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4・これからの為の覚悟

4-4・発覚

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 体内で成り始めた子供が安定させしてしまえば、あれほどの不調に見舞われることはない。
 とはいえ、継続的な魔力の供給が必要なことに変わりはないのだが、それまでを思うと随分と控えめ・・・でも保てるようになったし、崩す体調のひどさもいくらだって緩和された。
 更にひと月の様子見の後、婚約式・・・は滞りなく行われた。流石に1年後に控えた婚姻式・・・ほどの派手さはなかったが、周知するには足る程度の規模で。
 俺は身重であることが考慮され必要最低限の露出で済んだのだが、それはいったいよかったのか悪かったのか。助かったのは確かではある。
 俺の受け持つ仕事内容は、そんなことがあってもほとんど変わらない。ただ、皇太子妃となったことで権限が増え、いくらかは殿下に回さずに俺の方で裁可を下せるようにはなった。
 例えば人事などの内向きの仕事は元々、皇后や、側妃、皇子妃などの妃位・・にある者の管轄なのだ。わざわざ殿下に回すほどの案件ではない。
 多分、初めに殿下の仕事に含まれていた時から、いずれは俺が最終的に受け持つ仕事になることが決められていたのだろうと思うと、殿下はいったい、いつからどれだけの根回しをしていたのかと陰鬱な気分になった。
 正直、現状はハメられたに等しいのだ。いくらある程度、呑み込んだとはいえ好き勝手な誘導を受けて、機嫌を損ねないはずもなく。
 どこか今に。馴染みきれないままの俺を、それでも殿下はきっと手放さないのだろうと、それだけがはっきりとわかっている。

 婚約式から、更にひと月ほど経った頃だった。
 殿下より先に俺がそれを知れたのは、あるいはこれからの俺を決定づける物になったのではないかと俺は思っている。
 その日俺は魔術師塔に少し所用があり、殿下の執務室から出て王宮の外へと続く廊下を歩いていた。
 俺は皇太子妃であり、殿下の補佐であると同時に、魔術師塔に籍を置く魔術師でもあるのだ。それこそ学園に在学中は、そちらでの用事が多いほどで、そこで請け負っていたのは俺が得意とする、転移や空間、あるいは結界に関する物だ。
 今は他の仕事の比重を高くしているので少し離れているが、それでも、そちらでの用事は皆無にはならない。
 だから俺は一人・・でいて。殿下より先にそれを知ることになった。

 つまり……――殿下の、隠し子・・・なる存在のことを。
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