリィ」
俺の名を呼んで、容赦なく幾度も其処を突いて。
「ぁっ、ぁっ、ぁあぁああっ……!」
その度に俺は今まで以上に大きく声を上げて。俺の奥の奥が、殿下の分身を舐るように締め付け、喜んでいるのが自分でもわかる。慎ましく閉じられたままでいなければいけないはずの其処がごちゅごちゅと絶え間なく激しく与えられる刺激に、いつしか媚びるように綻んで。
痺れる、疼く、満ちる、侵される。
殿下の、俺の足を掴んだままの手に、ぐっと、強く力が込められた。
「ぐっ、がっ……ぁっ……、……っっ!!」
声も、上げられなかった。ぐぽっと、ありえない音が体の奥から響いたのが分かる。ばつんっ、殿下の下肢が、ようやく俺の肌へ打ち付けられて。
信じられないような衝撃に、俺の頭が、白く、白く、染まって……――それっきり。
その後のことは、記憶にない。
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