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4・これからの為の覚悟
*4-3・不調
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体調は劣悪だった。
それこそ、今まで生きてきた中で一番だと思う程に。
あの日。少し頭がぼんやりする程度だった不調は、翌日には割れるような頭痛に変わっていた。
ガンガンと脳内を何かで打ち付けられているかのよう。それに伴ってか、吐き気を伴う気分の悪さがずっと収まらず、しかしいくら吐きそうになっても朝食も摂れなかった以上、出すものなど何もなく、苦しさだけがいつまでも胸に残っている。
典型的な魔力欠乏の症状だった。それでも、これほどに重篤なことなどなかなかない。
殿下はベッドから起き上がれない俺を仕事前に見舞いに来た。
「ぅっ……」
呻いて視線を彷徨わせる俺へと、魔力を乗せた指先で触れる。額を滑って、頬を包んで。するりと肌を撫でられる。
そうすると触れられている所だけが少し、苦しさが和らぐような気がして、俺は知らず殿下の指へとすり寄っていた。
「ティアリィ」
俺へと覆いかぶさるように、体を倒した殿下の柔い声が耳朶をくすぐる。眩む意識の中で、それだけが鮮明に耳に届いた。
吹き込まれる息にも魔力が乗っている。
「これだと、とても足りないね」
困ったな。
殿下は何かを少し悩んでいるようだった。
次いでちゅっと唇を塞がれ、そこから息と唾液と共により多くの魔力を注がれる。少しだけ気分が楽になった。
「少し、仕事の確認だけしてくるよ。どうしても急ぎの物の処理と、他は予定の調整だけしたらすぐに戻ってくるから、少しだけ待っていて」
いくらかそうして俺の口内を味わってから身を起こした殿下の宥めるような言葉に、さて、俺は頷けたのだろうか。
何分、やはり意識は眩んだままで。多少、和らいだところで頭は痛く、吐き気は止まず。起きたばかりなのもあって眠ることもできず、殿下を待つ時間は殿下の宣言通り、おそらくそれほど長くはなかったはずなのだけど、どうにも俺には途方もなく感じられた。
苦しくて、痛くて。何かに縋りたくなる。助けてほしい。思うのに、重怠い体は指一本動かせず、手さえ何処にも伸ばせない。
殿下。
心の中で、呼んだ。助けてくれるのがたった一人だと、俺は知っているから。
殿下。
何度そうして呼んだことだろう。それでも意識がいつの間にか遠ざかっていたようで、次に気付いた時には視界が揺れていた。
「ぁっ、ぁっ、ぁっ、」
体を揺らされるのに合わせて、声が漏れている。小さな喘ぎだ。
熱い。
あれほど俺を苛んでいた頭痛は随分と少なくなっていて、気持ちの悪さも今は遠く、その代わりに体全部が熱かった。とりわけ腹に、熱が凝っている。
「ぅっ……ん、ティア、リィ……?」
どぷ、いったい幾度目だろう、今もまた、腹にひときわ多い熱が吐き出されて少しだけ思考がクリアになった。
俺は足を広げ殿下を受け入れ、揺さぶられながら、俺の雌穴は殿下を全て呑み込んでいた。快楽も感じてはいるはずなのだが、わかるのはただ、熱いということだけ。
「よかった、……気が付いたんだね。少しは、ん、気分が、良くなった……かな?」
荒い息も整わないままに問いかけてきた殿下へと、小さく頷く。殿下が嬉しそうに笑って、一瞬止まっていた腰の動きを再開してきた。
「ぅっ、でも、まだ、充分じゃないから……」
「あっ!」
ぐちゅ、湿った音とともに奥を突かれ、ひときわ高い声が漏れた。
ぐっぽりと、入ってはいけない所を殿下が出入りしている。そこから注がれる魔力は全て、腹に凝ったそれへと流されていた。
「あっ!」
濡れた声を上げ、体を揺さぶられ続けて。その日はこれまででも一番長く、魔力を注がれ続けた。それこそ、今度は殿下の方が魔力欠乏に陥りそうなほど。
とはいえ、あれほどの長時間、俺の腹を擦り続けられるのも大したものだと思う。何せ受け入れている俺の方が行為の後、擦られ続けた穴がじくじくと痛みを訴えたほどで。もっとも、すぐに殿下により治癒で治されはしたのだが。
そもそも、体調を崩して臥せっている最愛に構わず圧し掛かれる殿下の感覚も、ある意味では大概、狂っていると言わざるを得ないだろう。いくらそれが一番手っ取り早いとは言え、わかってはいても罪悪感などで実行に移せず、長く伏せることになる事例も多いと聞いているのに。
医者の言った一か月も実の所それを想定している。その場合、相手がほぼつきっきりになる必要が出てきはするのだが。
それを殿下はすぐにも、ああいった行為に至って、流石にあれほどに注がれた俺は翌日には起き上がれる程度には復調していた。とはいえ、それだって時間が経つごとにまた調子を崩し始め、三日と持ちはしなかったが。しかし、殿下の魔力だって無尽蔵ではなく、結局、毎晩ある程度長い時間、継続が可能なぐらいに調整して魔力を注ぎ続けることでようやく日中、少しの時間なら仕事にもつける程の体調を保てるよう落ち着いたのは、そこから一週間は経ってからのこと。
毎日ではなかった行為が毎晩になっただけと言えばそうなのだが、俺への負担が大きいのは依然変わらず、何とか安定するまでの一か月は俺にはひどく長く感じられたのだった。
それこそ、今まで生きてきた中で一番だと思う程に。
あの日。少し頭がぼんやりする程度だった不調は、翌日には割れるような頭痛に変わっていた。
ガンガンと脳内を何かで打ち付けられているかのよう。それに伴ってか、吐き気を伴う気分の悪さがずっと収まらず、しかしいくら吐きそうになっても朝食も摂れなかった以上、出すものなど何もなく、苦しさだけがいつまでも胸に残っている。
典型的な魔力欠乏の症状だった。それでも、これほどに重篤なことなどなかなかない。
殿下はベッドから起き上がれない俺を仕事前に見舞いに来た。
「ぅっ……」
呻いて視線を彷徨わせる俺へと、魔力を乗せた指先で触れる。額を滑って、頬を包んで。するりと肌を撫でられる。
そうすると触れられている所だけが少し、苦しさが和らぐような気がして、俺は知らず殿下の指へとすり寄っていた。
「ティアリィ」
俺へと覆いかぶさるように、体を倒した殿下の柔い声が耳朶をくすぐる。眩む意識の中で、それだけが鮮明に耳に届いた。
吹き込まれる息にも魔力が乗っている。
「これだと、とても足りないね」
困ったな。
殿下は何かを少し悩んでいるようだった。
次いでちゅっと唇を塞がれ、そこから息と唾液と共により多くの魔力を注がれる。少しだけ気分が楽になった。
「少し、仕事の確認だけしてくるよ。どうしても急ぎの物の処理と、他は予定の調整だけしたらすぐに戻ってくるから、少しだけ待っていて」
いくらかそうして俺の口内を味わってから身を起こした殿下の宥めるような言葉に、さて、俺は頷けたのだろうか。
何分、やはり意識は眩んだままで。多少、和らいだところで頭は痛く、吐き気は止まず。起きたばかりなのもあって眠ることもできず、殿下を待つ時間は殿下の宣言通り、おそらくそれほど長くはなかったはずなのだけど、どうにも俺には途方もなく感じられた。
苦しくて、痛くて。何かに縋りたくなる。助けてほしい。思うのに、重怠い体は指一本動かせず、手さえ何処にも伸ばせない。
殿下。
心の中で、呼んだ。助けてくれるのがたった一人だと、俺は知っているから。
殿下。
何度そうして呼んだことだろう。それでも意識がいつの間にか遠ざかっていたようで、次に気付いた時には視界が揺れていた。
「ぁっ、ぁっ、ぁっ、」
体を揺らされるのに合わせて、声が漏れている。小さな喘ぎだ。
熱い。
あれほど俺を苛んでいた頭痛は随分と少なくなっていて、気持ちの悪さも今は遠く、その代わりに体全部が熱かった。とりわけ腹に、熱が凝っている。
「ぅっ……ん、ティア、リィ……?」
どぷ、いったい幾度目だろう、今もまた、腹にひときわ多い熱が吐き出されて少しだけ思考がクリアになった。
俺は足を広げ殿下を受け入れ、揺さぶられながら、俺の雌穴は殿下を全て呑み込んでいた。快楽も感じてはいるはずなのだが、わかるのはただ、熱いということだけ。
「よかった、……気が付いたんだね。少しは、ん、気分が、良くなった……かな?」
荒い息も整わないままに問いかけてきた殿下へと、小さく頷く。殿下が嬉しそうに笑って、一瞬止まっていた腰の動きを再開してきた。
「ぅっ、でも、まだ、充分じゃないから……」
「あっ!」
ぐちゅ、湿った音とともに奥を突かれ、ひときわ高い声が漏れた。
ぐっぽりと、入ってはいけない所を殿下が出入りしている。そこから注がれる魔力は全て、腹に凝ったそれへと流されていた。
「あっ!」
濡れた声を上げ、体を揺さぶられ続けて。その日はこれまででも一番長く、魔力を注がれ続けた。それこそ、今度は殿下の方が魔力欠乏に陥りそうなほど。
とはいえ、あれほどの長時間、俺の腹を擦り続けられるのも大したものだと思う。何せ受け入れている俺の方が行為の後、擦られ続けた穴がじくじくと痛みを訴えたほどで。もっとも、すぐに殿下により治癒で治されはしたのだが。
そもそも、体調を崩して臥せっている最愛に構わず圧し掛かれる殿下の感覚も、ある意味では大概、狂っていると言わざるを得ないだろう。いくらそれが一番手っ取り早いとは言え、わかってはいても罪悪感などで実行に移せず、長く伏せることになる事例も多いと聞いているのに。
医者の言った一か月も実の所それを想定している。その場合、相手がほぼつきっきりになる必要が出てきはするのだが。
それを殿下はすぐにも、ああいった行為に至って、流石にあれほどに注がれた俺は翌日には起き上がれる程度には復調していた。とはいえ、それだって時間が経つごとにまた調子を崩し始め、三日と持ちはしなかったが。しかし、殿下の魔力だって無尽蔵ではなく、結局、毎晩ある程度長い時間、継続が可能なぐらいに調整して魔力を注ぎ続けることでようやく日中、少しの時間なら仕事にもつける程の体調を保てるよう落ち着いたのは、そこから一週間は経ってからのこと。
毎日ではなかった行為が毎晩になっただけと言えばそうなのだが、俺への負担が大きいのは依然変わらず、何とか安定するまでの一か月は俺にはひどく長く感じられたのだった。
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