【本編完結済】婚約破棄された婚約者を妹に譲ったら何故か幼なじみの皇太子に溺愛されることになったのだが。～星の夢・表～

番外編・未来の話

x2-1・アーディの話①

　アーディの話をしたいと思う。

　アーディは俺とミスティの間に出来た初めての子供となる。
　とは言え、まだアーディがお腹にいる時にピオラを引き取ったので、子供としては二人目。
　年齢で言うと、ピオラの4つ下で、つまりグローディの2つ下でもあり、そういう意味では、上から三番目の子供となった。
　アーディが出来た経緯は少し特殊で……――と、言うより、おそらく初めから子供を望んでいたミスティに、俺が応え方を少し間違ったせいもあってか、俺達の想定以上の魔力を有して生まれてきた。
　俺の体内にある段階から、その後に出来たミーナの比ではないほどの魔力を必要としたのだから、それがどれほどのものだったのかはうかがい知れるのではないかと思う。
　むしろアーディのことがあったので、ミーナの時は少し気を付けたとも言えるのだが。
　とにかく、アーディの魔力は多かった。ともすればミスティよりも。
　しかも、アーディより上となるピオラもグローディも二人とも養子で、俺たち二人とは血がつながっていない。
　必然的に次の皇帝は何もなければアーディとなる。
　だからだろうか。
　アーディは幼い時からひどく早熟で聡明で優秀だった。
　10になる前から、俺の仕事の一部を引き受けてくれていたぐらいだから相当だろう。
　そんなアーディが皇帝位を引き継いだのは、だけど少しだけ遅く、アーディが32歳の時。
　俺が19年ぶりに新しい子供、アーディの弟を産み落としてからのことだった。
　おそらくはその時点でアーディに妃や伴侶はおろか、恋人さえいたことがなかったからではないかと思われる。
　アーディはなんと言えばいいのか、そう言ったことに関しては潔癖で、こちらが心配になるほどに色めいたこととは無縁だった。
　執務という意味ではほとんどをアーディは請け負うようになっていたにもかかわらず、アーディの意思により、即位に踏み切れなかったのはその所為なのだと俺は考えている。
　結果、トゥピルティスと名付けた男の子は、後継のいないアーディの後継として扱われることになったが、しかしそれもほんの数年の間だけだった。
　即位して数年、瞬く間に地位を盤石にしたアーディが他国から流れてきた、黒騎士と呼ばれていた転移者でもある一人の男性を王配として求めたからである。
　アーディ自身に子供が出来れば、当然王弟でしかないトゥピルティスは必要なくなる。
　ただ、それだけの話だった。